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1960年代前半
食塩摂取と高血圧・脳卒中との関係明らかに

主な出来事:久山町研究の開始、高血圧自然発症ラットの開発
主なガイドライン:なし
主な臨床研究:なし
主な新薬:トリクロメチド(サイアザイド系利尿薬)、αメチルドパ(交感神経抑制薬)

 1959年の第15回日本医学会総会で千葉大学生理学教授(当時)の福田篤郎氏が秋田県農民の調査課から、同県農民は高血圧者や脳卒中の頻度が高く、塩分摂取量が1日平均26.3gと当時の全国平均(17~18g)に比べて高かったことを報告、注目された。福田氏自身は「高血圧者と食塩の過剰摂取は相関関係はあっても因果関係があるとまでは言えない」としたが、弘前大学衛生学教授(当時)の佐々木直亮氏らはこれに反論、その後の各地の疫学調査からも食塩摂取と高血圧、脳卒中発症との関係が明らかにされた。後年、米国のLewis K. Dahl氏らによって、遺伝と食塩感受性高血圧との関係も明らかになっている。

 1961年、九州大学第二内科(当時・勝木司馬之助教授)は、地域における脳・心血管病の実態を明らかにして、その予防手段を確立することを目的に、福岡県久山町で疫学調査「久山町研究」を開始した。この研究は現在も継続中である。

 久山町研究は、日本版「Framingham Study」とも呼ばれるが、「Framingham Study」と大きく異なるのは、全死亡例に剖検を行い、死因および脳卒中の正確な病理診断をすることであった。またFraminghamは最初の集団のみの追跡であるが、久山町は、時代による疾病構造の変化を考慮して、追跡集団(コホート)を、1961年からの第1集団から1988年の第3集団まで設定した。現在までの追跡率は99%、剖検率は現在まで平均80%である。

 これまでに得られた成果は、(1)脳出血による死亡が欧米諸国に比べて多い(2)全脳卒中の死亡率は第1集団に比べて第2集団で男女とも有意に低下、第3集団でも低下を続けている(3)降圧治療の普及で高血圧者の血圧レベルが大幅に低下(4)1日平均食塩摂取量が18g(1965年)から11g(1985年)に減少――などである。

 1963年に、京都大学病理学教授の岡本耕造氏らが開発した高血圧自然発症ラット(Spontaneously Hypertensive Rat:SHR)、その10年後に弟子の家森幸男氏(現・京大名誉教授)が作成した100%脳卒中を発症するラット(Stroke-Prone SHR:SHRSP)は、高血圧および脳卒中の最良実験モデルとして、今や全世界で利用されており、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)はじめ最近開発された有力な降圧薬は、間違いなくSHR、SHRSPの多くの犠牲の上に誕生したものである。 NIH(米国立衛生研究所)には、わが国から贈られたSHR、SHRSPが「永久保存種」として継代されているという。

 1960年代は高血圧の成因に交感神経活動(中枢神経系の関与)が重要な役割を演じていると考えられ、カテコールアミンに関する研究も盛んに行われた。また1970年代にかけてメチル-ドーパ、クロニジンなどの交感神経抑制薬が多くの患者に処方された。

 米国の調査では、1950年代の高血圧患者の5年生存率は70%に満たなかったが、1960年代には80%を超えた。

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