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1960年代後半
VA研究が降圧薬治療の扉を開ける

主な出来事:国際高血圧学会の創設
主なガイドライン:なし
主な臨床試験:VA研究
主な新薬:スピロノラクトン、塩酸クロニジン(交感神経抑制薬)

 降圧薬によって血圧を下げることが、心血管イベントの発生を抑制することを初めて証明したのが、1967年と1970年に報告されたVA研究(Veterans Administration Study)だ。降圧薬の有効性を示したこの研究結果によって、降圧薬治療は幕を開けた。

 VA研究は、まず高齢の重症高血圧患者(拡張期血圧115~129mmHgの男性)143例を対象に行われ、その予後が好転することが間もなく明らかになった。臨床的意義が大きいのは、引き続いて行われた、中等症および軽症患者(拡張期血圧90~114mmHgの男性)380例を対象にした研究である(発表は70年)。対象を2群に分け、治療群186例には降圧薬(ヒドロクロロチアジド、レセルピン、ヒドララジン)を投与し、対照群194例にはプラセボを投与し、それぞれ平均3.2年、3.3年追跡した結果、心血管イベントの抑制効果が示された。内訳は、脳卒中が治療群5例に対し対照群11例、心不全が治療群0例に対し対照群11例であった。

 当時サイアザイド系利尿薬は徐々に普及しつつあったが、VA研究によってそれが加速され、降圧薬治療が臨床現場に根付き始めるきっかけとなった。またこれを機に、それまで基礎に偏っていた高血圧分野の研究テーマが、薬物治療へと広がった。

 一方、1966年には、国際高血圧学会(ISH)が設立された。これは、1945年に米国・クリーブランドでNational Foundation of High Blood Pressure Research として誕生し、1945年にHBPR Councilと改名した学会が基盤になっている。創設20余年を経て、世界中から高血圧の専門家が集まる場となり、国際学会の名にふさわしい活動をしていたHBPR Councilとしては、自然な成り行きであった。

 1967年には、日本循環器管理協議会(日循協)が血圧測定法の手技を発表、これを機に血圧測定が全国に普及していった(1979年改定、自動血圧計の手技も作成)。

 同じく1967年 荒川規矩男氏(福岡大学名誉教授)によって、ヒトのアンジオテンシンの構造解明と、単離に成功した(昇圧の本態がレニンではなくアンジオテンシン・であることが分かったのは1940年)。荒川氏は、A IIの活性の中心を見いだし、A II受容体拮抗薬開発への道筋をつけた。

 また、わが国の脳血管疾患による死亡率は1965年が175.8(人口10万対、1970年も同じ)でピークとなり、以降1990年代半ばまで下降を続けることになる。1960年代後半は、20世紀末に向かって降圧薬治療が大きく進歩する基礎を築く時代となるとともに、疾病構造の変化が始まった時代でもあった。

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