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フェンスの要不要を論じる前に医薬分業への理解求める努力を
日経DI2015年3月号

2015/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年3月号 No.209

 昨年10月末、総務省は厚生労働省に対して、保険薬局と保険医療機関が「フェンスなどで仕切られている必要があるといった杓子定規な考え方をしないように」という趣旨のあっせんを行った。

 総務省のこの提案を最初に聞いた時、個人的には「おかしなことにならなければいいが」と感じた。近年の保険薬局の現状を見るに、ルールを緩めたらたがが外れたようになるのは明らかだ。一旦「フェンスがなくてもよい」となれば、坂道を転がり落ちるだけだろうと。

 その後、厚労省は、「単にフェンスなどの設置を提案するのではなく、不特定多数の者が自由に往来することが予定されている空間であるかどうかも含めて確認した上で、総合的に判断」するよう求める事務連絡を、各地方厚生局などに対して行った。実際の薬局開設に際してどのような運用がなされるのかは、今後の状況を見ないと何ともいえないところである。

 総務省からこうした話が出てきた背景には、医薬分業が「当たり前」になってきたことがあるといえよう。診察は医師、薬は薬局で薬剤師から受け取ることが、世間に広く受け入れられてきたからこそ、「何もフェンスで仕切る必要はあるまい」との提案が出てきたのだ。

 しかし、現在の医薬分業の中身に目を向けると、薬の交付場所が物理的に変わっただけで、本当の意味での分業、つまり、処方内容の監査や併用薬のチェック、残薬の確認などができているかは疑問だ。そして、薬局の怠慢というよりも、医師に嫌がられることを恐れて、疑義照会や処方提案を行えないでいる事例が少なからずある。

 そもそも、門前薬局というスタイルで、薬局が医療機関から経済的に独立することなど不可能だ。しかし日本の医薬分業は、当初からこの問題に目をつぶって進められてきた。歪みがあることは承知しながら、いずれは修正するつもりだった、過渡的な位置付けだったということかもしれないが、今や門前薬局は当たり前のように存在し、むしろ保険調剤を行う薬局の主流といっていいほどの存在感を示している。

 そんな経緯を知ってか知らずか、総務省からフェンス設置見直しの提案がなされたわけである。この提案は、薬局が真の意味で医療機関から独立するよう求める世間からのメッセージだとも受け取れる。

 ただし院外処方にするかどうかが医師の一存で決まってしまう現状(任意分業)の下では、川上の医療機関に水を分けてもらう以外に薬局が生きていく道はない。高いところにいる医師が川の流れをせき止めれば、つまり院内処方に戻せば、門前薬局の経営など簡単に干上がってしまうのだ。

 従って、薬局が真の意味で医療機関から独立するには、現状の任意分業を見直し、医療機関に院外処方を義務付ける強制分業への移行が検討されてしかるべきだ。国際的に見ればむしろそれがスタンダードなのである。

 もちろんそのような改革は容易ではない。実現のためには、国民に医薬分業の本当の意味を理解し、支持してもらうことが不可欠だ。ところが医薬分業に対する国民の意見を聞くとまず挙がるのは、「説明したり待たされるのが二度手間」といった声ばかりで、医薬分業の意味が理解されているとは言い難い。フェンスうんぬんの議論の前に、そもそも医薬分業の意味を正しく国民に理解してもらう努力が薬剤師には必要ではないだろうか。(十日十月)

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