第48回日本癌治療学会学術集会が10月28日から30日までの3日間、京都市で開催される。大きく変わりつつある癌治療の最前線の研究結果が報告される。会長を務める京都府立医科大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授の三木恒治氏(写真)にトレンドをうかがった。

会長を務める京都府立医科大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授の三木恒治氏
―― 今年の学術集会のプログラムを拝見しますと、分子標的薬のセッションがかなり多いという印象を受けます。先生が分子標的薬治療が進んでいる泌尿器科であるということが関係しているのでしょうか。
三木 別に泌尿器科だけに限らず、癌の薬物治療は現在、分子標的薬が花盛りです。今年のASCOでも同様、また昨年の癌治療学会学術集会でもその傾向はあったと思いますが、今年は分子標的薬に焦点を絞って、セッションを数多く設定しました。
シンポジウム「分子標的薬剤の新展開」「分子標的治療におけるバイオマーカーの役割」、ASCO-JSCOジョイントシンポジウム「Targeting therapy up-date」などをはじめとして、分子標的薬に関するセッションだけで30くらいあるのではないでしょうか。
―― 従来、癌治療学会は外科の学会というイメージが強かったのですが。
三木 外科が手術して後は腫瘍内科に任せるというやり方もありますが、日本では外科医も化学療法を担ってきました。私は泌尿器科ですが、化学療法をみんな自前でやっていますから、全く違和感はありません。自分たちが持っている治療戦略に分子標的薬をどう組み込んでいくかということです。これを抜きにして腫瘍の治療は考えられなくなってきているのではないでしょうか。
それに手術療法の演題の中心が内視鏡やロボット手術など低侵襲術に関するものになり、それぞれの領域の学会で討議されるようになってきています。やはり癌治療学会では横断的なテーマが目玉となります。
それから、免疫療法に関しても13のセッションを設定しました。免疫療法も今はきちんと臨床試験を行って評価が進んでいます。特別講演をお願いした東大医科学研究所の中村祐輔先生はLiving with Cancer、癌と共存するとおっしゃっていますけど、そういった観点からも再評価してもらったらどうかと期待しています。
局所療法についても、いくつかのセッションを設定しています。たとえばラジオ波焼灼療法は、今はCTガイド下やMRIガイド下で穿刺できます。こういった方法で、延命効果や患者さんのQOLを上げることができるのではないか。一度みんなに評価していただいたらどうかなと考えました。
―― ところで、今回の学術集会のテーマは「癌を治す、癒す」です。
三木 癒すというところですね。治ったらよいではないか、後は知らないというのではなく、その後のことも癌治療学会として考えなければいけないのではないか。癌診療の進歩・向上に伴ってキャンサー・サバイバーが多く存在するようになってきています。この人たちのサポートを考えることが大事なことだと思います。
昨年から癌患者・支援者スカラーシップを始めたりペイシェント・アドボケート・ラウンジを設置して患者さんの学術集会への参加を支援していますが、キャンサーケアに関するセッションも数多く設定しています。
また哲学者の梅原猛先生に、「3度のがんを患って」というタイトルで患者さんの立場から実体験をご講演いただきます。「抄録なんか書かせずに自由にしゃべらせろ」とおっしゃるので、どんな話になるのかはわかりませんが、蘊蓄のある講演になると思います。