DI Onlineのロゴ画像

DIクイズ5(A)
DIクイズ5:(A)乳癌術後2年で経口薬が変更された理由
日経DI2015年3月号

2015/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年3月号 No.209

出題と解答 :東風平 秀博
(田辺薬局株式会社[東京都中央区])

A1

(タモキシフェン(商品名ノルバデックス他)を5年間継続するよりも、エキセメスタン(アロマシン)に切り替えた方が乳癌の再発を抑えられる可能性が高まるため。

A2

(3)破骨細胞の分化促進、(4)副甲状腺ホルモン分泌量の低下、(5)ビタミンD3産生量の低下

 ホルモン感受性の乳癌細胞は、女性ホルモンであるエストロゲンを取り込んで増殖する。そのため、乳癌術後の再発予防および進行を抑制する目的で、体内のエストロゲン量やその活性を低下させるためにホルモン療法が行われる。

 ホルモン療法では一般に、抗エストロゲン薬であるタモキシフェンクエン酸塩(商品名ノルバデックス他)などが閉経前後にかかわらず用いられるほか、閉経前は黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)アゴニスト製剤、閉経後はアロマターゼ阻害薬が使用される。

 Tさんにはタモキシフェンが2年間処方されていたが、今回からアロマターゼ阻害薬であるエキセメスタン(アロマシン)に変更されている。その最も大きな理由は、乳癌の再発予防効果をさらに高めることにある。

 初期の閉経後乳癌患者を対象に行われた大規模試験において、タモキシフェンを2~3年投与した後にアロマターゼ阻害薬であるエキセメスタンに切り替えて計5年間投与した患者と、タモキシフェンの投与を5年間続けた患者(従来の標準治療)の乳癌再発率を比較したところ、エキセメスタンに切り替えた群で乳癌再発率が19%低く、全要因による死亡率も14%低いことが示された。

 こうした結果などから、日本乳癌学会の『乳癌診療ガイドライン2013年版』では、「タモキシフェンを2~3年投与後に、アロマターゼ阻害薬に変更し、計5年投与することが強く勧められる(推奨グレードA)」とあり、「タモキシフェンを5年投与後に、アロマターゼ阻害薬に変更し、順次投与することが勧められる(グレードB)」よりも推奨グレードが高い。

 ただし、アロマターゼ阻害薬はエストロゲンの生成を阻害するため、骨塩量低下による骨粗鬆症が問題となる。エストロゲンが欠乏すると、インターロイキン(IL)などのサイトカインが増加して破骨細胞の分化が促進され骨吸収が進む。血中カルシウム濃度が高まると、ビタミンD3産生が低下しカルシウム吸収量が減少するとともに、副甲状腺ホルモン分泌も低下して骨芽細胞の機能が低下する。このような相乗効果で骨粗鬆症が進行すると考えられている。

 とはいえ、アロマターゼ阻害薬の投与はこれら副作用のリスクよりも、癌再発抑制作用によるベネフィットの方が大きいと考えられており、ビスホスホネート製剤を併用して骨折を予防するわけである。

 なお、ビスホスホネート製剤であるリセドロン酸ナトリウム(アクトネル、ベネット他)の17.5mg製剤は、1週間に1回投与の製剤である。服薬方法として、起床時に十分量(約180mL)の水とともに経口摂取し、服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食および他の薬剤の経口摂取も避けるよう、忘れずに伝えることが重要である。

こんな服薬指導を

イラスト:YAB

 手術後の経過が順調なようで何よりです。今回からノルバデックスからアロマシンというお薬に変わりました。ノルバデックスをずっと飲み続けるよりも、2~3年でアロマシンに変更した方が乳癌の再発予防効果がより高まるといわれており、先生は薬を変更されたのだと思います。アロマシンという薬は長期間服用していると骨がもろくなりやすいのですが、乳癌の再発を防ぐメリットの方が大きいといわれています。

 骨に対する副作用対策として骨を強くするお薬である、アクトネルというお薬が出されています。アクトネルはアロマシンと違って、週に1回飲むお薬なので、注意してください。飲み方は、朝起きてすぐにコップ一杯(約180mL)のお水で飲み、その後は少なくとも30分は横にならず、水以外の飲み物や食べ物、お薬などを口にするのは避けるようにしてくださいね。

参考文献
1)J Clin Oncol.2012;30:709-17.
2)日本産科婦人科学会雑誌 2006;58:27-31.

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ