日経メディカルのロゴ画像

Nikkei Medical ONLINE日経メディカル オンライン https://medical.nikkeibp.co.jp/

2005. 11. 16

【AHA2005速報】

急性心筋梗塞患者に対するG-CSFは梗塞後の心機能改善に有効、再狭窄率の増加など臨床上の有害事象もなく

関連ジャンル:

心疾患

 急性心筋梗塞(AMI)患者に対する顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与は、梗塞後の心機能の改善に有効であることが分かった。再狭窄率の増加など臨床上の有害事象もなく、今後に期待を抱かせる結果だった。千葉大学の中山崇氏(写真)らが11月15日のセッション「Acute Coronary Syndromes - PCI 1」で発表した。

 顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は最近、マウスと豚において、急性心筋梗塞 (AMI) の後で左心室リモデリングおよび機能障害を予防することが報告されている。中山氏らの研究グループは、人への応用を目指し、AMI患者に対するG-CSF治療の可能性と安全性を評価した。

 対象は、左冠動脈前下行枝(LAD)に関連のあるAMIの40症例。すべて経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた後、バイタル・サインが安定した症例だった。これをG-CSF投与群(連続5日、2.5μg/kg/日・皮下注、n=18)と対照群(生理食塩水、n=22)に無作為に割り付けた。G-CSFの注入は、PCI後の24時間以内に始めた。効果を検証するため、99mTc-tetrofosminを使った単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)を、AMI後の4日目と6カ月目に実施した。脱落例が5例あったため、分析はG-CSF投与群19例、対照群16例を対象に行った。

 SPECTイメージは20区分に分割され、各区分は0から3の4段階スコア(0:正常な取り込み〜3:欠陥がある)によって類別された。欠陥スコア(DS)は、LVのLAD関連部位の損傷程度を評価する指標とした。心機能については、心電図同期心イメージで16の等間隔に分割されたSPECTデータを分析し、拡張末期容量(EDV)、収縮末期容量(ESV)、左室駆出率(EF)を求めた。定量的冠動脈造影は、ベースラインとPCI実施直後、6カ月のフォローアップ後に実施した。なお、患者背景は両群で差がなかった。

 分析の結果、G-CSF群は、AMI後の4日目と6カ月目の比較で、有意に欠陥スコア(DS)が減少した(p=0.005)。 対照群では、差異は統計上有意ではなかった。

 またEFは、G-CSF群で有意に増加した(p=0.0005) が、対照群では変化がなかった。EDVは、両群で有意な差が観察されなかった。しかし、ESVは、G-CSF群(p=0.135)でのみ減少する傾向があった。

 これまでG-CSFの投与による冠状動脈への悪影響を指摘する報告もあったが、今回の研究では、AMI後の6カ月の再狭窄率は両群の間で著しい差はなかった(G-CSF群25.0% vs 対照群26.3%)。

 こうした結果から研究グループは、「AMI患者に対するG-CSF投与は梗塞後の心機能改善に有効で、再狭窄率の増加など臨床上の有害事象はない」と結論した。心筋梗塞後の心機能改善を目指す新たな治療法として、骨髄由来幹細胞や心筋幹細胞などを直接注入する方法と、今回の研究のようにG-CSFなどを皮下から注入する方法の2つの流れができている。どちらも作用メカニズムの解明などといった課題が少なくないが、いずれは双方の有用性を比較する研究成果が出てくることだろう。(三和護、医療局編集委員)

(日経メディカル)

この記事を読んでいる人におすすめ