
2005. 11. 14
【AHA2005速報】
メタボリックシンドロームは、AMI後の次の心臓イベントでも独立した予測因子



メタボリックシンドロームは、急性心筋梗塞(AMI)後の次の心臓イベントの独立した予測因子であることが報告された。AMI後の症例を対象にメタボリックシンドロームの影響を調べた研究で分かったもので、大阪大学の坂田泰彦氏(写真)らが11月13日、セッション「Acute Coronary Syndromes - Outcomes」で発表した。
メタボリックシンドロームが心筋梗塞などの危険因子であることは多くの疫学研究で明らかになっているが、AMI後の2次予防に対する影響については、ほとんどデータがなかった。そこで研究グループは、AMI後の3858例(男性2933例、女性925例、平均年齢64.7±11.4歳)を対象に、メタボリックシンドロームの影響を追跡調査した。対象症例は、急性冠症候群の登録システムであるOsaka Acute Coronary Insufficiency Study(OACIS)から抽出した。平均追跡期間は851±630日。なお、メタボリックシンドロームの診断は、改良National Cholesterol Education Program criteriaに基づいて行った。
調査の結果、メタボリックシンドロームの頻度は34.0%だった。メタボリックシンドローム群と非メタボリックシンドローム群に分けて、心臓のイベント(心臓死と非致命的再梗塞の合計) の発生率をみたところ、メタボリックシンドローム群が7.6%と、非メタボリックシンドローム群の5.4%より高かった(p=0.005)。
年齢や性別、喫煙歴などの患者背景を調整した上で分析したところ、メタボリックシンドロームは、AMI後の次の心臓イベントの独立した予測因子だった(ハザード比1.532、95%信頼区間1.165−2.016、p=0.002) 。加えて、メタボリックシンドロームの構成要素の数ごとの心臓イベントのハザード比を調べたところ、メタボリックシンドロームの構成要素が0のハザード比を1とすると、構成要素が1項目の場合は1.089 (95%信頼区間0.586−2.203、p=0.788) 、2項目では1.385 (95%信頼区間0.776−2.473、p=0.270) 、3項目では1.754 (95%信頼区間0.972−3.166、p=0.062)、4あるいは5項目では2.053(95%信頼区間1.010-4.175、p=0.047)となり、構成要素数が増えるごとにハザード比が高くなっていた。
重回帰分析の結果、メタボリックシンドロームの構成要素の数は心臓イベントの独立予測因子で、AMI後の平均25日後に測定した高感度C反応性タンパク(hs-CRP) の値と正の相関があった。
興味深いことに、メタボリックシンドロームは、HMG-CoA還元酵素阻害薬を投与されていない患者の場合、経皮的冠動脈形成術(PTCA)の独立予測因子となった(ハザード比1.53、95%信頼区間1.22−1.91、p<0.001)。一方、HMG-CoA還元酵素阻害薬を投与されていた患者の場合は、PTCAの独立予測因子ではなかった(ハザード比1.17、95%信頼区間0.87−1.58、p=0.29)。
これらの結果から演者らは、メタボリックシンドロームは、AMI後の次の心臓イベントの独立予測因子であると結論した。恐らくは初回のイベントと同様に炎症を介して関連しているものと考察している。また、HMG-CoA還元酵素阻害薬は、メタボリックシンドロームの症例では心臓イベントの2次予防にも役立つ可能性があると指摘した。(三和護、医療局編集委員)
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