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記者の眼

自殺未遂の患者がやって来たときのTips
2020年、自殺者数が11年ぶりに増加

 1年前の今日(4月7日)、国内での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受け、1回目の緊急事態宣言が発令されました。発令当初、例年3~5月にピークに達する国内の自殺者数が大幅に減少したと話題になったのを覚えているでしょうか。2020年4月の自殺者数は1507人で、前年の1814人と比較すると16.9%減少し、SNSでは「学校や会社のストレスから解放されたからだ」「家族と過ごす時間が増えたからだ」というような書き込みが散見されました。しかし、同年7月から月別自殺者数は減少(対前年)から一変して増加に転じ(図1)、同年の総自殺者数は2万1081人。長らく減少を続けていた年間自殺者数は、11年ぶりの増加を記録したのでした。

図1 月別自殺者数の推移(警察庁自殺統計原票データより厚生労働省作成)

 2016~19年と2020年の月別自殺率を比較した研究もあります(関連記事)。この研究によると、2020年の日本では、男性の自殺率は10月と11月に、女性の自殺率は7月から11月まで、以前の年よりも有意に増加していました。原因は定かではありませんが、COVID-19流行の影響で職を失ったこと、外出自粛で知人との交流が減少したことで精神疾患が悪化したこと──などが原因の一部であることは想像に難くありません。

 自殺者数の増加が2021年も続くかは分かりません。しかし、冒頭に書いた通り、例年春は自殺者数が増える時期。自殺企図者と思われる患者が病院に運ばれて来た場合、医療者はどのように対応すればよいのでしょうか。

自殺未遂の人を診るときに気を付けること

 今年3月、日経メディカルではER型救急医の先生方による『EM Allianceの知っ得、納得! ER Tips』を発刊しました。その中では自殺についても下記のような記述があります。

 はじめにバイタルサインの確認など身体的な評価・治療を行い、身体面が安定したら(もしくは同時並行で)、精神的な病歴聴取を行います。このような聴取は、帰宅させても問題ないか判断する上で重要です。具体的には(1)精神科の通院状況、(2)見守る家族の存在、(3)過去の自殺企図歴──などを確認します。聴取の際、死についての話題は避けがちですが、患者から「死にたい」と⾔われたら「死にたいと思うくらいつらかったのですね」などと反復するなど、真摯な態度で⽿を傾けることが大切です。

 再企図のリスク評価も必要です。(1)希死念慮が残存している、(2)今回の自殺企図を後悔していない、(3)「もう自殺をしない」という約束に応じない、(4)自殺企図を頻繁に繰り返している、(5)不安や幻覚妄想が強い、(6)見守る家族がいない──などに当てはまる場合は、帰宅させずに精神科病棟のある施設に紹介するといった対応をするとよいです。

『EM Allianceの知っ得、納得! ER Tips』(EM Alliance著、3520円[税込])

 『EM Allianceの知っ得、納得! ER Tips』には他にも、病歴聴取時の原則「TALK」や自殺リスクの評価法「SAD PERSONSスケール」が紹介されています。また、カフェインを含む眠気防止薬の多量摂取による自殺未遂例、有毒植物トリカブトの摂取による自殺未遂例などにも触れられています。

 本書は、現場の救急医が遭遇した症例を取り上げながら、自殺未遂例だけでなく様々な疾患や外傷への対応方法、試してみたくなるちょっとした小技、マネジメントや災害時に役立つ工夫や知識を紹介しています。研修医の先生だけでなく、救急に携わる若手医師の先生方が診療にお役立ていただける1冊になっていると、編集担当として自信を持ってオススメします!

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