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特集1:嚥下困難患者の薬を飲みやすく
【実践編】 薬を飲みやすくするための6つのポイント
日経DI2018年6月号

2018/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2018年6月号 No.248

 脳梗塞後遺症や認知症などによる摂食嚥下機能障害の患者だけでなく、加齢に伴って嚥下機能が低下して薬が飲みにくいと感じている高齢者は少なくない。残薬が多い患者の中には、飲み込みにくさが原因で服薬していないケースもあるかもしれない。

 医師は、薬の大きさを意識せずに処方していることも多い。より服薬しやすい薬への処方変更を提案できるのは、薬の大きさや他剤形の有無を熟知している薬剤師であり、飲みにくいと感じている患者の薬を、いかに飲みやすくできるかは薬剤師の腕の見せ所といえる。

 では、薬を飲み込みにくそうな患者がいたら、どのように対応すべきだろうか。まずは、その患者の嚥下機能が低下していないかを確認する必要がある。その上で、より小さい薬や他の剤形の提案、服薬補助ゼリーやとろみ剤を使った服薬方法のアドバイスなどを行いたい(表3)。他職種や他施設の薬剤師との服薬に関する情報共有も大切だ。ここからは、それらを実践する上でのポイントを具体的に紹介する。

表3 薬が飲み込みにくい患者への主な対応(取材を基に編集部作成)

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ポイント 1
まずは嚥下障害を適切に評価

 まずは、患者の訴えが嚥下機能低下によるものか、評価する必要がある。

 表4は、浜松市リハビリテーション病院(浜松市中区)病院長の藤島一郎氏らが開発した摂食嚥下障害の評価シートだ。患者本人や介護者に、ここ2、3年の状況を聞き、全15項目のうちAが1つでもあれば、摂食嚥下障害を疑う。評価シートの項目のうち、「服薬に関係するのは3~13の項目。問題があれば、現在処方されている薬が飲みにくくないか注意を払ってほしい」と藤島氏は語る。

表4 摂食嚥下障害評価のための聖隷式嚥下質問紙(藤島氏による)

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 また、口や顔の筋肉の動きを良くするための嚥下体操などを早期に始めることで、機能低下を防げる可能性がある。「薬局でも積極的に評価を行い、疑わしい患者については、かかりつけ医などに相談してほしい」(藤島氏)。

「積極的に嚥下機能を確認し、患者がきちんと服薬できるように関わってほしい」と話す浜松市リハビリテーション病院の藤島一郎氏。

 患者が、薬をきちんと飲み込めているかを薬剤師が把握することも大切だ。「患者が実際に薬を飲んでいる場面を確認している薬剤師は案外少ない」と兵庫医療大学薬学部准教授の桂木聡子氏は指摘する。飲み忘れ防止の工夫や残薬チェックとともに、「患者が薬を口に入れて飲み込めているかまで確認してほしい」と強調する。

 嚥下機能が低下した患者の服薬支援に力を入れる、くまもと温石病院(熊本県美里町)薬局長の森直樹氏は、処方変更時などを中心に、「服薬時間を見計らって病棟に出向き、服薬する様子を見たり、患者に口の中を見せてもらい口腔内残留の有無をチェックするようにしている」と言う。「ちゃんと飲み込めている」と話す患者でも、口腔内の感覚が鈍化していて、実際には飲み込めていないことがあるからだ。

 特に、口腔内乾燥が強かったり、食塊を咽頭へ送り込む力が不十分な場合、薬が口腔内に残留することが多い。昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座口腔リハビリテーション医学部門の野末真司氏に、口腔内で薬が残留しやすい部位を示してもらった(図2)。外来や在宅の患者で、服薬時に立ち会うのが難しく、チェックできない場合は、図2を示して、患者自身や介護者に確認を依頼するとよいだろう。

図2 口腔内の薬が残りやすい部位(野末氏による)

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 加えて、米盛病院(鹿児島市)リハビリテーション科の三石敬之氏は、「脳梗塞後遺症などで右片麻痺がある患者は、右口腔前庭に薬が残りやすい。また咽頭収縮力が低下していると、付着性の高いものが咽頭に残留しやすい」と説明する。

 飲み込めずに口腔内に薬が長く留まると、本来は飲みやすくするためのコーティングが糊のような役割を果たし、薬が口腔内や咽頭に貼り付き残留しやすくなる。義歯に、付着することもある。写真1は、くまもと温石病院の森氏が連携している歯科医師が遭遇した事例だ。森氏は「私自身もよく見かける。酸化マグネシウムや漢方薬は特に注意が必要」と言う。

写真1 義歯に貼り付いた薬

 一方で、薬の副作用などが原因で、飲み込みに問題が生じているケースも少なからずある(表5)。特に、抗コリン薬など口腔内乾燥を引き起こす薬剤、ドパミン抑制作用や筋弛緩作用を有する薬剤などが、嚥下に影響しやすい。誤嚥性肺炎の原因にもなるため、これらの薬が処方されている高齢患者については、注意を払う必要がある。

表5 嚥下に影響を与える主な薬剤とその作用(藤島氏による)

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 前述の「摂食嚥下障害評価のための聖隷式嚥下質問紙」(表4)の質問項目を参考に、嚥下機能をチェックし、変化が見られたら処方医に相談するようにしたい。


ポイント 2
錠剤の分割・粉砕、剤形変更を提案

 加齢に伴い咽頭周囲の筋力が低下すると、大きい錠剤が飲み込みにくくなる。その場合、錠剤を2分割または4分割し、小さくすれば飲めることがある。

 嚥下困難患者に、医師から粉砕の指示が出ることがあるが、粉砕した薬は、口の中で広がってかえって飲みにくい場合がある。服薬方法を確認し、服薬補助ゼリーやオブラートの使い方、簡易懸濁とろみ法などを紹介したい(ポイント34参照)。

 表6は、粉砕に適さない薬剤の一例だ。個々の薬剤の粉砕の可否は、「錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック第7版」(じほう、2016)などを参考に判断するとよいだろう。

表6 粉砕による経口投与が適さない製剤の特徴と主な薬剤(鈴木氏による)

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 特に、「腸溶性製剤や徐放性製剤などは、粉砕だけでなく分割によっても体内動態に影響を与える。それらの薬は分割も避ける」とファーミック港南台店(横浜市港南区)の鈴木邦彦氏は説明する。

 また、配合剤は大きい製剤が多いため、「配合成分を、あえてそれぞれ単剤で処方してもらうことがある。単剤なら小さい錠剤で済むことが多い」とあけぼのファーマシー(茨城県つくば市)在宅支援室室長の坂本岳志氏は話す。

 例えば、オルメサルタンメドキソミルとアゼルニジピンの配合剤であるレザルタスHD(長径14.2mm×短径6.7mm、厚さ5.3mm)が飲み込みにくければ、オルメサルタン錠20mgとアゼルニジピン錠16mgの単剤で処方してもらうといった具合だ。オルメサルタンの場合、口腔内崩壊錠(OD錠)もある。

 ただし、こうした変更により「薬の数が増えたり、自己負担金が高くなることもあるので、患者と相談した上で、医師に処方提案している」と坂本氏は言う。

 後発医薬品の中には、先発品よりも小さいものや、先発品にはない剤形の製剤が発売されている場合もある。

 さらに同種同効薬で、より服用しやすい別の薬への変更を提案するのも一手だ。例えば、プロトンポンプ阻害薬(PPI)のラベプラゾールナトリウム(商品名パリエット他)は、腸溶性製剤のため分割や粉砕ができないが、ランソプラゾール(タケプロン他)ならOD錠があり、ラベプラゾールの服用が困難な患者に対して代替薬として提案が可能、といった具合だ(表7)。ただし、こうした提案を行う際には、「薬価や相互作用なども考慮する必要がある」と鈴木氏は指摘する。

表7 主なプロトンポンプ阻害薬の比較(鈴木氏による)

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 剤形変更後は、本当に服薬しやすくなったかを確認することも大切だ。一般にOD錠は、口腔内で唾液または少量の水で崩壊するため飲み込みやすいとされるが、口腔内乾燥が強い、舌でうまくつぶせない、咽頭や食道への送り込みの機能が低下しているなどの要因があると、口腔内に残留することも多いようだ。「患者の状態によっては、OD錠であっても、多めの水で飲む必要がある」(森氏)。

 米盛病院の三石氏は、「飲み込みにくく、服薬が負担となっている場合は、薬を減らせないかも考えてほしい」と言う。多剤併用は、飲みにくさにつながる。服用の必要性が低い薬や嚥下に影響を与える薬を中心に検討したい。


ポイント 3
ゼリーやオブラートで喉越しを良くする

 服薬補助ゼリーや、菓子のゼリー、プリン、ヨーグルトなどの食品で、薬を包み込み、喉越しを良くして飲み込みにくさを解消することもできる(写真2)。

写真2 喉越しを良くするために使えるゼリー製品の一例

 服薬補助ゼリーは、スプーンに出して、その上に薬を置き、さらにゼリーを乗せて薬を包み込むようにして使うとよい(写真3)。また、菓子のゼリーには、錠剤やカプセルを突き刺すように埋め込む(写真4)。

写真3 服薬補助ゼリーを使う

写真4 菓子ゼリーに薬を刺し込む

 口腔期に問題がある患者では、舌の先端に薬を乗せたまま、なかなか薬を咽頭へ送り込めないことがある。そういった患者の場合は「薬を服薬補助ゼリーなどで包み込んで小さめのスプーンに乗せて、喉の奥の方に置くといった方法で、うまく飲み込めることがある」(坂本氏)。

 低栄養の高齢者では栄養補助ゼリーを、脱水が心配な季節には水分補給ゼリーを使い、服薬と同時に栄養や水分の補給を行うのもよいだろう。

 ただし、クラッシュゼリー状の製品などでは、口腔内で薬とゼリーが分かれて、薬だけが口の中に残ってしまうことがある。また、液体を誤嚥するリスクのある患者では、水分が分離しやすいゼリーについても注意が必要だ。

 「ゼリー」と一口に言っても、多種多様な製品が発売されている。患者に薦める前に性状を確認しておきたい。

 オブラートで喉越しを良くする方法もある。オブラートは、一般には苦味のある薬や散剤など、そのままでは飲みづらい薬を包んで、飲みやすくするために使われる。でんぷんでできており、そのままでは口腔内に貼り付いて、かえって飲みにくいことがある。しかし、水分を多く含むととろみが出るという性質を利用し、錠剤やカプセルを包んで水に浸すことで服薬補助ゼリーと同じような効果が得られ、飲み込みやすくなる。

 薬をオブラートで包み、スプーンなどに乗せて水にくぐらせる方法もあるが、藤島氏は水を張った皿にオブラートを浮かべ、その上に薬を乗せて、オブラートの端を箸やようじなどでたぐり寄せ、折りたたむように重ね合わせて薬を包み込み、スプーンですくって飲む方法を薦める(図3)。

図3 オブラートを用いた薬の包み方

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ポイント 4
簡易懸濁とろみ法を検討する

 通常、咽頭期では喉頭蓋が下がり気管の入り口を閉鎖するなどの嚥下反射が起こる。しかし、加齢などによって嚥下反射が鈍ると、流れが速い液体は、喉頭内侵入速度に嚥下反射が間に合わず、誤嚥が生じやすくなる。とろみ調整食品(とろみ剤)は、液体に粘性を付けて流速を下げるため、誤嚥防止につながる(写真5)。

写真5 とろみ調整食品の例

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 最近は、多糖類のキサンタンガムを原材料とした、とろみ剤が主流だ。べたつきが少なく、液体の味や匂い、色を変えないという特徴を持つ。

 水などの液体に粉末状のとろみ剤を入れて、よく混ぜて使う。とろみ剤の量を増やせば、粘性は高くなる。日本摂食・嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会の「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2013」では、とろみの程度によって(1)薄いとろみ、(2)中間のとろみ、(3)濃いとろみ──に分類している(図4)。一般に、摂食嚥下障害の程度が軽ければ薄いとろみを使い、重いほど濃いとろみを使う。ただし、濃過ぎるとろみはべたつき、かえって飲み込みにくくなることがある。

図4 とろみの分類

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 とろみ剤の使用方法としては、とろみを付けた水や茶で薬を服用する方法と、簡易懸濁法で薬を崩壊させ、その懸濁液にとろみを付けて服用する方法(簡易懸濁とろみ法)がある(図5)。

図5 簡易懸濁とろみ法の手順

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 宇野病院(愛知県岡崎市)では、「嚥下機能に問題のある患者の水分補給のために、常時とろみ茶を用意してあるため、それを用いて服用してもらうことが多い」と薬剤科科長の有木寛子氏は話す。水では錠剤が飲みにくいという患者でも、とろみ水なら飲めるというケースがあるという。

 一方、指宿浩然会病院(鹿児島県指宿市)薬剤科科長の松原佳代子氏は、「経口摂取はできるが錠剤などの服用が難しい患者には、薬を簡易懸濁法で崩壊させて、その液にとろみを付ける簡易懸濁とろみ法を用いる」と説明する。

 簡易懸濁法とは、錠剤を粉砕したり、カプセルを開封したりせずに、錠剤やカプセルをそのまま55℃の湯に入れて崩壊、懸濁させる方法で、経管投与する際に薬でチューブが閉塞しないようにするための手法として開発された。チューブの閉塞が防げるほか、粉砕よりも手間が少なくて済む、薬剤のロスが少ない、粉砕時の薬剤への曝露が防げるなど、多くのメリットがある。経管投与の患者以外でも、嚥下困難で固形物が飲み込みにくい患者では、懸濁液をそのまま服用したり、懸濁液にとろみを付けて飲む方法が有用だ。

 ただし、残さず全部飲み切ることが必要だったり、服薬のたびに簡易懸濁してとろみを付けるのが介護者の負担となったりするほか、味が悪く味覚がしっかりしている患者には使いづらいという声もある。患者や介護者の意見を聞きながら取り入れたい。

とろみ剤が薬効に影響!?

 最近の研究では、キサンタンガム系のとろみ剤を用いることで、錠剤の崩壊性や溶出に影響が出る可能性が指摘されている。

 とろみ剤による薬剤への影響を研究している岩手医科大学薬学部准教授の富田隆氏は、「マグミット錠(一般名酸化マグネシウム)は、通常、水で簡単に崩壊するが、とろみ水に浸漬させると崩壊しにくくなる。また溶出性も低下した」と話す(図6)。

図6 とろみ水によるマグミット錠の崩壊性の違い

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 また、ボグリボース(商品名ベイスン他)OD錠をとろみ水に浸漬させて服用した群と、浸漬させずに服用した群に分けて糖負荷試験を行ったところ、浸漬群は、非浸漬群に比べて血糖値が有意に高く推移した。

 とろみ剤による薬剤の崩壊性や溶出性への影響について、詳しい機序や製剤ごとの影響の差、臨床的にどの程度の影響があるかなどは明らかになっていないが、「薬効に影響を与える可能性があることを念頭に、投与後の患者の状態をしっかりフォローすることや、薬の効果が見られない場合はとろみ剤を疑うことも大切」と富田氏は指摘する。

 また、とろみが濃く、とろみ水への浸漬時間が長いほど、薬剤の崩壊性や溶出への影響が大きいことが分かっている。「患者の嚥下機能にもよるが、できるだけ薄いとろみを使い、薬を長時間、とろみ水に浸漬させないようにする」と富田氏は使い方をアドバイスする。

「とろみ剤が薬効に影響を及ぼす可能性があることを知っておいてほしい」と話す岩手医科大学の富田隆氏。


ポイント 5
嚥下しやすく誤嚥が少ない姿勢で飲む

 飲み込みにくさを解消するには、服薬時の姿勢も大切だ。食卓などで椅子に座って服薬する場合は、かかとをしっかり床に付けることで、姿勢が安定し、飲み込みが容易になる。また、咽頭や食道への送り込みに問題がある患者は、「椅子に座ったときに、尻をずらして上体を少し後ろに倒した姿勢だと、重力で飲み込みやすくなる」と藤島氏はアドバイスする(図7)。

図7 咽頭や食道への送り込みがしやすい姿勢

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 さらに、服薬するときの首の角度にも気を付けたい。救命救急の気道確保法に、頭部を後ろに反らせ、下顎を上げる「頭部後屈顎先挙上法」があるように、上を向くと咽頭と気管が一直線になるため、誤嚥しやすくなる。服薬するときに、上を向く人がいるが、実はわざわざ誤嚥しやすい姿勢を取っているといえる。

 誤嚥しにくいのは、顎を引いたうつむき加減の姿勢だ。首を前屈させることで、咽頭から気管への通路に角度が付くため、誤嚥しにくくなる(図8)。

図8 誤嚥リスクを軽減する姿勢

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 上を向かずに服薬するためには、図9のようなコップを用意しておくと便利だ。紙コップの飲み口の一部をカットして、カットした方を上(鼻側)にして使うことで、鼻にコップの縁が当たらず、上を向かなくてもコップを傾けて中の液体を飲むことができる。

図9 上を向かずに飲めるコップ

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 また、口腔や咽頭などに食塊や薬がたまりやすい患者であれば、空嚥下(食物を口に入れずに嚥下する)してもらうのもよい。首を前屈させて空嚥下すると、奥舌と喉頭蓋の間のくぼみ(喉頭蓋谷)にたまったものを流せる。また、横を向いて首を傾けて嚥下することによって、食道入口の両側にあるくぼみ(梨状窩)にたまったものを落としやすくなる。「服薬後に前を向いてうなずいてゴックン、右下を向いてゴックン、左下を向いてゴックンとしてもらうとよい」(藤島氏)。


ポイント 6
連携して服薬情報を共有する

 嚥下が困難な患者への服薬支援では、他職種との連携が欠かせない。

 薬剤師は、薬の飲み方に関するアドバイスはできるが、実際に薬を飲ませるのは、看護師や介護職員、家族であることがほとんどだ。また、嚥下の評価を行うのは、医師のほか歯科医師や言語聴覚士であることが多い。くまもと温石病院の森氏は、ベッドサイドへ行き自分で確かめるだけでなく、「嚥下の問題に関わっている他職種から、飲みにくそうな薬はないか、どの程度なら飲み込めるかなどの情報を得て、その患者に適した剤形や服薬方法を一緒に考えるようにしている」と話す。

「患者がどうすれば服薬できるか、その情報を共有することが大切」と話す、くまもと温石病院の森直樹氏。

 また、薬剤師が他職種と連携することによって、病棟や介護施設でよく行われている、薬を一律に潰して投与するといった習慣を改めるきっかけも生まれる。森氏が近隣の介護施設のスタッフを対象に調査したところ、約3割が独自の判断で薬を潰して投与していることが分かった。森氏は「看護師や介護スタッフには、『見た目は同じようでも、薬にはコーティングなどそれぞれ違った仕掛けがあり、潰してしまうと薬の効果や副作用に影響が出ることがある。自己判断で薬を潰さないでほしい』と説明するとともに、ぜひ薬剤師に相談してほしいと話している」と言う。

 さらに、森氏は病院薬剤師と薬局薬剤師の連携も大切にしている。「患者が退院して在宅へ移行する際、病院の看護師は入院中の患者の様子などを書いた看護サマリーを作成し、訪問看護師に情報提供する。薬剤師も、病院と薬局で患者の薬に関する情報を共有することが重要」と話す。

 森氏は、情報共有のためのツールとして、「薬剤管理指導サマリー」を活用している(図10)。サマリーには、患者の病名、アレルギー歴や副作用歴、腎機能、ADLなどとともに、入院中の服薬方法、服用困難な薬の有無、一包化の必要性やその方法、薬剤の管理方法、さらには嚥下障害の有無、義歯装着の有無などを記入し、嚥下と服薬の問題を考える上で必要となる情報がまとめられるようになっている。

図10 森氏が使用している「薬剤管理指導サマリー」

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 サマリーは、患者の退院時に作成し、かかりつけ薬局や転院先の病院の薬剤師に送付。入院中は、簡易懸濁とろみ法で服用していたのに、転院先では錠剤のまま配薬され、患者が服薬に苦労しているといったことがないように気を配る。「その患者にとってベストな薬物治療が継続して受けられるような連携が必要」と話している。

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