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DIクイズ1(A)
DIクイズ1:(A)メルカゾールによる血糖低下
DIクイズ1(A)

2015/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年3月号 No.209

出題と解答:笠原 英城
(日本医科大学武蔵小杉病院薬剤部)

A1

(2)インスリン自己免疫症候群

A2

(1)αリポ酸

 チアマゾール(商品名メルカゾール)による低血糖発作は、インスリン自己免疫症候群が原因となって生じると考えられている。インスリン自己免疫症候群とは、インスリンに対する自己抗体が出現し、低血糖を来す疾患を指す。1970年に平田幸正氏らが世界に先駆けて発見したもので、自発性低血糖症の1つである1)

 この患者では、血中に大量のインスリンとインスリン自己抗体が存在し、かつ血中インスリンのほとんどが自己抗体と結合している。本来インスリンは、自己抗体ができると、抗体に捕まって作用しなくなる。その結果、血糖値は上昇するはずである。しかし、インスリンと自己抗体の結合は緩く、可逆的であることから、自己抗体と結合していたインスリンが何らかの要因によって、自己抗体から解離することで、血中のインスリンが急激に増え、低血糖が生じると考えられている。

 症状としては、軽症例では空腹感やだるさ、冷や汗、動悸など、低血糖の初期症状が発現する。重症例では、頭痛やめまい、吐き気が生じ、最もひどい場合には痙攣や意識障害を起こすことがある。

 原因としては、チアマゾールなど構造式中にSH基を有する薬剤の使用が指摘されている。チオプロニン(チオラ)、グルタチオン(タチオン他)、カプトプリル(カプトリル他)、ペニシラミン(メタルカプターゼ)などとの因果関係も報告されており、これらはいずれもSH基を含む。

 チアマゾールの添付文書には、「重大な副作用」の欄に、インスリン自己免疫症候群が記載されている。チアマゾールではSH基がインスリンA鎖分子中に埋もれた部分を表面化し、それをTリンパ球が認識することで、自己抗体が産生されると考えられている。

 また、SH基を有さないプロピルチオウラシル(チウラジール、プロパジール)でも、添付文書の「その他の注意」の項に、「インスリン自己免疫症候群が発症したとの報告がある」と記載されている。これは、1982年の添付文書改訂時に、1946年の自発報告を受けて書かれたもの。その後、インスリン自己免疫症候群が発症したという追加の報告はないが、古い記載が現在も残っているという。以上のことから、SH基を有さない薬剤では、SH基を有する薬剤に比べて、その発症リスクは極めて低いと考えられる。

 SH基を持つ物質は医薬品だけではなく食品やサプリメントの中にも存在する。中でもダイエットサプリメントとして有名なαリポ酸では、複数の患者発生が報告されている。厚生労働省は「α-リポ酸に関するQ&A」を作成し、αリポ酸によるインスリン自己免疫症候群への注意を喚起している。

 インスリン自己免疫症候群は、日本人における報告が欧米などに比べて圧倒的に多い。その理由として、日本人に比較的多いヒト白血球型抗原(HLA)の遺伝子型(HLA-DRB1*0406)が関連すると考えられている。αリポ酸を摂取してインスリン自己免疫症候群を生じた患者の多くが、この遺伝子型を有していることも確認されている。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 前回処方されたお薬で生じた冷や汗や空腹感は血糖値が急激に低下したことで生じたものと考えられます。今回、新たに処方された甲状腺のお薬では、そのような副作用は起こりにくいといわれていますので、ご安心ください。

 ただし、前回処方された甲状腺のお薬と同様に、血糖を急激に下げる副作用を持つ物質は食品の中にも含まれます。サプリメントとして大量に摂取した場合は、同様の副作用が生じる可能性があります。特に有名なのは、ダイエットサプリメントであるαリポ酸です。低血糖が複数報告されており、厚生労働省が注意を喚起しています。

 健康食品を使用する場合は、主治医の先生に相談してから利用するようにしてください。

参考文献
1)臨床看護2004;30:825-7.

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