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記者の眼

岸田政権の目玉政策、2・3月中の看護・介護職員の賃金アップが要件に
かなりタイト! 「処遇改善補助金」の申請

 岸田政権の目玉施策の1つに「看護、介護、保育、幼児教育などの現場職員の収入引き上げ」があります。2021年11月19日に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」では、「新しい資本主義」の推進が掲げられました。その中で民間部門における分配強化に向けた支援策の1つとして打ち出されたものです。

 介護分野では2021年12月27日、「『介護職員処遇改善支援補助金』について」(介護保険最新情報 Vol.1026)という事務連絡が発出されました(図1)。介護職員を対象に、収入を3%ほど(月額9000円程度)引き上げるための補助金の案を示したものです。対象期間は2022年2~9月の賃金引き上げ分で、算定要件は大きく以下の3つです(※後述しますが、看護職員への処遇改善もほぼ同様の内容ですので、しばらく介護の話にお付き合いください)。

(1)介護職員処遇改善加算(I)~(III)のいずれかを算定している
(2)2022年2・3月(2021年度中)から実際に賃上げを行っている
(3)補助額の3分の2以上は介護職員等のベースアップ等(基本給または決まって毎月支払われる手当)の引き上げに使用する(ただし、2・3月分は一時金による支給を可能とする)

図1 介護職員処遇改善支援補助金(案)の概要
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 注目すべきは(2)2022年2・3月(2021年度中)から実際に賃上げを行っている、という要件でしょう(図2)。補助金を受給するには、遅くとも3月まで、2021年度中に先に賃上げを行っておく必要があるわけです。賃上げ開始月(2・3月)には、その旨の用紙を都道府県に提出しなければなりません。その上で4月から具体的な処遇改善計画書を含めた実際の申請を行うという流れです。

 算定要件の(3)では、2・3月分に関しては一時金による支給も可としていますが、2月から賃金アップを行うとすれば、時間的にはかなりタイトです。さらに4月以降については補助額の3分の2以上を「基本給」または「決まって毎月支払われる手当」で支給することとしています。4月以降の賃金改善の方法についても、実際の申請までに決めておかなければなりません。

図2 介護職員処遇改善支援補助金 取得要件について(案)
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 同補助金では現行の介護職員処遇改善加算などと同様に、介護保険サービスの種類ごとに設けられた交付率を介護報酬に乗じた額が交付されます(図3)。居宅介護支援や介護予防支援、(介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーションなど、現行の処遇改善加算等の対象外となっているサービスに関しては、補助金においても交付対象外となっています。

 なお、同補助金の申請スケジュールに足並みをそろえる形で、介護職員処遇改善加算や介護職員等特定処遇改善加算の処遇改善計画書等の提出期限は、例年2月になっていますが、今年に関しては4月に延長される見通しです。一体的に検討しておく必要があるでしょう。

図3 介護職員処遇改善支援補助金 交付率(案)
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救急に注力する医療機関向けに「看護職員等処遇改善事業補助金」を交付

 医療機関で働く看護職員等に関しても同様に、「看護職員等処遇改善事業補助金」が始まる見通しで、厚生労働省のウェブページに資料が掲載されています。同補助金は、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、収入を1%ほど(月額4000円程度)引き上げるために必要な経費を都道府県に交付するものです(図4、図5)。賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを条件に、2021年度補正予算で215億6000万円が計上されました。

図4 看護職員等処遇改善事業補助金について
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図5 看護職員等処遇改善事業補助金の概要
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 補助金の概要を見ると、介護と非常に似通っていることが分かります。要件に2・3月分の支給が必要である点や、4月以降の賃金改善については、補助額の3分の2以上をベースアップ等(基本給または決まって毎月支払われる手当による賃金改善)に使用することが要件となっている点も看護・介護で共通となっています。

 ただし、支給対象は「救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関および三次救急を担う医療機関に勤務する看護職員」で、救急に力を入れている医療機関の看護職員等が対象です。なお、同補助金は看護補助者や理学療法士・作業療法士等の処遇改善に用いることも可能としています。

 スケジュールは看護職員、介護職員向けのどちらとも、2・3月に賃金改善を実施した旨の書類を提出し、4月から処遇改善計画書等の提出を受け付け、6月から補助金が交付されるという流れです。大きな額ではありませんが、医療機関や介護事業所は先に賃金改善分のキャッシュアウトが発生し、後で補助金が充当される形になります。またこの補助金による賃金改善実施期間の終了後は、処遇改善実績報告書を提出する必要があります。

2022年10月以降は診療報酬・介護報酬で対応

 前述のように補正予算で措置される補助金は2~9月分で、2022年10月以降は、医療機関の看護職員等に関しては2022年度診療報酬改定において3%(月額1万2000円)程度を引き上げる施策を盛り込む方向です。そのため2022年度改定の診療報酬本体の改定率プラス0.43%のうち、看護職員等の処遇改善のための特例的対応として0.2%が充てられました。

 介護に関しても2022年10月、期中改定となる2022年度介護報酬改定が実施される見通しです。介護は2017年、2019年にも介護職員の処遇改善を目的とした期中改定を実施した経緯があります。今回で3期連続の期中改定が実施されることになります。

 医療機関や介護事業所にとっては、職員の定着やモチベーション向上に今回の賃金アップの施策をうまく活用することが望まれます。申請スケジュールはなかなかタイトで、4月以降の基本給・手当等による賃金改善の方法や賃金規程の変更など、検討しておくことや事務手続きなどもありますが、早急に対応したいところです。

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