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記者の眼

日循フェローが心不全予防に向け高血圧を対象としたオンライン診療パス試案を初提示
10月22日、日経クロスヘルスEXPO 2021で披露

2021/10/18
庄子 育子=Beyond Health

国際医療福祉大学大学院医学研究科循環器内科学教授の岸 拓弥氏(写真:諸石 信)

 厚生労働省を舞台に、コロナ禍の特例措置として認められている初診からのオンライン診療の恒久化に向けた議論が進んでいる。初診は過去に受診歴のある「かかりつけ医」を原則としつつ、一定の条件のもと、かかりつけ医以外も認める方向だ。もっとも、初診からのオンライン診療に適さない症状・医薬品等や対面診療との適切な組み合わせに十分配慮する必要がある。

 オンライン診療の普及に向けてカギを握るのは、治療の均てん化を目指した、オンライン診療用の治療計画(オンライン診療パス)。日本循環器学会フェローで、国際医療福祉大学大学院医学研究科循環器内科学教授の岸拓弥氏はこのほど「パンデミック時代の心不全予防のための治療計画(オンライン版)」をテーマに「試案」を作成。オンライン開催される「日経クロスヘルスEXPO 2021」内のセッションで披露する(10月22日(金)15:40~17:00、受講料無料)。そこではあわせて、様々な関係者が集い、議論を深める予定だ。セッション開催に先立ち、岸氏にオンライン診療パス作成の狙いを聞いた。


 日本のオンライン診療は遅々として進んでいない。海外ではコロナ禍を契機に医療のデジタル化が進み、オンライン診療が急拡大しているというが、日本では状況は大きく変わっていない。

 ただし、日本でも患者の選択肢を増やしたり、効率的な医療を提供したりする意味で、オンライン診療の必要性が叫ばれており、医療者の多くも重要であることは認識している。

 それでも進まないのはなぜか。おそらく「オンライン診療は大事」というところで話が終わってしまっているから。できていない理由から目を背けているのでは、と感じている。

 オンライン診療に関して、厚生労働省がイニシアティブをとって先頭で引っ張ってくれていないのが問題、いや、学会が方針を定めていないのが悪い、そもそも現場が導入に後ろ向きだったり慎重なのでは──といった声が聞かれる。つまり、どこかみな他人任せになってしまっている。

 今回オンライン診療パスの試案を作ったのは、現在のような状態が動き出せばいいとの思いから。パス試案は不完全なもので、他の登壇者である厚生労働省や日本高血圧学会、日本糖尿病学会、医療機器メーカーの関係者からは辛辣な意見が寄せられることにもなるだろう。そんな中、ディスカッションを通じて、現状のオンライン診療の普及に向けた課題も浮き彫りにして、ではどういう解決方法があるのか、そのための役割分担はどうすればいいのか、さらには実際にどんな工程で今後進めるべきなのかまで探っていきたい。

高血圧を対象にしたワケ

 今回作成したオンライン診療パス試案は高血圧を対象としたもので、目的は心不全のステージの進行抑制だ。なぜ高血圧を選んだのかといえば、日ごろ高血圧診療に当たる中、これだけ患者満足度が低い分野はそうないと思えるからだ。そしてその突破口となるのがオンライン診療だと感じている。

 通常、患者さんは何か困りごとの症状があって、医療機関を受診する。それで医師が不具合を直してくれたら喜び、医師に対して感謝したり笑顔を見せたりする。けれど、別名「サイレントキラー」ともいわれる高血圧は受診動機になる自覚症状がほとんどなく、多くの場合は健康診断などでひっかかって、医療機関にかかる。そこで医師からはときに「なぜここまで放っておいたんだ」と説教される。また、薬を処方されるも、自覚症状自体は何も変わらず、それでも薬を飲み続けなければならない。だから患者満足度が低く、治療を中断してしまうことも起こり得る。

 一方で、医師側も患者が笑顔にならず、そのうち来なくなったりするので、報われない思いが強い。それに診察自体を受けない患者が大勢いることも分かっている。つまり医師の満足度も低い。

 高血圧を放置すれば、将来的に心血管イベントの発現につながり、死亡リスクも高まる。だからこその高血圧治療なのだが、その瞬間は何も困っていない患者に対し、将来ハッピーになるはずといった見えないことを信じさせて、それで5年、10年、20年など長期に渡ってがんばらせるというのは相当難しい。

 とはいえ、そうした難しいことをしっかりやりこなせている医師がいるのもまた事実。生活指導のやり方も薬の使い方にも優れ、患者の満足度が高い。そうした人達のスキルを神業扱いするのではなく、その先生がなんでできているのかということをきちんと解析して、広げていくことが欠かせない。

 国民病でもある高血圧の治療・指導法が医師によって異なり、均てん化されていない、地域差もある状況は問題だ。また、デジタル化が進み、日々の血圧測定が自宅で可能で、投薬により血圧値が安定している高血圧患者の場合、オンライン診療に適している面があるが、現実には昔からの診療体制が続いている。

 本来、患者さんがどこに住んでいても、どんな医師にかかっても、高血圧治療の質は担保されるべきで、そのためにはオンライン診療の環境が今より整備されていて、なおかつ標準治療計画としてパスの存在が求められるのではないか。

 語りたいことはまだたくさんあるが、セッション当日まで取っておきたい。今回、セッションの最後には、各登壇者が来年(1年後)までに目指すべき到達点・目標も示す予定で、私自身、言いっぱなしで終わらせるつもりはなく、日循のフェローとして今後の計画もお伝えする。

日経クロスヘルス EXPO 2021

循環器内科医と考えるオンライン診療マネジメント
──心不全予防のためのオンライン診療パス試案の提示と残る課題


2021/10/22(金) 15:40 ~ 17:00(オンライン)<聴講無料・事前登録制>

[パネリスト]
国際医療福祉大学大学院 医学研究科 循環器内科学 教授
日本循環器学会FJCS(Fellow of Japanese Circulation Society)
岸 拓弥
厚生労働省 医政局 経済課 医療機器政策室長
堀岡 伸彦
テレメディーズ代表理事
日本高血圧学会認定高血圧専門医・指導医
谷田部 淳一
オムロン ヘルスケア
循環器疾患事業統轄部 統轄部長
吉村 実

[コメンテーター]
国立国際医療研究センター 糖尿病内分泌代謝科 臨床情報研究室長
日本糖尿病学会認定糖尿病専門医・指導医
坊内 良太郎


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