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注射薬だけがなぜ特別なのか? 「薬局で注射」について考えてみた
日経DI2017年1月号

2017/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2017年1月号 No.231

  illustration:立花 満

 服薬指導時に「病院で注射を打った」と患者が話すことがある。しかし、薬の名前まで覚えている患者は少ない。もちろん、お薬手帳にも書かれていない。注射薬による治療に関しては、病院に確認しない限り、薬局ではほとんど分からないのが現状だ。

 近年、生物学的製剤の注射薬が次々と発売されており、骨粗鬆症や気管支喘息、脂質異常症といった身近な疾患でも使われるようになっている。内服薬から注射薬へと変更となった患者もいる。治療の選択肢が増えるのは良いことだが、注射薬の使用が薬局で把握できない現状では、医薬分業の本分である薬の一元管理ができず、処方チェックもできないのは問題だ。

 例えば、骨粗鬆症治療薬のプラリア(一般名デノスマブ)は、6カ月に1回と投与間隔が長く、適切に管理しなければ、投与を忘れかねない。また先日、プラリアが投与されているのに、別の医療機関でビスホスホネート製剤と活性型ビタミンD3製剤が処方された患者がいた。プラリア投与に伴う低カルシウム血症の治療・予防にのみ適応を持つデノタス(沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム)が処方されていたことから、プラリアの投与に薬局で気付けた。

 外来患者の注射薬に関しては、薬剤師によるダブルチェック機能が働いていない。「注射薬だけは医師のチェックだけで大丈夫」と言い切れるものではないはずだ。早急に、注射薬の投与が薬局でも分かる仕組みが必要だ。

 そこで提案だが、いっそのこと薬局で注射を投与できるように規制緩和をしてはどうだろうか。突飛な話に聞こえるかもしれないが、現在、外来患者に医師が注射を行っているケースはどれほどあるだろうか。医師の指示の下、注射は看護師が行っていることが多い。であれば、薬局に看護師を配置し、注射薬を投与する体制にしてもいいのではないだろうか。もちろん、幾つかの法改正を行い、しかるべき施設基準を設けて、それを満たした薬局のみが注射投与可能薬局とする必要がある。衛生管理や緊急時対応を含めた公的な研修制度を設けるなど、安全面での体制作りも当然、必要だ。

 注射薬が処方された患者は、注射投与可能な設備を有する薬局に行く。そこでは、まず薬剤師が注射薬も含め処方監査を行う。問題がなければ、患者は薬局の中に設けられた注射室で、看護師に注射をしてもらう。

 薬局で注射が打てるようになれば、患者は都合の良い時に薬局に行って受けることができ、医療機関での待ち時間は短縮される。医師は注射薬の処方チェックを薬剤師に任せることができる上に、高額な生物学的製剤の注射薬を在庫しなくて済む。薬局にとっては、他店との差別化になる上、収入増が期待できる。

 薬局内の注射室では、インスリンなど自己注射の指導も可能だ。自己管理が難しい高齢者は、毎日通ってもらい、医療者の指導を受けながら、注射を打つこともできる。検体測定も行いやすくなるだろう。さらに次の段階では、研修を受けた薬剤師に限り、注射薬の投与を可能にするという手もある。米国では薬局薬剤師がワクチンを投与するのが当然と聞く。薬剤師にしてみれば、職能が広がると考えれば望むところだ。

 これからの薬局は調剤機能だけでなく、様々な機能を備えたセンター的存在になっていく必要があるだろう。そうなったときに、真に地域の健康を守る拠点として国民に認知されるのではないだろうか。(みち)

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