
2005. 11. 14
【AHA2005速報】
急性心筋梗塞のカテーテルによる冠動脈形成術、75歳以上の高齢症例で90%以上の成功率



75歳以上の急性心筋梗塞症例に対するカテーテルによる冠動脈形成術(primary PCI)が、90%以上の成功率を挙げていることが報告された。高齢の急性心筋梗塞症例には血栓溶解治療が主流の米国にあって、この成績は驚きをもって受け止められたようだ。小倉記念病院の酒井孝裕氏(写真)らが11月13日、セッション「AMI-PCI and Outcomes」で発表した。
AMI患者の治療が進歩しているにもかかわらず、高齢者の場合は若い人より依然として死亡率が高いままだ。研究グループは、高齢患者に対する治療法を再評価するために、1998年1月から2002年12月まで、自院でAMIのカテーテルによる冠動脈形成術を受けた1088例を検討した。対象のうち75歳以上の高齢者群(O群)は309例で、平均年齢が80.7±4.8歳(75〜102歳)。75歳未満の若年群(Y群)は778例で、平均年齢が61.9±9.0歳(27〜74歳)だった(1例は転院のため対象外)。
O群では、女性が45.0%(Y群は21.2%、p<0.0001)を占めたほか、心原性ショックを呈した症例が9.1%(Y群では5.4%、p<0.05 ) 、糖尿病が27.8%(Y群では35.2%、p<0.05)、高コレステロール血症が22.3%(Y群では36.6%、p<0.0001)で、それぞれY群より有意に高かった。
治療の結果、再灌流の成功率は、O群、Y群とも高く、それぞれ91.6%、92.9%だった(p=NS)。O群では、30日後の全体の病院内死亡率が8.1%(Y群では4.0%、p<0.01)、そのうち心死亡率が6.5%(Y群では3.6%、p<0.05)、非心死亡率が1.6%(Y群は0.4%、p<0.05)で、それぞれY群より有意に高かった。
30日後の病院内死亡率を、再灌流成功群と不成功群に分けて分析したところ、O群では6.0%対30.8%(p<0.0001)、Y群では3.2%対14.5%(p<0.0001)で、両群とも成功群の方で病院内死亡率が有意に低かった。ただし、O群とY群の比較では、O群で再灌流が成功した場合の心死亡率は、Y群より有意に高かった(6.0% vs 3.2%、p<0.05)。
1087例の多変量解析の結果、病院内死亡率と有意に関連があったのは、心原性ショック (ハザード比44.7、95%信頼区間22.0-91.1、p<0.0001) 、再灌流不全 (ハザード比9.40、95%信頼区間4.11-21.5、p<0.0001) 、多枝冠動脈疾患 (ハザード比3.30、95%信頼区間1.63-6.68、p<0.001)などだった。なお、75歳以上の年齢 (ハザード比1.79、95%信頼区間0.91-3.50、p<0.090) と前壁心筋梗塞(ハザード比1.10、95%信頼区間0.48-2.63、p=0.1865)は、有意な関連性はみられなかった。
これらの結果から研究グループは、「AMIのためカテーテルによる冠動脈形成術は、高齢者においても成功率は高く、再灌流の成功が予後を向上させることが期待できることから、高齢であることを除外基準と考えるべきではない」と結論した。(三和護、医療局編集委員)
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