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-地域医療再生はいま- 第1回 千葉県の「地域医療再生プログラム」を聞く
“医療崩壊の危機で有名になった千葉県”を、「地域医療再生を実現したモデル県」に生まれ変わらせる

2010/05/21
インタビュー 千葉県健康福祉部部長 戸谷久子 氏

千葉県健康福祉部部長 戸谷久子 氏

このほど千葉県では、同県医療審議会の採択を受けて「千葉県地域医療再生プログラム」をまとめた。銚子市立病院の突然の休院など、医療崩壊の危機で有名になってしまった千葉県の医療を、行政、医療者、住民3者のコミュニケーションを重視しながら、新しい智恵と力で再生させようとするプログラムである。プログラムの柱は、「県内医療機関の役割分担・機能再編・ネットワーク化」「在宅医療従事者の確保、研修のシステム化」「地域住民と医療者、行政の協働」の3つ。プログラム策定に当たった千葉県健康福祉部長の戸谷久子氏に、その経緯と概要、今後の見通しについて聞いた。(聞き手:日経BPクロスメディア本部プロデューサー 阪田英也 構成:21世紀医療フォーラムGood Doctor NET編集部 原田英子)

郡部と都市部が混在する“全国の縮図”千葉県


――まず、千葉県内の医療問題について、お聞きします。全県で最も解決が急がれる医療問題は何でしょうか。

戸谷 医師不足による医療崩壊の危機に対応するために、限られた医療資源を有効活用することが急務です。そのために、医療機関の役割分担、機能再編、ネットワークの構築が必要です。また、助かる命が、助からないことのないように、救急医療体制の充実も急がれる課題です。

千葉県は、よく“全国の縮図”と言われ、東京に近い都市部の特徴を有する地域と、太平洋に面した郡部の特徴を有する地域が混在しています。医療についても同じような状況が起きており、医療機関の偏在、人口の密集地域・過疎地域というばらつきがあります。

こうした背景を踏まえ、去る9月2日に行われた医療審議会では、千葉県の地域医療再生における喫緊の課題が論議されました。この医療審議会は、医療者、医療を受ける側、学識経験者の方々などに千葉県の医療問題を協議していただく場です。そこで協議していただいた「地域医療再生計画」では、県内に9つある保健医療圏の中でも、特に香取・海匝(かとり、かいそう)と、山武・長生・夷隅(さんぶ、ちょうせい、いすみ)という2つの医療圏の危機的状況が取り上げられました。委員や自治体・病院関係者などから出されたご意見をまとめ、9月30日の医療審議会での採択を受けて、今、その最終案を作成しているところです。

図1: 「千葉県の二次保健医療圏と主な病院」
千葉県地域医療再生プログラム(概要版)

――その2つの医療圏が抱えている医療問題の内容とはどのようなものなのでしょう。

戸谷 香取・海匝医療圏は、医療崩壊のシンボルともいわれる銚子市立病院の突然の休院によって、悪い意味で全国的に有名になりました。この地域には、他にも国保の病院など中規模の自治体病院はあるのですが、どこも医師数の減少、診療科の休止などで診療機能の低下、経営悪化といった、銚子市立病院と同じ問題を抱えています。

そのしわ寄せが、全国でも1、2を争う大規模病院で、その地域の拠点病院である旭中央病院に押し寄せ、本来、かかりつけ医などで対応可能な外来患者から救急患者までが集中し、医療機能がパンク寸前、医療従事者の疲弊、医師の離職といった事態を招いています。

また、一方の山武・長生・夷隅医療圏は、救急医療が大きな問題です。この医療圏には、救急医療の拠点病院と3次救急を担う救命救急センターがありません。医師不足により、2次救急や初期救急の体制確保も極めて難しく、患者さんは圏域内で救急医療を受けられず、県内の他の圏域に行かなければなりません。当然、時間もかかり、手遅れという事態も起こりやすいという状態です。救急患者の搬送に30分以上かかる割合が80%(一番低い医療圏で45%)、圏外への搬送が34%(県平均10.7%)で、ほかの医療圏に比べて体制整備が圧倒的に遅れています。

この2つの圏域での、それぞれの医療対策を重点的に、かつ手厚く推進することで、千葉県内の医療のボトムアップ化が図られ、その効果はすべての医療圏に波及することになると考えています。

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