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社長はつらいよ
国試合格が9人中たった2人!
日経DI2015年4月号

2015/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年4月号 No.210

 4月、慢性的に薬剤師が不足している当社にとって、新人が入社してくる、心躍る季節だ。

 4月も半ばになれば、フレッシュマンたちがOJT研修という名の下に即戦力として活躍してくれる。薬剤師さえ増えれば、みんなが余裕を持って仕事ができるようになるはず。

 しかし、この新戦力を迎えるまでには、ボクの涙ぐましい努力がある。思い起こせば一昨年の夏から戦いは始まった。しがない地場の小規模チェーンである当社は、大手チェーンのように、地引網で薬学生をさらうような採用戦術は使えない。薬学生の大企業志向は根強く、普通に採用活動をしていては誰も当社になんか来てくれないのである。あの手この手、その手まで使って、何とか薬学生を振り向かせるしかない。

 まずは、会社を魅力的に見せるためのパンフレット作りだ。そのために薬局のロゴマークも変えた。広告代理店に依頼し、その気にさせるキャッチコピーを書いてもらった。そして社員の中から選りすぐりの美男美女薬剤師を集めて腕のいいカメラマンに撮影してもらい、イケてるデザイナーにカッコいいパンフレットを作ってもらった。

 さらにダイレクトメールを6000人に送り、薬学生の自宅に送られる雑誌やウェブに求人広告も掲載した。

 もちろん、大手紹介会社が主催する就職セミナーにブースを出し、薬系大学の会社説明会には全て参加した。社長自らセミナーや会社説明会に出向き、話を聞きに来た薬学生に熱弁を振るった。うちの会社に来れば将来はバラ色だと思ってもらえるようプレゼンをしまくった(つもり)。狙った獲物は逃がさない! 最初から最後まで、小さなイエスを確実に取っていくという、MR時代に培った“落とし”のテクニックはいまだ健在だ。

 さらに、薬学生の会社訪問に備え、薬局見学会を行う店舗と本社は、壁を塗り直してカーペットも貼り替えた。

 こうして面接と適性試験、大学の成績表を基に、約50人の採用内定者を決めた(というか、試験を受けた人で内定を出さなかったのは、ごくごく一部で、ほとんどは内定……)。

 内定を出した後も戦いは続く。他社や病院に心移りしないように、心をつなぎ留める努力が必要な時代なのだ。まず4月には内定者全員を集めた食事会を開催し、さらに毎月、誕生月の人を集めた誕生会を“星付き”のレストランで行った。

 夏休みには全員を集め、薬剤師国家試験予備校から講師を呼んで国試対策の合宿講座を開催。極めつけは、合格祈願。天満の天神さんに祈願に行き、国試合格を神頼みした。

 ここまでやっても内定辞退者は出る。結局、最後に残ったのは……9人。まぁ、9人いれば、1人や2人、国試に落ちたとしても上出来だ。そう思って一安心したのも束の間、国試を終えた学生たちからの報告を受けて愕然とした。

 な、なんと、国試合格者はたったの2人。落ちた学生はみんな泣きながら電話をしてきたというが、泣きたいのはこっちだ。莫大な努力と費用を掛けて、採れたのはたったの2人。ボクの燃えたぎった1年半は一体、何だったのだろう。既に来年4月採用者の争奪戦は始まっているにもかかわらず、出るのはため息ばかり。はぁ~。

 採用活動のツールを眺めながら、「今、うちの会社で働いている薬剤師たちを、もっともっと大切にしよう」と、心に固く誓う社長であった。(長作屋)

筆者プロフィール
関西エリアを中心に展開する薬局チェーンのオーナー(非薬剤師)。
16年前に製薬会社を辞めて薬局を開設、今では25店舗を経営。

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