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特集 :降圧薬 その処方、どうして?
Ca拮抗薬
日経DI2015年4月号

2015/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年4月号 No.210

 高血圧に適応のある内服のCa拮抗薬のうち、よく処方されているものを調べた結果が、下の処方数ランキング。DPC対象病院93施設のデータを集計した。アムロジピンが圧倒的なシェアを占め、ニフェジピン、アゼルニジピン、ベニジピン、シルニジピンと続いており、この辺りがよく使われることが分かる。

Ca拮抗薬の処方数ランキング

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 ARBの処方数と比べても分かるが、Ca拮抗薬は全体で最も処方数が多い。国際医療福祉大学三田病院(東京都港区)内科部長の佐藤敦久氏は、「降圧力を求めるなら、間違いなくCa拮抗薬。アムロジピン10mgやニフェジピン徐放(CR)錠80mgなどを使えば、他の降圧薬は太刀打ちできない。ARBのように塩分過多の患者で効きにくいといった制限も少なく、守備範囲が広い」と評価する。

 Ca拮抗薬の強さを示すデータとして分かりやすいのが、ARBと比較したVALUE試験(図4)。「この試験は、バルサルタン(ディオバン他)とアムロジピンで同じだけ血圧を下げたら、バルサルタンの方がイベントを抑制できるという仮説を証明しようとしたのに、アムロジピンが予想以上に血圧を下げてしまい、仮説が検証できなかった。他の試験でも同様の傾向が示されており、ARBは降圧力でCa拮抗薬に及ばないことを多くの医師は認識している」と、佐藤氏は解説する。

図4 Ca拮抗薬とARBを比較したVALUE試験の血圧推移

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アムロジピン群はバルサルタン群に比べて早期から血圧を下げ、全期間にわたって有意差がついていた(P<0.0001)。そのため、降圧差が同じ場合のイベント抑制効果を調べることができず、投与0~3カ月では1次エンドポイント(心疾患イベント発生率)でアムロジピンが勝ってしまった。(Lancet.2004;363:2022-31.)

 では、実際の処方例を見ていこう。

T型・N型を選ぶ
○腎保護、副作用軽減など

 売れ筋のアムロジピンとニフェジピン以外のCa拮抗薬が使われた場合、処方意図を探るポイントの1つが、作用するCaチャネルの違い(表2)。

表2 主なCa拮抗薬の特徴(取材を基に編集部で作成)

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 「アゼルニジピンはT型チャネルに作用するので、CKDの患者によく使う」と言うのは、東京歯科大学市川総合病院内科教授の林晃一氏。その理由は、腎保護作用が見込まれるからだ。

 腎微小血管にはL型、N型、T型という3種類のチャネルがある(図5)。この中でN型、T型に作用するCa拮抗薬は腎保護作用や浮腫の軽減作用があるとされる。L型を抑制すると輸入細動脈を拡張するので糸球体内圧を上げる方向に働くが、N型とT型を抑制すると輸出細動脈も同時に拡張でき、糸球体内圧を下げられる。これが腎機能の維持に働くことになる。

図5 腎糸球体とCaチャネルのタイプ

L型チャネルの抑制は腎糸球体に血液を送る輸入細動脈のみを開くが、N型/T型チャネルの抑制は輸出細動脈も開き、糸球体内圧を下げる。

 もっとも、「全体的な降圧力が強ければそれだけ糸球体内圧も下げられるので、アムロジピンも悪いわけではない。進行したCKDで微妙なさじ加減が必要な際に、チャネルの違いを考慮している」(林氏)という。

 このほか、下肢浮腫の軽減にもアゼルニジピンは使われる。「一般に、N型やT型に作用するCa拮抗薬はL型のみ作用するものより抹消浮腫が少ない。経験的にも、アムロジピンなどからアゼルニジピンやベニジピンに切り替えると、浮腫が軽快しやすい」と林氏は話す。

 浮腫だけでなく、頻脈の軽減目的で使うこともある。勝谷医院(兵庫県尼崎市)院長の勝谷友宏氏は、「アムロジピンで頻脈が出る人は、特にアゼルニジピンに切り替えると頻脈が抑えられる感触があり、よく使う」と話す。

 また、作用時間に着目した投与もある。宮川内科小児科医院(横浜市保土ヶ谷区)院長の宮川政昭氏は、「作用時間の短いシルニジピンは、早朝高血圧だけ高い場合に、夜に使うことがある。10mmHgほど高いならニフェジピンCR錠を使うが、5mmHg程度ならシルニジピンで調整する」と話す。

Ca拮抗薬を朝夕分2にする
○降圧効果の補強

 アムロジピンはCa拮抗薬の中でも最も長時間作用し、1日1回投与で安定的な降圧が得られる。それをわざわざ分2にする狙いは何か。

 「目的は、早朝高血圧に対する降圧効果の補強」と語るのは、古井医院(愛知県豊田市)院長の古井宏彦氏。古井氏は、アムロジピン5mgを1日1回に投与した群(199人)と2.5mgずつ1日2回に分けた群(260人)の治療効果を比較し、早朝高血圧の低下に差があることを見いだした。1回投与群では収縮期血圧低下が平均10mmHgだったのに対し、2回投与群では12.5mmHgだった。さらに、併用薬の数も1.8剤対1.5剤で2回投与群の方が少ないという結果も得られた。

古井氏は「アムロジピンは長時間作用型とはいえ、2回に分けた方がより効果的な降圧を得られ、浮腫も少ない印象がある」と説明する。

Ca拮抗薬同士を併用する
○CKD患者の降圧

 この処方は、腎保護目的でARBとT型チャネル作用のあるCa拮抗薬を併用しているところに、アムロジピンが後で追加になったものだ。

「この処方は、腎障害が進行している患者に行う」と語るのは、林氏。腎障害のある患者では、腎血流が減っていることなどにより、投薬を慎重にしないと腎不全になる危険性がある。

 「腎血流を減らす利尿薬は怖いし、CKDに良いはずのRA系阻害薬も、糸球体内圧を過度に低下させて濾過量(GFR)を減らしてしまい、腎機能を悪化させることがある。ここから血圧を下げたい場合には、腎臓に影響が少ないCa拮抗薬の追加という考えにたどり着く」(林氏)。

 上の処方ではアゼルニジピンは適応上16mgが上限なので増やしにくく、アムロジピンの追加になったわけだ。

Ca拮抗薬同士を併用する
○冠攣縮の予防

 上記の処方は古井氏によるもので、狙いは冠攣縮性狭心症の発作予防だ。「冠攣縮は一般に朝に起きやすいので、その予防に冠攣縮予防効果が強いベニジピンまたはニフェジピンCR錠を夜に追加することがある。血圧をさほど下げたくない場合はベニジピン、下げたい場合はニフェジピンCR錠を追加する」と古井氏は解説する。

 ニフェジピンはもともと冠攣縮性狭心症に有効な薬剤として知られ、ベニジピンの冠攣縮予防効果に関しても、その有用性を示した論文がある(Circ J. 2010;74:1943-50.)。

 なお、冠攣縮の予防にはジルチアゼムも有効だ。くどう循環器科・内科(大分県竹田市)院長の工藤博司氏は、冠攣縮の予防が必要な患者では、ジルチアゼムをアムロジピンに積極的に追加するという。「ジルチアゼムは降圧薬としては弱く、血圧をあまり下げたくない患者に適する」と語る。

Ca拮抗薬を就寝前に変える
○早朝高血圧の是正

 ARBを朝、Ca拮抗薬を夜と別々に服用させているが、これは早朝高血圧の是正を狙ったもの。宮川氏は、このような処方を実際に30人の患者で試し、有効性を論文で発表している。

 ARBとアムロジピン5mgを朝1回に服用した患者の早朝高血圧における目標値達成率は20%だった。そこでARBを朝1回、アムロジピン5mgを就寝前に変更したところ47%に上昇。ARBを朝1回、ニフェジピンCR錠20mgを就寝前に変更すると、達成率が63%へとさらに上昇した。

 「まずはアムロジピンで就寝前投与を試すことが多いが、ニフェジピンCR錠の方が早朝高血圧の是正に向いている」というのが、宮川氏の感触だ。

 なお、こうした投与時間の調整は他の降圧薬でも試みることが多いと宮川氏は言う。

 「早朝高血圧の是正を狙う場合、まずは降圧薬の投与時間を夕または就寝前に変更し、それでもだめな場合は他の降圧薬を追加して朝1回と夕または就寝前1回の合計2回にする。結果的にARBが朝1回、Ca拮抗薬が夕または就寝前1回に落ち着くことが多い」(宮川氏)としている。

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