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特集:実践! プレアボイド
ケース 患者との会話編
日経DI2015年3月号

2015/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年3月号 No.209

 処方箋の受け付け時には、患者や家族などから服薬状況や残薬の有無などの情報を収集し、それに基づいて服薬指導を行わなければならない。薬剤服用歴管理指導料の算定要件として、「服薬中の体調変化」「併用薬(OTC薬や健康食品も含む)」「他科受診の有無」などが定められているが、実はこれらは、プレアボイドを行う上でも不可欠な情報だ。実例を見ていこう。

ここに注目!
副作用症状

 Case6は、患者が訴えた体調変化を糸口に、副作用の発見につながったもの(ファーマホールディンググループ[本社:札幌市中央区]による)。

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 このように、患者の話や経過から副作用が疑われた場合は、「こんな症状はありませんか」と具体的な自覚症状を挙げて尋ねるようにしたい。薬剤師が詳細な情報まで聞き取ることで、疑義照会の際、医師が処方変更や中止を検討するための判断材料も増える。

ファーマホールディンググループのサンメディック・ひろ薬局の小沢敦子氏は、「患者から得た情報を活用しようと意識すれば、自ずと薬歴の充実にもつながる」と話す。

 ただし、副作用症状を強調し過ぎると、服薬アドヒアランスの低下を招く恐れもある。聞き取りや説明を行った後は、疑問や不安な点がないかどうかをフォローする必要があるだろう。

 実際、みつばち薬局上賀茂店(京都市北区)主任の前田裕介氏は、副作用症状の聞き取りで肝を冷やしたこんな経験がある。

 スタチン系薬を服用中の患者に、「この薬を服用すると、筋肉痛が起きたり尿が赤くなったりすることがあります」と、口頭や薬剤情報提供文書などで繰り返し伝えていた。ある日、いつものように処方箋受け付け時に体調変化や服薬状況を確認していたところ、患者は、「この前、尿が赤くなったよ。でも薬のせいだから大丈夫だよね」と、何食わぬ顔で告白。前田氏は横紋筋融解症の初期症状であると考え、すぐに近くの診療所を受診するよう患者に伝えたため、大事には至らなかった。

 「副作用の初期症状を伝えるだけでは不十分で、症状が表れたときの対応まできちんと説明し理解してもらう必要があると痛感した」と前田氏は話す。

ネコ美 私、処方箋を受け取った時、「今日はどうされましたか」と聞くんですけれど、いつも患者さんにキョトンとされちゃうんです……。

ハット 「どうされましたか」という漠然とした質問では、患者さんは何を答えていいのか分からないよね。「薬を飲み始めて痛みの具合はいかがですか」「胃がむかむかすることはありませんか」など、患者さんから聞き出したい情報に狙いを定めて、具体的に質問するといいよ。

ここに注目!
日ごろの服用方法

 一方、患者からの聞き取りにおいて意外と見落としがちなのが、薬の飲み方、すなわち正しい用法・用量を守って服用しているかどうかという点だ。「薬剤師にとっては“常識”でも、患者さんにとってはそうではないことが多々ある」と前田氏は話す。

 Case7は、そんな前田氏が遭遇した“トンデモ用法”の例。気管支喘息に対し吸入ステロイドではなく吸入β刺激薬の方を頻用していたり、「痛み止め=頓服」と思い込んでいたりしたことが、患者の話から判明したケースだ。

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 一般に、速効性のある薬剤は過量服用を招きやすい。Case7に示した喘息に対する吸入ステロイドと吸入β刺激薬のように、用法や剤形は類似しているが、薬効や位置付けが異なる薬剤を併用することは少なくない。用法に関しても薬剤師の側から一方的に説明するだけでなく、それを患者が理解し、実践しているかどうかを定期的にチェックすることが欠かせない。

 前田氏はこのほかにも、アーガメイト20%ゼリー(ポリスチレンスルホン酸カルシウム)を服用中の患者が「専用フレーバーは要らない」と言うので理由を尋ねたところ、青汁のパウダーをかけて服用していたことが分かった、という事例も経験している。アーガメイトは腎不全に伴う高カリウム血症に用いられるが、青汁は通常、カリウムを多く含むため、腎不全には“ご法度”。「OTC薬や健康食品を摂取している患者は少なくない。医師に言いにくいことも気軽に話せるような雰囲気づくりを心掛けている」と前田氏は話す。

 一方、患者の生活全体を見る上では、薬や疾患だけでなく、家族構成やキーパーソンを念頭に置くことも重要。処方薬を家族間で使い回したり、家族の誤った考え方が服薬コンプライアンスに影響することがよくあるためだ。

 アイン薬局鹿浜店の四百刈氏は、人工透析中の患者が、家族の胃薬を自己判断で服用していたケースに遭遇した経験がある(Case8)。その胃薬には、透析患者には禁忌であるアルミニウム製剤が含まれていた。

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 「薬を取りに来局する人が、薬を管理しているキーパーソンであることが多い。服薬状況を確認する際は、薬をかんで服用する癖はないか、飲み込む力に問題はないかなども念頭に置いて聞き取りを行っている」と四百刈氏は話す。

ネコ美 ふむふむ、具体的に質問することが大事、と。

ハット こちらから話題を振ることで、「そういえば……」と患者さんに思い出してもらうきっかけにもなるしね。

ネコ美 色々なことが聞き出せそう!

ハット 注意してほしいのは、根掘り葉掘り聞いておきながら、「あ、そうですか」だけで終わってしまうこと。「その調子で服薬を続けてくださいね」とか、「飲み初めにそう感じる方は多いですが、次第に慣れてくるので様子を見てください」とか、患者さんが教えてくれた情報に応じて、何らかのレスポンスをすること。そうしないと、「興味本位で聞いているの?」なんて、不信感を抱かれかねないからね。

ここに注目!
薬の管理状況

 最近では、薬局の薬剤師が患者の自宅や高齢者施設を訪問し、薬剤管理指導を行う機会も増えている。薬剤師が患者や家族、介護者から話を聞くことはもちろん、患者宅に上がって、生活状況や薬の管理状態を直接見ることによっても、薬の重複投与や用法の誤りを発見し、プレアボイドにつながることがある。

 Case9は、たけの調剤薬局の後藤氏が患者宅で薬箱をチェックして、2種類の睡眠薬が投与されていたことに気付いたケース。「玄関に入った時に家の中が雑然としている印象を受けたため、薬の管理状況に不安を覚え、薬箱を見せてもらうようお願いした」と後藤氏は話す。

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 このような “観察力”を磨くためには、経験を積むことはもちろんだが、「他の薬剤師に相談し、意見を交わすことも欠かせない」(後藤氏)。家族関係や生活習慣などに関しては、薬剤師によって着眼点が異なるので、意見を交わすことで多面的に見る力が養われるというわけだ。

ここに注目!
患者の経済的負担

 これまで見てきたプレアボイドの事例で回避したのは、副作用や効果不十分など、薬の作用に起因するもの。だが、広い意味での“患者の不利益”は、これだけにとどまらない。

 例えばCase10は、緑内障治療用の配合点眼薬を、あえて2種類の後発品に分けることで、患者の経済的負担を減らすことができた例。後発品への変更で点眼回数は増えたものの、アドヒアランスは維持でき、良好な眼圧コントロールを得ることができた。「患者が納得しないまま高価な配合点眼薬を渡していたら、薬を節約するために点眼を1日おきに減らしたり、やめてしまっていたかもしれない」。このケースを経験した篠山調剤薬局(福岡県久留米市)取締役で管理薬剤師の福元哉史氏はそう振り返る。

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「薬剤師のアイデアによって、治療の質を維持しつつ、経済的負担を含む患者の不利益は軽減できる」と話す、篠山調剤薬局の福元哉史氏。

ネコ美 私たち薬剤師が知恵を絞ることで、患者さんの不利益を減らせる可能性は広がるんですね!

ハット その通り。

ネコ美 せっかくのプレアボイド事例、もっとたくさん集めて共有できたらいいのにな。

ブン吉 ただいま戻りましたぁ!

ハット グッドタイミング。ブン吉くん、早速だけど視察の結果を教えてくれるかな。

ブン吉 もちろんっス!

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