大腸癌で切除不能な肝転移がある患者に対し、FOLFOX±ベバシズマブの投与と、イリノテカンの薬剤溶出性ビーズ(drug eluting bead irinotecan:DEBIRI)を使用した肝動脈化学塞栓療法(TACE)の併用は、安全で有害事象の発生率が低く、奏効率を高めると考えられる結果が、フェーズ1試験から示された。6月30日から7月3日までスペイン・バルセロナで開催された第12回世界消化器癌学会で、米University of Louisville School of MedicineのRobert Martin氏が発表した。
転移性大腸癌に対するファーストライン治療として、5-FU、ロイコボリン(LV)、オキサリプラチン、イリノテカンを併用するFOLFOXIRIレジメンの活性が報告されているが、毒性の発現により、このレジメンの使用は限定されることがある。
Martin氏らは、大腸癌で切除不能な肝転移があり、化学療法未経験の患者を対象として、FOLFOXとDEBIRIを使用したTACEの併用療法について、多施設、オープンラベルのフェーズ1試験を行った。主要評価項目は、この併用療法の安全性、忍容性、用量制限毒性、薬物動態の評価とした。
実現可能性を検討するこの試験には10人(うち男性6人、年齢中央値63歳)が登録された。
DEBIRIはイリノテカン100mgを100~300μmのビーズに負荷し、FOLFOXの休薬期間にTACEを施行して投与した。FOLFOX療法ではオキサリプラチン85mg/m2とLV200mg/m2をday1に投与し、5FU 2400mg/m2はday1から持続投与を開始し、2週毎に繰り返した。
10人全員が4サイクル以上のFOLFOXとベバシズマブの投与を受け、減量やスケジュールの変更を要した例はなかった。4サイクルの間にDEBIRIを使用したTACEは2回行われた。
用量制限毒性は出現しなかった。重篤な有害事象としてグレード2の高血圧が1人に発現し、1日の入院を要した。
薬物動態については、1~3回のDEBIRIの施行から1、4、24時間の時点でのイリノテカン、イリノテカンの活性代謝産物であるSN-38の検出レベルは最小値であった。
3カ月時と6カ月時の奏効率は100%で、完全奏効(CR)2人、部分奏効(PR)8人であった。
5人(50%)に肝転移のダウンステージを認めて切除可能となり、病理学的な奏効率は90%を超えた。
Martin氏は「肝臓を主体とした試験デザインが必要であり、このレジメンについて無作為化試験で評価を続け、結果を確認する必要がある」と話した。
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