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特集 :降圧薬 その処方、どうして?
利尿薬
日経DI2015年4月号

2015/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年4月号 No.210

 高血圧に使う利尿薬といえば、ほとんどの場合サイアザイド系利尿薬を指す。サイアザイド系利尿薬は用量依存性に副作用が増すため、少量から少しずつ使うのが原則だ。常用量の半分~4分の1で使用すれば、血糖値や尿酸値の上昇は少ない。それでも、第一選択に使われることはあまりない。

塩分過多な人に適する

 「サイアザイド系利尿薬が選ばれる患者として代表的なのは、塩分摂取量が過多な患者」と語るのは、東京都健康長寿医療センター(板橋区)顧問の桑島巌氏。「日本人は塩分感受性が強く、利尿薬のよい適応となる。私は患者全体の1~2割に、サイアザイド系利尿薬を第一選択で出している」と続ける。塩分摂取量が多い患者は水分貯留により循環量が増えており、利尿薬で塩分と水分を減少させることは病態に則した選択になる。

 また、塩分摂取量が多い患者では、塩分の取り込みを促進するRA系が活性化していないため、RA系阻害薬が効きにくいというのも理由の一つ。そういった患者では、まずサイアザイド系利尿薬を使い、1~2カ月ほどしてRA系阻害薬を追加することが多い。

ループ利尿薬は心不全に

 高血圧治療に用いられる利尿薬には、サイアザイド系利尿薬以外に、ループ利尿薬、カリウム(K)保持性利尿薬もある(表5)。最も利尿作用が強いのはループ利尿薬で、それは遠位尿細管で最もNaを再吸収している部位に働くからだ。水分を多量に排出できるので、主に心不全や浮腫の治療に使われる。サイアザイド系はその下流の、あまりNa再吸収をしていない部位で働くので、利尿作用は弱くなる。しかし比較的長時間かけて効くため降圧効果が高く、降圧薬として使われる。

表5 利尿薬の特徴(取材を基に編集部で作成)

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K保持性利尿薬はメタボに

 K保持性利尿薬(アルドステロン拮抗薬)はサイアザイド系のさらに下流で働き、利尿作用はさらに弱まる。しかし、アルドステロン活性化を抑制することでRA系も抑制されるため、降圧薬としても使われるほか、腎臓や心臓の線維化(アルドステロンで強く促進される)を抑える目的でも投与される。

 佐藤敦久氏は、「K保持性利尿薬は腎臓だけでなく中枢神経や血管壁などにも働いて総合的に血圧を下げる。そのため意外と使い勝手がよく、第一選択薬として使うこともある。アルドステロンは代謝異常に深く関わっており、内臓肥満や脂質異常、糖尿病の人には明らかに効きがいい」と評価する。

 下の利尿薬の処方数ランキングでは、ループ利尿薬が最も多くなっているが、これは降圧目的というより、心不全合併例などでその治療を優先した使用が多いためと考えられる。

利尿薬の処方数ランキング

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※降圧目的ではないケースが含まれている可能性に注意を要する。(データ提供:メディカル・データ・ビジョン)

インダパミドを使う
○降圧効果の重視など

 一般に、サイアザイド系利尿薬はヒドロクロロチアジドやトリクロルメチアジドなどが使われる。ヒドロクロロチアジドはARBとの配合薬に多く使われており、トリクロルメチアジドと合わせてメジャーな利尿薬だ。

 その中で、あえてインダパミドを使うというのは、桑島氏。「インダパミドの方がヒドロクロロチアジドやトリクロルメチアジドよりも長時間作用し、降圧効果にも優れる。加えて、イベント抑制効果を示したエビデンスもインダパミドが圧倒的に多い」というのが理由だ。

 また、「トリクロルメチアジドの方が使い慣れているが、インダパミドの方が尿酸値を上げにくいので、尿酸値が高い患者にインダパミドを優先することがある」(宮川政昭氏)という意見もある。単剤で使うならインダパミド、という言葉は循環器専門の医師から多く聞かれる。配合薬がないのがネックだ。

ループ利尿薬を使う
○CKD患者のさらなる降圧

 ループ利尿薬といえば、心不全患者のうっ血改善目的で使われる。では、降圧目的でループ利尿薬が処方されているとすれば、それはなぜか。

 「ループ利尿薬を降圧目的で使う場合のほとんどは、腎機能が悪い場合だ」。こう語るのは工藤博司氏。「サイアザイド系利尿薬をGFRが低下した患者に使うと、腎血流量や糸球体濾過量がさらに減るので、Naが排出できず効かなくなる。ループ利尿薬は腎血流量を低下させにくいので、腎機能が低下した患者に降圧目的で使いやすい」(工藤氏)。腎機能が低下していると、フロセミドの腎排泄は遅延し長時間持続する。なお、こうした患者では腎保護の目的で、RA系阻害薬を使用しているケースが多いという。

 「CKD診療ガイド2012」では、GFRが30mL/分/1.73m2以上ならサイアザイド系利尿薬を使用可だが、それ未満ならループ利尿薬を使う旨が記載されている。降圧目的でループ利尿薬が選択されていれば、重度のCKDである可能性が濃厚ということだ。

ループ利尿薬を使う
○むくみの強い患者の降圧

 ループ利尿薬を降圧薬として使うケースは他にもある。東邦大学医療センター大橋病院副院長の長谷弘記氏は、トラセミドまたはアゾセミドを降圧目的の1剤目として使うという。

 「トラセミドとアゾセミドは長時間作用型のループ利尿薬であり、フロセミドより強い降圧効果が得られる。むくみが気になる女性では少量を降圧薬として使うことがある」と長谷氏は話す。1週間程度でむくみの軽減がある程度得られれば、他の降圧薬を追加したり、切り替えていくようだ。

利尿薬を夜に使う
○早朝高血圧是正に

 利尿作用のある薬を夜に使うのも意外な処方かもしれない。夜間頻尿になって患者の利便性を損なわないか、という疑問がわいてくる。

 「サイアザイド系利尿薬の利尿作用は最初だけ。体内のNaが十分に出てしまえば、利尿作用はさほど問題とならない」と語るのは、宮川氏。初回投与から2~4週間たてば、早朝高血圧の是正などを目的に、夕食後や就寝前に服用時点を変更できるという。

利尿薬を併用する

 このほか、利尿薬を併用するケースに遭遇することもあるだろう。例えば、ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬で低K血症になるのを予防するために、K保持性利尿薬を追加することがある。また、ループ利尿薬を長期に使用して利尿作用が減弱した患者で、サイアザイド系利尿薬を追加して利尿作用を増強させるなどの使い方もある。ただ、こうした用法は「主に心不全の治療で行われる用法」(長谷氏)と覚えておくといいようだ。

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