
鳥取大学整形外科の岸本勇二氏
関節リウマチ(RA)の関節炎診断において、身体診察所見と超音波検査(US)所見の一致率を検討した結果、手関節で高く、膝関節、距腿関節、MTP関節では低かったことが明らかになった。膝関節、距腿関節、MTP関節での関節炎を診断する際は、US検査の併用が有用である可能性が示された。鳥取大学整形外科の岸本勇二氏らが、4月28日まで東京で開催された第56回日本リウマチ学会(JCR2012)で発表した。
RA患者の関節炎を高い精度で検出する手法として、US検査が知られる。しかし、全関節に対してUS検査を行うには時間がかかることから、実臨床では、身体診察所見にUS検査を適宜併用することが検討されている。
そこで岸本氏らは、身体診察所見だけでは関節炎の評価が難しく、US検査の併用が望ましい関節を検討した。
対象は、同科を受診中のRA患者から無作為に26人を抽出し、それぞれ40関節について評価した(術後関節などを除く、計995関節)。関節別に身体診察所見とUS検査所見の一致率をκ解析で検討した。
身体診察所見は、臨床経験20年以上のリウマチ・整形外科専門医が1人で行った。腫脹の有無のみ評価した場合と、腫脹または圧痛の有無を評価した場合に分けて検討した。その後、別のリウマチ・整形外科専門医がUS検査を行い、滑膜肥厚と関節液貯留について評価した。
平均年齢は56.9歳、女性は23例、平均罹病期間は171カ月、ESRは31.8mm/h、CRPは0.28mg/dL、メトトレキサート投与例は19例、生物学的製剤投与例は14例、ステロイド投与例は4例だった。
まず、関節別に身体診察所見とUS検査所見の一致率を検討したところ、手関節における一致率が一番高かった。身体診察所見で腫脹のみを評価した場合と、腫脹だけでなく圧痛の有無も評価した場合では、一致率はどちらも高かった(ともにκ係数=0.87)。
一方、身体診察で腫脹のみを評価した場合に、US検査評価との一致率が低かった関節は、膝関節(κ係数=0.32)、距腿関節(κ係数=0.35)、MTP関節(κ係数=0.26)だった。しかし、身体診察の際に、腫脹だけでなく圧痛の有無も評価すると、膝関節(κ係数=0.65)、MTP関節(κ係数=0.45)で一致率が向上した
加えて、US検査結果を基準に、身体診察所見の診断率を検討したところ、身体診察所見の感度は低く、特異度は高いことが示された。具体的には、腫脹のみの診断率は、感度が42.2%、特異度96.4%、陽性的中度は72.4%、陰性的中度は88.3%。また、腫脹もしくは圧痛の診断率は、感度52.2%、特異度95.6%、陽性的中度72.3%、陰性的中度90.1%だった。
これらの結果から岸本氏は、「身体診察では、腫脹だけでなく、圧痛も重視することで、関節炎の検出感度を高めることができる。また、膝関節、距腿関節、MTP関節などに対しては積極的にUS検査を併用することが望ましい」と指摘した。
(日経メディカル別冊編集)