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薬局なんでも相談室2
相談室2:管理薬剤師の責任の範囲はどこまで?
日経DI2015年9月号

2015/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年9月号 No.215

 管理薬剤師の業務範囲は、一言で言うならば薬局業務全般にわたります。

 管理薬剤師の責任を規定した法律としては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」があります。同法の第8条1項で、管理薬剤師の義務を「勤務する薬剤師その他の従業者を監督すること」「薬局の構造設備および医薬品その他の物品を管理すること」「その他その薬局の業務につき、必要な注意をすること」、第8条2項で「薬局開設者に対し、必要な意見を述べること」と定めています。

 これらがきちんと履行できていれば、管理薬剤師が法的責任を問われることは、まずないと考えられます。

 では具体的に何をすべきかということですが、まずは業務に当たって全ての薬剤師・その他の従業員が押さえておくべき内容を整理し、マニュアルなどで周知することが挙げられます。例えば、薬剤師が患者に必ず説明すべき情報をチェックリストにしておいたり、薬剤交付前の鑑査の手順をリスト化しておくことなどが必要でしょう。

 また、従業員が業務中にミスを起こした場合は、迅速に対処するとともに原因を追究して再発防止策を立案し実行する、研修・教育の機会を設ける、業務分担を見直す、単独では任せられない業務は自身が指導しながら行うなどの適切な対応が求められます。

 さらに、薬局の業務において何らかの問題がある場合は、第8条2項にあるように、薬局開設者に必要な意見を述べる義務もあります。例えば、人手不足のために業務が適切に行えないのであれば、従業員を増やすよう求める責任があります。ご相談のように、部下の薬剤師に指導を重ねてもミスが多いのであれば、「研修や教育の時間を与えてほしい」と開設者に働き掛けたり、明らかに適性がない人材であれば配置転換を求めたりすることも必要です。

 もしこれらが不十分であれば、事故やトラブルが起きた際、当事者だけでなく、管理薬剤師の責任も問われます。

 2011年に、自動錠剤分包機の設定ミスから、コリン作動薬のジスチグミン臭化物(商品名ウブレチド)を患者23人に誤って交付し、1人が死亡するという調剤過誤事件が起こりました。この事件では、後に不起訴処分となりましたが、管理薬剤師が業務上過失致死容疑で送検されています。誤調剤が発覚した後も、患者に連絡して薬剤の服用中止や回収の措置を取らず、開設者に調剤事故があったとの報告を行わなかった責任が問われました。これは、日ごろの管理責任だけでなく、冒頭に述べた第8条の「薬局の業務につき、必要な注意をしなければならない」という管理義務を怠ったことになります。

 民事訴訟については、現在のところ、管理薬剤師を対象とした例は聞かれません。ただ、民法第715条では、従業員などが第三者に損害を与えた場合、その使用者が損害を賠償する責任を負うこととしており(「使用者等の責任」)、使用者に代わって事業を監督する者も、同様の責任を負うと規定されています。今後、管理薬剤師を対象とした民事訴訟が起こらないとは言い切れません。

 民法第715条と、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第8条はともに、使用者や管理薬剤師の責任について、「相当の注意をした場合はこの限りではない」としています。まずは、管理薬剤師として、日ごろから監督・指導や注意喚起などを行うことが何よりも重要です。その上で、業務上の報告や業務体制の改善要望などを、文書できちんと残しておくようにしましょう。

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