
2005. 11. 14
【AHA2005速報】
慢性狭心症で侵襲的治療を受けた高齢の女性患者、男性より長期生存率は高いがQOLは低く



慢性狭心症で血行再建術などの侵襲的治療を受けた後、6カ月内の死亡というリスクを乗り越えた75歳以上の患者では、女性の方が男性より生存率が高い一方、生活の質(QOL)は男性より低いという結果が報告された。ボストン大学のGabriela M. Kuster氏らが11月13日、セッション「Age and Gender: Health Policy and Outcomes Research」で発表した。
75歳以上の慢性狭心症を対象に、侵襲的治療と最適化された薬物療法の効果を比較した大規模臨床試験TIME(Trial of Invasive versus Medical therapy in Elderly patients with chronic angina)では、症状の緩和およびQOLの点で、侵襲的治療の方が薬物療法より有効であることが示された。その中の侵襲的治療を受けた群では、6カ月後の臨床評価で、女性が男性より死亡リスクが高く、またQOLも劣っていることが分かっていた。研究グループは、この男女の違いに注目、長期に渡る追跡から、生存率やQOLの違いを調べた。
対象は、TIMEに登録された301例(80±4歳)。無作為抽出した侵襲的治療群153例と最適化された薬物療法群148例からなる。女性は131例で全体の44%だった。患者背景では、女性の方が高血圧が多く、喫煙は少なかった。呼吸困難は女性の方が多く、利尿薬やACE阻害薬の処方も女性に多かった。今回の研究では、平均4年間(2.7〜7年)のフォローアップ後、生存率やQOLを求めた。
カプランマイヤー法で求めた4年後の生存率は、侵襲的治療群では、女性が75.6%で、男性の68.8%に比べ高い傾向にあった(p<0.2)。侵襲的治療後の6カ月内に死亡した例を除くと、生存率は女性が83.9%、男性が71.3%となり有意に女性の方が高かった(p<0.002)。年齢、高血圧、喫煙など患者背景を調整したハザード比(対男性)をみると、女性は0.531(p=0.0450)と有意に低かった。
最初の6カ月間を越えて生存する女性の危険因子は、最初の6カ月間に死んだ女性 (92%) より有意に少なかった(p<0.0005)。ただし、最初の6カ月間を越えて生存する男性とほぼ同様だった (危険因子の割合、女性40% vs 男性37%)。
最初の6カ月間を越えて生存する症例では、侵襲的治療の有効性は、男女とも変わらず維持されていた。ただし、有害事象 (心筋梗塞の発症、血行再建術施行ための再入院あるいは血行再建術非施行の再入院) の発生がほとんど同じで、狭心症の重症度 (CCS:Canadian Cardiac Society class)も変わらないにもかかわらず、QOLは女性の方が男性より低い結果となった。生存率は高いがQOLは低いというギャップが何に由来するものなのか、今後の研究に期待したい。(三和護、医療局編集委員)
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