
2005. 11. 15
【AHA2005速報】
心臓発作生存者への骨髄前駆細胞移植で心機能が改善、改善率はプラセボのほぼ2倍−−REPAIR-AMIの結果



心臓発作生存者への骨髄前駆細胞(BMC)移植の効果を検討していた大規模無作為化二重盲検比較試験、REPAIR-AMIの結果が報告された。骨髄前駆細胞を移植した症例群で心機能の改善がみられ、その改善率はプラセボのほぼ2倍だったことが明らかになった。11月13日のセッション「Late-Breaking Clinical Trials Session I」で、ドイツのJ.W.Goethed大のVolker Schachinger氏(写真)が発表した。
試験には、ドイツとスイスの17の医療センターが参加し、合計204例の患者を対象に行われた。
対象は、急性心筋梗塞でST上昇の見られた症例で、24時間以内のPCIかあるいは12時間未満の血栓溶解療法と24時間以内のPCIによるフォローアップにより、再灌流に成功した症例。
すべての症例で発作後3〜5日にBMCを抽出し、発作後3〜6日のうちに、一方のグループは自らのBMCを冠状動脈内に注入、もう一方はプラセボ液を注入した。この注入時期をベースラインとし、左心室の血管造影検査も実施している。その後、4カ月間フォローアップした。204例のうち、血管造影の検査を継続できた187例が分析の対象となった。
一次エンドポイントは、4カ月後の血管造影検査による左心室機能の改善で、このほか一次エンドポイントとベースライン時の駆出率や冠状動脈内に注入するまでの時間との関連性、左心室拡張末期容積(EDV)や左心室収縮末期容積(ESV)の変化、心臓イベントとの関連なども分析された。
BMC群(95例)とプラセボ群(92例)は、ベースラインでは同様の左心室駆出率(LVEF)だった(それぞれ48±1.5%、47±1.1%)。これが4カ月後には、BMC群が54±1.1%、プラセボ群が50±1.5%へと、どちらもベースラインより有意に改善した(いずれもp<0.001)。
両群の比較では、4カ月後の左心室駆出率は、BMC群の方がプラセボ群より有意に高かった(p=0.021)。これをベースラインと4カ月後の駆出率の改善率で見ると、BMC群の方が+5.5±0.7%で、プラセボ群の+3.0±0.7%よりほぼ2倍近い増加で、BMC療法の有用性を示す結果だった。
BMC療法の有用性が示されたことから、Schachinger氏は、「心臓発作後のBMC療法は、新たな治療戦略として発展していくに違いない」と期待をこめて語った。(三和護、医療局編集委員)
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