
2005. 11. 17
【AHA2005速報】
急性前壁梗塞への骨髄由来単核細胞の注入療法、左室機能の改善を認めず−−ASTAMI試験



急性前壁梗塞に対する骨髄由来単核細胞の注入療法の効果を検討していたランダム化比較試験のASTAMI試験で、期待された左室機能の改善は確認されなかった。ノルウェーRikshospitalet and Ulleval大のKetil Lunde氏(写真)が11月16日、セッション「Late-Breaking Clinical Trials Session IV」で発表した。
研究グループは、ST上昇を伴った急性前壁梗塞100例を対象に、骨髄由来単核細胞(mBMC)の注入療法が左室機能の改善に効果があるかどうかを調べた。
対象は、ST上昇を伴った急性前壁梗塞の症例で、年齢は40から75歳まで、梗塞の症状が現われてからPCIの実施まで2〜12時間以内、左前下降枝責任病変への処置としてのPCIによるステント留置−−などを条件とした。心原性ショック、異常Q波心筋梗塞などは除外された。
分析対象は100例で、PCIによるステント留置などを終了後、3〜5日でmBMC注入群(50例)とコントロール群(50例)に無作為に割り付けた。
4〜7日に、99mTc-tetrofosminを使った単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)と冠動脈造影を実施しベースラインとした。その後、mBMC注入群では、4〜8日に骨髄由来単核細胞(87.1±47.7×106cells)を冠状動脈内に注入した。その後、2〜3週間はMRI検査を実施し推移を記録。最終的には6カ月間フォローアップした。
ベースラインでの患者背景には、mBMC注入群とコントロール群で有意差のある条件はなかった。
分析の結果、ベースラインから6カ月後の変化をみたところ、駆出率や拡張末期容積、梗塞病変のサイズは、検査の種類によって、それぞれの群で有意な改善を認めた項目もあった。しかし、mBMC注入群がコントロール群より有意な改善をみたものはなかった。
今回に報告は期待に反するものだったが、注入時期など試験デザインに改良の余地があることが指摘されており、その意味では骨髄由来単核細胞の注入療法そのものが否定されたわけではない。今後の新たな展開を注目したい。(三和護、医療局編集委員)
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