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3分で伝える 重大な副作用
急性腎不全
日経DI2015年2月号

2015/02/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年21月号 No.208

執筆:秋山 和映(三愛記念病院薬局長)
監修:網岡克雄(金城学院大学薬学部医療薬学教授)、佐藤信範(千葉大学大学院薬学研究院臨床教育教授)

本連載は、厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル」を基に執筆したものです。頻度としてはまれなものの、生命に危険を及ぼしたり後遺障害を残すことがある「重大な副作用」について、患者にどう注意喚起を行えばよいかを解説します。


 急性腎不全では、急激な腎機能の低下が生じ、尿毒症、水分貯留、電解質異常などが引き起こされる。薬剤の副作用による急性腎不全の場合は、原因として疑われる薬剤を原則、中止する。また、重症な場合には血液透析の導入を検討する。

推定原因医薬品

 添付文書に副作用として急性腎不全が記載されている主な薬剤を表1に挙げる。急性腎不全は様々な薬剤で引き起こされるが、比較的リスクが高いのは、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、アミノグリコシド系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌薬、ヨード造影剤、シスプラチンなどの白金製剤である。

表1 添付文書の「重大な副作用」の項に「急性腎不全」が記載されている主な医薬品
(作成:千葉大学薬学部臨床教育研究室 中村昇平氏、監修:同大学院薬学研究院臨床教育助教 櫻田大也氏。編集部で一部改変)

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表1は一部を抜粋して掲載しています。表全体はDI Online(http://di.nikkeibp.co.jp)からダウンロードできます。

【初期症状】
◯尿量の低下(乏尿、無尿)
◯一時的な尿量の増加
◯むくみ
◯食欲不振、倦怠感

 原因となる薬剤の種類によって初期症状は多少異なる。NSAIDs、ACE阻害薬、ARBのような腎血流量を低下させて急性腎不全を生じ得る薬剤では、尿量が減少し、むくみや尿毒症の症状が生じる。

 アミノグリコシド系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌薬、ヨード造影剤、白金製剤のような尿細管上皮細胞を障害し得る薬剤では、初期には尿量の減少はほとんど見られず、まれに水分の再吸収能が低下して尿量が一時的に増えることもある。その後、障害の程度が著しくなると尿量が減少し、むくみや尿毒症の症状を呈する。

好発時期・好発患者

 患者側の主な危険因子としては、脱水・多量の出血などの循環血液量の低下、慢性腎不全、高齢が挙げられる。循環血液量の低下は、腎血流量の低下を引き起こし、また、薬剤血中濃度を上昇させる。その結果、尿細管上皮細胞が障害され、急性腎不全を発症する。

 副作用を生じずに服用していても、危険因子が加わることで急性腎不全が引き起こされることがあるため、発症時期は様々である。服用開始から数日以内に発症することもあれば、数年後に発症することもある。

対応方法

 様々な薬剤が原因になり得るので、原則として全ての服用薬を中止し、速やかに医療機関を受診させる。受診時には服用薬の種類や服用開始時期などが分かるお薬手帳を持参させる。

 急性腎不全では腎機能が回復する可能性がある。治療では、原因医薬品を中止し、循環血液量が低下していれば輸液や輸血を行う。次に、腎不全から回復するまでの期間に、水分、塩分、カリウム、窒素代謝物が体内に蓄積することを防ぐ目的で食事管理(塩分、カリウム、蛋白質の制限)を行う。

 食事の管理だけでは対応できない場合には、利尿薬やカリウム吸着剤などによる薬物療法が実施される。食事管理と薬物療法を行っても、高カリウム血症や尿毒症などが改善しない患者に対しては、血液透析が実施されることがある。

◆薬剤師へのアドバイス◆

 薬剤性急性腎不全の危険因子のうち、慢性腎不全、高齢などは改善できないが、脱水は患者側、または医療機関でコントロール可能な因子である。急性腎不全を生じやすい薬剤を服用中の患者には、脱水を起こさぬよう指導または提案することで、薬剤性急性腎不全の予防が可能となる。

 急性腎不全では、通常、尿量が減少するが、尿細管上皮細胞が障害された場合には、初期に尿量の減少はほとんど見られず、自覚症状も乏しい。自覚症状が生じた際には腎機能低下が著しく進行していることがある。急性腎不全を生じるリスクのある薬剤を服用中の患者には、早期発見のために定期的な血液検査などを提案したい。

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