
2005. 11. 17
【AHA2005速報】
乳製品は中高年男性のメタボリック症候群リスクを下げる



乳製品を多く摂る中高年男性はあまり摂らない人に比べ、メタボリックシンドロームになるリスクが6割も低いことが分かった。フランスにおける断面調査の結果明らかになったもの。しかもBMIが25kg/m2を超える人や過体重の人では、よりリスクの減少幅が大きいことが判明した。カロリー過多に注意して牛乳を多めに摂るのは健康法の一つとして期待がもてそうだ。フランスToulouse大学医学部疫学科のVanina Bongard氏(写真)らの研究で、成果は11月16日のポスターセッションで報告された。
Bongard氏らの研究グループは、循環器疾患リスクに関する断面調査研究である「MONICA」研究の一環として本研究を実施した。35〜64歳の一般男性1072人を無作為に選び、連続3日間の食事の記録のほか、身体計測値、血圧、空腹時血糖、脂質などの検査値、薬剤の服用、運動、社会経済的の状況などを聞き取った。さらにNCEP ATP3の定義によるメタボリックシンドロームの有無についても調査した。
乳製品の摂取量で5段階(1日89g以下、90〜152g、153〜226g、227〜332 g、332g以上)に分類、属性や検査値などとの関連性を見た。
その結果、メタボリックシンドロームと診断された参加者の比率は、最も乳製品の摂取量が少ないグループでは32.7%と3人に1人だったが、摂取量が増えるに従ってその比率は減少し、227〜332gと2番目に摂取量が多い群では16.7%と最も低く、6人に1人だった。ただし、乳製品摂取が332g以上と最も多い群では、21.6%と再び増えており、「Jカーブ」を描く形になった。
各群の属性を見ると、乳製品を多く摂る群ほど、アルコール摂取量や喫煙率、血圧などが有意に低く、逆にフルーツ摂取量や運動量などは有意に多くなっていた。牛乳を日常的に多く摂取する中高年男性は、健全な生活を送っているといってよさそうだ。
多変量解析を実施し、性、年齢、飲酒、カルシウム摂取、喫煙、教育程度などの要素で調整して、摂取量が最も少ない群に対する他の群のオッズ比を求めたところ、乳製品摂取量が最も多い群では0.6、2番目の群では0.4で、実に6割もリスクが低いことが分かった。BMIが25以上の群ではこの傾向がさらに顕著で、最も摂取量の多い群では61%減、2番目の群では73%減と低リスクだった。
各群の栄養摂取量で最も大きな差が見られるのはカルシウムだった。乳製品摂取量が最低の群では247(g/1000kcal)、最高の群では480(g/1000kcal)と大差がついた。
一方、カロリー過多には注意が必要のようだ。乳製品の摂取が最も少ない群では摂取カロリーが2000kcalであるのに対し、最も多い群では2556kcalと2割も多い。Bongard氏は、乳製品摂取量が最も多い群でメタボリックシンドロームのリスクが再上昇する理由の一つではないかと考察していた。
本研究は観察研究であるため、因果関係には言及できないが、カルシウム摂取が不足気味なうえ、中高年の肥満男性が増えている日本でも、乳製品摂取の利点について、介入研究を実施してみる価値はありそうだ。(中沢真也)
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