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Report
結果発表!第2回日経DI薬局ツールグランプリ
日経DI2015年3月号

2015/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年3月号 No.209

 第1回(本誌2014年6月号)に続き第2回では、調剤室や待合室、在宅の現場で、患者や家族、薬局で働く人の「安全」を守るツールを募集した。募集部門は、調剤部門、患者サービス部門、在宅部門の3つ。

 まず編集部で一次審査を実施し、調剤部門から23作品、患者サービス部門から13作品、在宅部門から5作品を選定した。次に、外部審査員による本審査を、2014年12月25日に開催。審査員は、第1回と同様、ファイン総合研究所(岐阜市)専務取締役の近藤剛弘氏、ファーコス(東京都千代田区)人材開発部部長の溝部啓子氏、ネオフィスト研究所(東京都目黒区)取締役所長の吉岡ゆうこ氏の3人。

 本審査では、1)テーマとの合致性、2)新規性、3)経済性、4)普遍性、5)デザイン性、6)ユニバーサル性、7)着想性─の7項目で採点してもらい、合計得点が高かった上位2~3作品の中から、部門ごとの受賞作品を審査員の協議で決定した。

 協賛企業の冠賞(シンリョウ賞)は、部門賞の選に漏れた作品の中から授与した。残念ながら、審査員の総評は厳しいものだったが、受賞作品にはキラリと光る工夫がある。その内容を紹介する。

審査員の総評

近藤剛弘氏
ファイン総合研究所専務取締役

 今回の応募作品の多くは、既にどこかで見たことがあるもので、新規性の乏しいものだったのが残念。また、便利グッズも多かった。しかし、安全は便利とは異なる。次回は、思わず「参りました」と言ってしまうような作品を待っている。

溝部啓子氏
ファーコス人材開発部部長

 今回のテーマである「安全」に対して、どんな発想で、どんな作品が寄せられるかを楽しみにしていたが、大胆な発想を感じられる作品は少なかった。
 次回は、より自由な発想で新しいツールを作り、応募してほしい。

吉岡ゆうこ氏
ネオフィスト研究所取締役所長

 誰にとっての安全かを意識して作られたものは、少なかったように思う。「安全」といっても、患者、自分たち、社会のいずれに対する安全かによりツールに求められることは異なってくる。目的を明確にした上で開発するといいだろう。

イラスト:タラジロウ

最優秀賞患者サービス部門賞

「ジョイント針イヤイヤツール」
健康堂薬局(山形県寒河江市) 佐藤陽子氏

 最優秀賞に輝いたのは、「ジョイント針イヤイヤツール」。別分包した分包紙を1回分ずつまとめる際、インデックス用のラベルシールを使うというもの(図1)。ホチキス針の代わりにラベルシールを用いて患者の安全を守る。

図1 ラベルシールで分包紙をまとめる

くけ台につないだ掛針(中央)で、分包紙の一端を固定しておき、あらかじめ半分に切っておいたラベルシール(下)を貼る。

 ラベルシールを効率的に貼り付けるには分包紙をピンと張っておくのがポイント。そのために、古くから和裁に使用されているくけ台と掛針(かけばり)を用いている。和裁の道具を薬局ツールに利用するというアイデアは、審査員の目を大いに引くものだった。  このツールを考えたのは健康堂薬局管理薬剤師の佐藤陽子氏。開業して40年以上という超ベテラン薬剤師だ。

ホチキス針は絶対イヤ

 別分包した分包紙をまとめるためにホチキスが使用されることがあるが、ホチキスの針は落ちれば、手や足に刺さる危険性がある。「薬は口に入れるもの。その袋にホチキス針は絶対使いたくない」と佐藤氏は強調する。

 「ジョイント針イヤイヤツール」を考えつくまで佐藤氏は、液体のりで貼り付けるなど、色々と試したという。

 卓上に立てて置ける液体のりはすぐ乾いて使い勝手がいいものの、製造元に確認したところ、「口に入れた際の安全性は未確認」との答えを得たという。そのため、分包紙に用いることを断念。一方、「口に入れても安全」と製造元の太鼓判を得たデンプンのりは、乾きにくく使い勝手が悪かったという。

 そこで、100円ショップで売られているカラーのラベルシールを用いて、分包紙を貼り付けることを考え出した。ラベルシールは、曲げやすくなるので、半分に切って使用している。

 今回、ラベルシールで分包紙をまとめるというアイデアで最優秀賞を受賞した佐藤氏だが、「本来、のりで貼るのが一番。一塗りですぐ乾き、卓上に立てて置くことができ、かつ万が一、経口摂取しても安全性が保証されたのりを製品化してほしい」と訴える。

 佐藤氏は、これまでも「使えそうなものは何でも試してきた」というアイデア薬剤師だ。今回、計5つのツールを応募してくれた。

 そのうちの1つが「薬袋不要在宅ケース付きキャスター」。これは、在宅患者や施設入居患者の薬袋代わりに、キャスター付きのチェストを用意し、引き出し1つに7日分の薬を朝昼夕でセットして提供するというもの。受賞には至らなかったが、審査会では話題になっていた。

ホチキス針を分包紙に使うのは危険。分包紙をまとめる際に、ラベルシールで安全にくるむという発想は、面白いと思う。和裁道具を活用している点も含めて評価したい。

日本の伝統であるくけ台と掛針を使っているので、びっくりした。調剤室以外にあるものでも、薬剤師の業務に活用できることを示す好例だろう。ラベルシールも使い勝手が良さそう。


調剤部門賞

「監査もできる水剤ラベル」
文京まゆみ薬局(東京都文京区) 鈴木直樹氏

 調剤部門賞を受賞した「監査もできる水剤ラベル」(図2)を作成したのは、文京まゆみ薬局(東京都文京区)管理薬剤師の鈴木直樹氏だ。

図2 Excelを活用した「監査もできる水剤ラベル」

ラベル作成はExcel(左)に必要事項を入力するだけ。印刷されたラベル(中央)の左半分を水剤ラベルとして使用する(右)。

 鈴木氏は、第1回のツールグランプリに、「楽らく水剤ラベル作成ツール」を応募し、審査員の高評価を得ていた。今回受賞したのは、第1回に応募したツールの進化形ともいえるものだ。

 前回は、表計算ソフトのExcelを活用し、薬剤の1日量を入力すると1回量が自動計算され、かつ、水剤瓶に貼るラベルシールを作成できるというツールを開発した鈴木氏。今回は、マクロを組み直して、監査に利用できるように、入力した1日量から患者の予想体重を計算して表示する機能を追加した。

 「薬剤を渡す際、表示された予想体重と実際の患者体重を比べることで、過剰投与を未然に防ぐことができる」と鈴木氏は説明する。

自身のウェブサイト上で公開

 Excelの操作は簡単で、ポップアップに従って患者氏名、服用回数、服用日数を入力した後、1日量を入れるだけ。自動的に予想体重が出てくる。水剤としての処方頻度が高い薬剤はExcel上に登録してあるので、選択肢の中から選べばよく、薬剤名を打ち込む必要はない。

 ラベルの印刷には、お薬手帳用のプリンターをそのまま利用できる。余白には「冷所保管」などの文字も印字されるので、水剤用のラベルを切り離した後に、薬袋などに貼って活用できる。

 鈴木氏は、誰でもこのExcelファイルをダウンロードして活用できるよう、同氏のウェブサイト「薬歴を速く書くコツ」上で公開している。「これを使えば、頓服用の水剤ラベルも容易に作成できる」とも話す。

水剤用のラベルは小さく、きれいに書くのが難しい。簡単にラベルを作れ、かつ薬の1日量から体重を推算できるという逆発想が面白い。

1日量から算出した予想体重と、実際の患者体重を比べることで過剰投与を防ぐというのは、今回の「安全」というテーマに沿っている。


在宅部門賞

「卓上おくすりカレンダー」
コーセー薬局登戸店(千葉市中央区) 清水奈々氏(写真左)、伊藤江美子氏(右)

 「市販の服薬カレンダーに入れてお薬を届けていた在宅患者さんの中に、わざわざ1日分を出して、手元に置いている方がいる」─。

 「卓上おくすりカレンダー」(写真1)を作成したきっかけは1人の患者さんだったと、コーセー薬局登戸店管理薬剤師の伊藤江美子氏は語る。薬局に戻ってから、「その患者さんには、手元に置ける服薬カレンダーがいいのかな」と、同薬局の清水奈々氏に相談したところ、清水氏がすぐに実物を作成してくれたという。卓上おくすりカレンダーは、伊藤氏のアイデアを清水氏が形にすることで誕生した。早速、その患者さんに届けたところ、とても喜ばれ、今も愛用してもらっているそうだ。

写真1 服薬状態が一目で分かる「卓上おくすりカレンダー」

分3タイプ(左)と、分2タイプ(上)の卓上おくすりカレンダー。14日分の薬剤をポケットに入れると自立する。

 14日分の薬をセットできるポケットを備えた日めくりカレンダーで、朝昼夕の3回分のポケットが付いている分3タイプと、ポケットが2つの分2タイプがある。どちらも、テープ状の粘着メモを用いて日付を付け替える。14日分の薬をセットすると薬の厚みで自立するので、卓上にそのまま置けるのが特長だ。日付ごとに薬を入れているので、患者自身で服薬を管理しやすい。また、このカレンダーを回収することで、薬剤師は患者の服薬忘れを確認できる。

導入時は患者自尊心に配慮

 このカレンダーを使用しているのは、独居の軽度認知症患者。「認知機能が低下してきて服薬管理が少し怪しくなっても、ヘルパーさんの訪問は週数回に限られるので、自分で服薬を管理しなければならない患者さん」(伊藤氏)だ。

 ただし認知症の初期では、自分の認知機能が低下してきていることを認めたがらない場合が多い。そのため、導入時には、服薬管理が難しくなったからこれを使うという説明ではなく、「インテリア兼便利グッズ的な位置付けで、患者さんに紹介している」と清水氏。「Aさんのために、特別に作りました」と、説明すると患者に受け入れられやすいとも話す。患者宅を訪問する、ケアマネジャーやヘルパーが、このカレンダーを持つ患者に「すてきなカレンダーね」などと声を掛けてくれることも、服薬アドヒアランスの向上に役立っている。

 独居の認知症患者は少なくない。重症化すればヘルパーが服薬管理者となるが、軽度の患者は自分で服薬を管理しなければならない。そんな患者の自尊心を傷つけることなく、服薬アドヒアランス向上に貢献するのが、「卓上おくすりカレンダー」といえそうだ。

松岡修造氏の日めくりカレンダーが売れていると聞く。このカレンダーも元気が湧くような励ましの言葉がちりばめてあるとより良かったかも。

薬を入れると自立し、卓上に置ける。目立つ色で作ってあり、飲み間違いをなくすのに役立ちそうだが、もう一工夫あるとよかった。


学生賞

「調剤レベルカード」
就実大学5年生 田中智大氏(写真左)

 今回学生賞を受賞したのは、就実大学薬学部5年生の田中智大氏による「調剤レベルカード」だ(写真2)。田中氏が2014年9~11月に、かも調剤薬局(鳥取県米子市)で薬局実務実習を受けた際に作成した。

写真2 「調剤レベルカード」の活用例

カード(右上)に付いたクリップで調剤カゴに立てて使う(左)。一番前と一番後が同じ段階を示す(右下)ので、反対側からも、一目で調剤の段階が分かる。

 かも調剤薬局が応需する処方箋のほとんどは外来患者のものだが、在宅患者や介護施設入居者の処方箋も、割合は少ないながら受け付け、薬を配達している。在宅や施設入居者用の薬を調剤中に来局者があると、前者の調剤を一時中断して後者の処方箋に対応する必要がある。そうすると「どの段階まで作業が進んでいたかを忘れてしまうことがあった」と、かも薬局を運営するスマイル保健企画代表取締役の上原隆氏(写真右)。この問題を解決する良いツールはないかと上原氏に相談され、田中氏が作成したのが「調剤レベルカード」だ。

 調剤レベルカードは、「調剤待ち」(赤色)、「鑑査待ち」(黄色)、「セット待ち」(緑色)、「配達待ち」(青色)の4枚のカードを組み合わせてリングでつないだものだ。

 「めくった際に一番上と一番下が同じになるよう工夫した」と田中氏は説明する。調剤カゴに立てて取り付けられるように、クリップを付けてあるので、反対側や少し離れた場所から見てもどの段階かがすぐ分かる。

両端が同じ段階を示すよう工夫している点に気遣いを感じた。リングで複数のカードをまとめ、調剤カゴに立てて使っている点が新しいと思う。


シンリョウ賞

「薬識啓蒙ポスター」
上本町中央薬局(大阪市天王寺区) 三宮和晃氏(写真3)

「安全につながる“薬局”の流れ」
ABC薬局川添店(大阪府高槻市) 芦田泰弦氏(写真4左端)

 待ち時間対策は、どの薬局でも課題の1つだろう。シンリョウ賞は、待ち時間に対する患者理解を得る目的で作られた2つのツールに与えられた。上本町中央薬局三宮和晃氏の「薬識啓蒙ポスター」(写真3)と、ABC薬局川添店芦田泰弦氏の「安全につながる“薬局”の流れ」(写真4)の2つだ。

写真3「薬識啓蒙ポスター」を作成した上本町中央薬局の三宮和晃氏

 「薬識啓蒙ポスター」は調剤の流れを解説するポスターだ。三宮氏は、「患者さんの不満の一部は調剤に時間が掛かる理由を知らないことから生じているのではと考えた」と、ポスターを作成した理由を話す。

写真4 調剤の流れをポスターと小冊子で説明 

 ポスターを掲示して以来、待ち時間に対する苦情が減ったと感じていると三宮氏はいう。特に「粉薬や一包化は時間が掛かることを理解してもらえるようになった」と語る。三宮氏が作成したポスターは、系列薬局25店舗全てで活用されている。

 一方、「安全につながる“薬局”の流れ」は手作りの小冊子(写真4右)とカウンター上に貼ったポスター(同左写真の赤い囲み)からなる。これも、処方箋を受け取ってから、薬が渡されるまでの調剤の流れを示す。小冊子には、同薬局の社員が写真で登場し、調剤の流れを説明している。

薬剤師は知っていても、患者は知らない言葉がある。「薬識啓蒙ポスター」は、分かりやすい表現を使い、読み仮名も付けてあるので親切。

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