
2005. 11. 15
【AHA2005速報】
成体の心臓前駆細胞に心筋機能を回復させる可能性−−ラットによる実験



成体ラットの心臓前駆細胞に、心筋機能を回復させる可能性があることが分かった。米ミネソタ大学のHarald C Ott氏らが11月14日、セッション「Featured Research: Cardiac Stem Cells」で発表した。
胎児の心臓前駆細胞は、早期中胚葉系マーカーFlk1が存在し、内皮細胞マーカーCD31が欠如していることによって確認される。研究グループは、成体ラットの心臓から同様の心臓前駆細胞を分離することに成功。この成体ラットの心臓前駆細胞(ACB)を心筋梗塞部位に注入することで、心筋の機能回復が可能かどうかを調べた。
ACBは、3カ月齢の5匹のF344ラットから抽出し、培養した。細胞特性は、FACS分析と免疫蛍光法(60% flk1+、75% SSEA-1+ 、5% CD31+、35% ckit+、11% isl1+、6% sca-1+、4% ABCG2+) によって分析した。心筋梗塞症は、24匹のF344 Fischerラットを用い、冠動脈左前下行枝(LAD)の結紮によって引き起こした。
梗塞の2週間後に、1×106の細胞を含む生理食塩水(200μL)を梗塞病変と梗塞病変の周辺の6つの部位に注射した(ACB細胞群、n=11) 。対照群として、細胞群を含まない生理食塩水(200μL)を同様に注入した(対照群、n=13) 。
注入1週間前と注入1週間後、3週間後、5週間後に心エコー検査を実施。注入後6週の圧量ループを記録し、その後、心臓は組織学的な分析を行った。
実験の結果、ACB細胞群では、開始時と5週目では、駆出分画(EF)が34.8±4.2%から56.5±6.5%へ改善した(p=0.001) 。一方、対照群では、36.5±3.7%から28.2±3.8%へ減少していた(p<0.001)。また、1週間、3週間、5週間のすべての期間で、ACB細胞群の方が対照群より、駆出分画(EF)が改善していた。また、心室リモデリングは、対照群と比べるとACB細胞群で抑制効果が見られた。
6週間後、心収縮の指標の1つである最大+dp/dtは、対照群(3274±962mmHg)より、ACB細胞群(5965±943mmHg)の方が高かった(p<0.001)。緩和時間 (tau)は、ACB細胞群(15.8±3.4ms)の方が対照群(22.7±3.7ms)より有意に短かった(p<0.001)。また、梗塞サイズは、ACB細胞群で減少した(p=0.043)。組織学的検査では、梗塞病変中にACB細胞群が生着していることが確認された。
これらの結果から研究グループは、「成体の心臓前駆細胞を梗塞病変に注入することで、心筋梗塞症後の心室リモデリングを抑制し、心収縮期および拡張期の心室機能を向上させうる」と結論した。(三和護、医療局編集委員)
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