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DIクイズ5(A)
DIクイズ5:(A)けがをした時に行われる注射と処置
日経DI2015年4月号

2015/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年4月号 No.210

出題と解答 :飯島 彩、笹嶋 勝
(日本メディカルシステム株式会社[東京都中央区])

A1

(4)生理食塩水

A2

(3)沈降破傷風トキソイド

 創傷はかつて、化膿防止のために消毒するのが一般的だった。しかし現在では、創傷部周辺はともかく、創面は消毒すべきでないという考えに変わっている。理由として、消毒薬が創傷面のヒト細胞にも有害であること、細菌が一定量存在しても創傷は治癒することなどが挙げられる。

 そのため、創面は消毒せず水道水や生理食塩水などで洗い流すのが主流である。洗浄後は、創傷の程度に応じて壊死組織の除去・縫合を行うが、さほど重傷でない場合は被覆材で処置するのにとどめることも多い。

 創傷部の保護の方法にも変化がある。以前は化膿を防ぐために乾燥すべきとされ、ガーゼなどが用いられたが、創傷部からの滲出液に治癒を促進する成分が含まれていることから、現在では湿潤環境を維持できる被覆材が用いられる。

 Aさんが病院で受け取ったデュオアクティブは、創面を湿潤環境に保つ創傷被覆材の1つである。デュオアクティブの創面側には親水性コロイドがコーティングされており、これが滲出液と反応してゲル化し、創面を湿潤状態に保つ。一方、反対側は疎水性となっており、水や湯などがかかっても創面に到達しにくい。

 効果として、創の保護、湿潤環境の維持、治癒の促進、疼痛の軽減が期待できる。保険適応は皮下組織に至る創傷で、使用期間は2週間が標準とされている。その後は創の状態に応じて市販の創傷被覆材(キズパワーパッドなど)を患者が購入し、使用することになる。

 Aさんはデュオアクティブを貼ったまま入浴してよいか疑問に感じているが、多くの場合、問題はない。コロイドが水分を吸収して膨張するが、しばらくすると元に戻る。また、新しく貼り直してもよい。

 なお、創の場所や状態によっては、治癒に伴いケロイドが生じ得る。これを予防するために、フルドロキシコルチドのテープ剤(商品名ドレニゾンテープ)を傷口より少し大きく切って貼ったり、トラニラスト(リザベン他)を服用することもある。

 これらの投与期間は比較的長期(6カ月以上)にわたるケースが多く、特にトラニラストによる頻尿などの膀胱炎症状や肝機能障害などには注意が必要である。

 また、受傷後の感染予防に関しては、特に破傷風の予防措置が積極的に取られることが多い。破傷風は発症頻度が少ないものの、軽微な創傷も原因となり得る。

 今回Aさんに打たれた注射薬は破傷風トキソイドであると考えられる。破傷風の予防には破傷風トキソイドおよび抗破傷風人免疫グロブリンが用いられるが、通常は破傷風トキソイドのみが使用される。グロブリンを追加する場合は、トキソイドを打った側とは逆の肩に注射される。

 破傷風以外の各種感染症予防のために抗菌薬を使うことも考えられるが、バンコマイシン塩酸塩やゲンタマイシン硫酸塩の注射薬を、創傷後の感染症の予防に用いるのは一般的ではない。比較的軽症の創傷の場合は通常、経口薬が使用される。Aさんに処方されたクラブラン酸カリウム・アモキシシリン水和物(オーグメンチン)も、破傷風以外の感染症予防のために処方されたと考えられる。

こんな服薬指導を

イラスト:YAB

 肩にされた注射は、破傷風菌による感染を予防するためのものと考えられます。破傷風は軽い傷でも発症することがあり、重症化することもありますので、積極的に予防する必要があります。先生もそのように考えて、注射をされたのだと思います。

 また、こちらの飲み薬は破傷風以外の細菌による感染症を予防する目的で出されているのでしょう。蜂窩織炎や髄膜炎など、重症化すると入院が必要になる厄介な病気もありますので、こちらもきちんと飲んでください。

 それから、デュオアクティブは貼ったまま入浴できます。水を吸って膨らみますが、入浴後には元に戻ります。もし気になるようでしたら、貼り直しても問題ありません。

本クイズは、書籍『日経DIクイズベストセレクション STANDARD篇』からの再掲載です

参考文献
福島雅典『メルクマニュアル第18 版日本語版』(日経BP、2006年)

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