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DIクイズ1(A)
DIクイズ1:(A)H2ブロッカーが中止になったパーキンソン病患者
日経DI2018年5月号

2018/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2018年5月号

出題と解答 : 鎌田 貴志
みなみの薬局(鹿児島市)

A1

(3)酸性で吸収されやすく、中性・塩基性で吸収されにくい
(4)食後より空腹時に服用する方が、効果が高くなる

 パーキンソン病(PD)は、中脳の黒質に存在するドパミン神経が、次第に変性・脱落することで、神経伝達物質のドパミンが合成されなくなり、線条体においてドパミンが欠乏して起こる神経変性疾患の1つである。静止時振戦、筋固縮、無動などの運動症状や、うつ傾向に代表される精神症状のほか、便秘などの自律神経症状が見られる。

 治療の基本は、薬剤によるドパミンの補充で、基本薬はレボドパ含有製剤とドパミンアゴニストの2種である。ドパミンそのものは血液脳関門を通過しにくいため、その前駆体であり血液脳関門を通過できるレボドパが使われる。レボドパは脳内のドパミン神経でドパ脱炭酸酵素(DDC)によりドパミンに変換され、PDの症状を改善する。レボドパが脳内に到達する前にドパミンに代謝されないようにするため、近年では、カルビドパ水和物やベンセラジド塩酸塩といった末梢性DDC阻害薬(DCI)との合剤であるレボドパ含有製剤が主に使われている。

 レボドパ含有製剤は、年齢が比較的若い患者において運動合併症(ジスキネジア)を起こしやすい。一方、ドパミンアゴニストは高齢者や認知機能低下例で幻覚を誘発しやすい。そのため、70歳未満の患者はドパミンアゴニストから治療を始めることが多い。

 レボドパとカルビドパは、酸性で吸収されやすく、中性・塩基性で吸収されにくい特徴がある。酸化マグネシウムなどのアルカリ性の内服薬やH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの制酸薬と併用すると、胃内pHが上がってレボドパの吸収が阻害され、効果が減弱する可能性がある1)。Mさんには、近隣の内科診療所からH2ブロッカーのファモチジン(商品名ガスター他)が出されていたが、病院の神経内科医は、H2ブロッカーの影響で、スタレボ(一般名レボドパ・カルビドパ水和物・エンタカポン)の効果が十分得られていない可能性を考え、防御因子増強薬のテプレノン(セルベックス他)に変更したと考えられる。

 レボドパの吸収は食事内容や食事の時間にも影響を受ける。レボドパはその分子構造中にカルボキシル基とアミノ基を持ち、アミノ酸に類似した構造をしているため、吸収過程で腸管内のアミノ酸と競合拮抗する。そのため、レボドパ製剤服用中に高蛋白食を摂取するとレボドパの作用が減弱する可能性がある。

 食後投与では、絶食時投与に比べて、投与後2時間までの血中濃度時間曲線下面積(AUC)は平均27%、最高血中濃度(Cmax)は平均29%減少し、そのピークは平均34分遅れるとの報告がある2)。食後より空腹時に投与した方が薬剤の血中濃度が上昇するため、効果を増強させるために、服用時点が食後から空腹時に変更される場合もある。

 また、パーキンソン病の患者は、消化管運動が鈍く胃排泄能が低下していることが多いため、モサプリドクエン酸塩水和物(ガスモチン他)やドンペリドン(ナウゼリン他)を併用して薬剤の小腸への移行を促進させる場合もある。そのほか、レボドパは消化管内で鉄とキレート形成することが報告されているので、鉄剤との併用にも注意が必要である。

こんな服薬指導を

Illustration:山本(Shige)重也

 Mさんに処方されているスタレボは手の震えなどの症状を抑えるお薬ですが、内科で出されているファモチジンと一緒に飲むと、効果が弱まってしまいます。そのため、先生はファモチジンをテプレノンという別の胃薬に代えて、スタレボの効果を高めようとされたのだと思います。ファモチジンが残っていても、飲まないでくださいね。

 ほかにも、便秘薬の酸化マグネシウムや鉄剤、蛋白質の多い食事なども、スタレボの効果を弱める可能性があります。

参考文献
1)薬局 2003;54:2880-7.
2)N Engl J Med.1984;310:483-8.

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