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臨床診療のミニマムエッセンス
「熱が出た」と言われたら
日経DI2015年3月号

2015/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年3月号 No.209

岸田 直樹◆Naoki Kishida
Sapporo Medical Academy代表理事/総合診療医・感染症医/感染症コンサルタント
1995年東京工業大学理学部中退、2002年旭川医科大学卒業。手稲渓仁会病院総合内科フェロー、県立静岡がんセンター感染症科フェローなどを修了後、10年より手稲渓仁会病院総合内科・感染症科を経て14年4月より現職。東京都病院薬剤師会特別委員、旭川医科大学や北海道薬科大学、北海道医療大学の非常勤講師を務める。著書に『誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた』(医学書院)、『ここからはじめる! 薬剤師のための臨床推論』(じほう)など。

「頭が痛い」「熱が出た」─。患者宅を訪問したときや電話で症状を訴えられたとき、あなたはどうしているだろうか?本連載では、そんなとき適切に患者情報を聴取して医師につなげられるよう、最少限の情報収集のポイントと医師への伝え方を解説する。


ポイント●熱の程度や出具合を確かめる

 「熱が出ている」と一口に言っても、ほんの数時間ほど前から高い熱が出ている場合と、半月前からずっと微熱が続いているのとでは、状況は大きく異なる。

 数時間前からであれば、この先の予測が難しいため、注意深く様子を見る必要がある。一方、熱が出始めて数週間がたっているとなると、緊急にアクションを起こす必要性はさほど高くないといえる。そこで、患者や家族が発熱を訴えたら、まず熱の出始めた時期を確認しよう。

 さらに、熱の程度を聞いてほしい。緊急性の有無を判断する1つの基準は38℃以上だ。38℃未満であれば大丈夫といい切れるものではないが、38℃以上の熱は緊急性が高いことが多い。特に、38℃以上の熱が3日以上続いている場合や、高齢者もしくは心肺に基礎疾患のある患者で38℃以上の熱がある場合には、注意が必要だ。

こう聞こう!
◯いつから、どのくらいの熱が出ていますか?
 午前中は何℃でしたか?午後は何℃でしたか?
◯38℃以上の熱が、毎日、出ていますか?

ポイント●「+α」と「ぐったり具合」を聞く

 発熱は、様々な疾患で起こり得るため、医師が判断する上では、発熱「+α」が重要な鍵を握る。「+α」を聞き出して医師に伝えてほしい。

表1 +αとして多い症状と疑われる主な疾患

 αが、咳や鼻、喉の症状であれば、ウイルス性上気道炎、いわゆるかぜであることが多い。咳の症状が特に強い場合には、気管支から肺の感染症であることが多い。特に気になるのは肺炎だ。喉の痛みが強いようであれば、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の可能性があるが、高齢者の場合は極めてまれだ。

 腎盂腎炎や前立腺炎など泌尿器系の細菌感染も少なくない。背中や腰の痛みがあれば、腎盂腎炎が疑われる。また頻尿や排尿時痛、残尿感などの有無を聞き、腎盂腎炎や前立腺炎の可能性も探ってほしい。

 気分不良、嘔気、筋肉痛、関節痛、軽い頭痛などは、高熱に伴って起こることがある。これらの症状がある場合には、それぞれの症状について程度を確認してほしい。いずれの症状も、それほど強くない場合は、熱に伴う症状だと考えられる。

 これらの症状に加えて、「ぐったり具合」が緊急度の判断材料になる。「ぐったり具合」は、熱に限ったことではなく、どんな場合にも重要な情報だ。まず、薬剤師が見てどのくらいぐったりしているかを観察する。さらに本人(家族)に「つらいですか?」「きついですか?」などと聞いて、医師に「熱はありますが、ぐったりした様子はないです」とか「ぐったりしていて、本人もつらいようです」といったように伝えてほしい。

こう聞こう!
◯熱以外に、咳や鼻水、喉の痛みなどの症状はありませんか?
◯トイレが近いとか、おしっこをしたときに痛みを感じることはありませんか?
◯熱以外の症状では、何が最もおつらいですか?
 (訴えがはっきりしない場合や複数ある場合は、どれが一番優位かを確認しよう)
◯体の状態はいかがですか? かなりきついですか?

ポイント●悪寒戦慄の有無を聞く

 もう1点、ぜひ確認してほしいのは「悪寒」の程度だ。発熱で問題となるのは細菌感染症で、特に緊急性が高いのは菌血症を来している場合だ。それは悪寒の程度によってある程度、判断ができる。悪寒は、「寒気」「悪寒」「悪寒戦慄」の3段階に分けて考えるとよい(図1)。特に悪寒戦慄がある場合は、何らかの細菌感染による菌血症を起こしているなど、緊急性が高いことが多い。

図1 悪寒の3段階

 「寒気や悪寒はありますか」と聞いても、患者はその違いが分からないことが多い。上着を羽織りたくなる程度、全身の震えが止まらないなど、具体的に確認したい。

こう聞こう!
◯お布団の中にいても、全身がガタガタ震えて、震えが止まらないような寒気はありませんか?

症状モニタリングのワンポイント・レッスン
患者が症状を訴えた際には、「それはおつらいですね」といった共感の一言を必ず添えるようにしたい。共感の姿勢は、医療者が問診を行う上で、重要な要素であることを忘れてはならない。

医師にこう伝えよう

薬剤師 「Aさんですが、昨晩8時ごろから急に38℃程度の悪寒戦慄を伴う熱が出ているそうです。咳や喉の痛みなどのかぜ症状はないようですが、右の腰の辺りが少し痛いと言っています。また、熱に伴う症状かと思いますが、体の節々が痛いとおっしゃっています。ちなみにインフルエンザの患者との接触はないようです。いかがしましょうか」

医師 「悪寒戦慄まであると大変だね。Aさんは、以前にも尿路感染症にかかっているから、それかもしれないな。早い方が良さそうだから、すぐに訪問してみるよ。ありがとう」

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