
2005. 11. 17
【AHA2005速報】
日本人のブルガダ症候群の予後、無症候性の場合はヨーロッパより悪くない可能性



健常者の突然死の一因と指摘されているブルガダ症候群において、ヨーロッパと日本では、その予後に違いがありそうだ。わが国で進行中の多施設研究によると、これまでの中間的なまとめでは、無症候性の場合、日本人の予後はヨーロッパより悪くない可能性が示唆された。国立循環器病センターの相原直彦氏(写真)らが11月16日、セッション「Arrhythmias: Diagnosis and Electrophysiology」で発表した。
ヨーロッパの研究では、ブルガダ症候群あるいはブルガダ型の心電図(BSECG)が認められる患者の予後は、不良であることが報告されている。しかし日本では、「予後はそれほど悪くないというのが臨床現場の印象」(相原氏)であるなど、日本人の臨床像にはまだ不明な点が少なくない。研究グループは、日本人のデータを集積し分析することが必要と考え、多施設研究に取り組んだ。
今回は、これまでに集積したブルガダ症候群あるいはブルガダ型のST上昇を認めた463症例(男性438例、女性25例、年齢52.5±15歳)を対象に、日本人の場合の予後を解析した。
研究では、対象症例を心室細動による突然死の状況から救命された77例(A群)、失神の既往があった81例(B群)、無症候性の305例(C群)の3群に分け、比較検討した。
ブルガダ症候群の特徴の1つである家族歴をみると、ブルガダ症候群およびブルガダ型の心電図の家族歴は、A群で15%、B群で7.3%、C群で5.5%に確認された。また、心房細動の家族歴は、それぞれ35%、16%、13%だった。いずれも、A群で高く、B群、C群の順で低い傾向にあった。
また、予後については、フォローアップ開始後の最初の1年間の心血管イベント(心室細動)の発生率は、A群で17.1%、B群で4.0%、C群で1.0%と、A群で特に高かった。カプランマイヤー法による生存率をみると、50カ月後にはA群は70%をきっていたが、B群とC群は95%以上の水準を保っていた。
A群では、ブルガダ症候群の家族歴あるいは突然死の家族歴、失神の既往の家族歴がある症例が目立ち、さらに家族歴があると予後は悪いという傾向があった。これはヨーロッパの報告と同様だったという。一方、B群、C群については生存率が高く、それぞれの予後はヨーロッパの報告より良い傾向にあった。
これらの結果から研究グループは、「突然死の状況から救命された症例群では、ヨーロッパの報告と同じような予後を示した。しかし、失神の既往がある症例あるいは無症候性の症例では、ヨーロッパより予後は悪くない可能性が示唆された」とまとめている。特に無症候性群については、家族歴が少ないことが日本人の特徴の1つとして浮かび上がっており、これがヨーロッパとの予後の違いを生み出しているのではないかと考察している。(三和護、医療局編集委員)
(日経メディカル)
- 9.11テロ後、50歳以上の米軍要員に心血管イベントが大幅増加(11/18)
- プラバスタチンは造血幹細胞動員により、ハイバーネーション心の機能低下を抑制か(11/18)
- 11年間にわたるプラバスタチンの有効性と安全性が確認される――LIPID延長研究(11/18)
- 日本での1次予防にプラバスタチン(メバロチン)10〜20mg/日が有用――大規模試験MEGA Study(11/18)
- 乳製品は中高年男性のメタボリック症候群リスクを下げる(11/17)
- 急性前壁梗塞への骨髄由来単核細胞の注入療法、左室機能の改善を認めず−−ASTAMI試験(11/17)
- MDA-LDL減少とHDL-C増加を介し、プラバスタチンは日本人の冠動脈プラークを退縮させる(11/17)
- 糖尿病患者における薬剤溶出ステント留置後の再狭窄の予測因子が明らかに(11/17)
- 抗血小板薬clopidogrelとアスピリンの併用で冠動脈疾患の総死亡リスクが減少(11/17)
- 日本人のブルガダ症候群の予後、無症候性の場合はヨーロッパより悪くない可能性(11/17)
- MMP阻害因子が心血管系イベント再発の予知因子――LIPIDサブ解析結果(11/16)
- 閉経後の女性ではフリーテストステロン値が高いほど冠動脈疾患の危険性が高まる(11/16)
- 喫煙禁止条例の施行後に急性心筋梗塞が30%近く減少−−コロラド州プエブロ市の報告(11/16)
- オルメサルタンは心房細動による心内膜のリモデリングを抑制する――ラットで確認(11/16)
- 急性心筋梗塞患者に対するG-CSFは梗塞後の心機能改善に有効、再狭窄率の増加など臨床上の有害事象もなく(11/16)
- AHA2005が開幕、参加者2万7000人がダラスに集う(11/15)
- 心臓発作生存者への骨髄前駆細胞移植で心機能が改善、改善率はプラセボのほぼ2倍−−REPAIR-AMIの結果(11/15)
- 悪玉LDLも超悪玉LDLも頚動脈硬化病変の独立した危険因子(11/15)
- 血中γ-GTP値の高い人ほど心血管死のリスクが高い−−オーストリアのコホート研究(11/15)
- 成体の心臓前駆細胞に心筋機能を回復させる可能性−−ラットによる実験(11/15)
- 慢性狭心症で侵襲的治療を受けた高齢の女性患者、男性より長期生存率は高いがQOLは低く(11/14)
- ACC、AHA、SCAIが共同で作成、PCIガイドライン2005を発表(11/14)
- 急性心筋梗塞のカテーテルによる冠動脈形成術、75歳以上の高齢症例で90%以上の成功率(11/14)
- PCIを受けた85歳以上の症例、その臨床像の一端が明らかに(11/14)
- メタボリックシンドロームは、AMI後の次の心臓イベントでも独立した予測因子(11/14)