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Report
花粉症治療薬アップデート2015
日経DI2015年2月号

2015/02/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年2月号 No.208

シダトレンについて聞かれたら

 今季の花粉症治療では、舌下免疫療法が大きな話題だ。2014年10月に発売されたシダトレンスギ花粉舌下液(標準化スギ花粉エキス)は、テレビや新聞で報道され患者の関心が高い。

 舌下免疫療法に詳しい、ゆたクリニック(津市)院長の湯田厚司氏は、「シダトレンに興味を持つ患者は、テレビや新聞などで断片的な知識を得ていることが多く、誤解も多い。適切な情報を伝える必要がある」と話す。

 今シーズンはシダトレンの導入を見送った医療機関が多く、処方する医師はまだ少ないようだが、質問を受けたり処方箋を応需した場合に備え、適切な対応ができるようにしておきたい。

「チェックシート」で服薬指導

 シダトレンの処方医は講習受講や登録が必要であるため、処方箋を応需した時にはまず、調剤する前に処方医が「受講修了医師」であることを確認したり、初回に交付される「患者携帯カード」を確認する必要がある。

 次に、服薬指導はメーカーが各薬局に配布する「服薬チェックシート」を活用しながら行う。チェックシートの記載内容は表1の通り。中でも重要なのが、服用前後約2時間は激しい運動をしないこと。「シダトレンではないが、過去に免疫療法中に運動誘発性喘息が出たとの報告がある」と湯田氏は注意を促す。

表1 シダトレン服薬指導時の確認事項

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 シダトレンは、治療開始から最初の1週間は薬剤の濃度が薄い青いボトル、次の1週間は濃い白いボトル、それ以降は1回ごとに使い切る白いチューブのパッケージを用いる。ボトルにスプレーを取り付け、規定の回数を舌下に噴霧する(写真1)。噴霧回数は1週間目(青いボトル)も2週間目(白いボトル)も、1日目から7日目まで漸増していく。それ以降はチューブを用いて一定量を服用する。

写真1 シダトレンの服薬方法

患者がボトルにスプレーを取り付け、舌下に噴霧して用いる。薬剤は要冷蔵。

 なお、服用の管理を手助けしてくれるスマートフォン用アプリ「SLITサポート(スギ花粉症)」や同名のウェブサイトが鳥居薬品から提供されているので、活用を勧めるといいだろう。

3年以上の治療が効果的

 シダトレンに興味があり、話だけでも聞いておきたいという患者も現段階では多いはず。そこで、患者からよく質問される内容を湯田氏にまとめてもらった(別掲記事)。長年、舌下免疫療法に取り組んできた経験や海外での試験データを基にした、添付文書に記載されていない情報が盛り込まれている。

 特に、長期間の治療が必要なことを知らない患者が多いという。湯田氏は「最低2シーズンの結果を見ないと、効果の判定ができない。また、効果が見られれれば3~5年治療を継続した方がよく、そうすることで7~8年間は効果が持続する。いずれにしても、治療はある程度、長期間継続する必要がある」と解説する。

 なお、シダトレンの錠剤が第2/3相の臨床試験中で、これが発売されれば、さらに服薬が容易になり、普及が進むとみられている。

添付文書では分からない! シダトレンQ&A(湯田氏による)

Q.どれくらいの人に効くの?

A.全体の80~90%程度。だいたいの目安として、「治癒した」が20~30%、「以前よりかなり楽になり、服用する薬が激減した」が30%以上、「以前より楽になった」が20~30%。

Q.効果があるかどうかは事前に分かる?

A.事前に効果を予測する方法は今のところない。効果予測のマーカーとなり得る分子の探索研究が行われている。

Q.既存の薬と比べて効果はどうなの?

A.薬物療法と免疫療法を比較した結果、治療効果は免疫療法が薬物療法に比べて有意に高かったというデータがある。また、薬物療法で不十分な患者に免疫療法を追加した場合にも、症状の改善や薬物使用量の減少などの面で有意な効果が認められている。

Q.治療を受けられる時期はいつ?

A.添付文書では、花粉が飛散していない時期とされているが、実務的にはスギ花粉とヒノキ花粉の飛散が終了して1カ月後(東京ではおよそ6月)以降の開始なら、体内の免疫が落ち着いているので安全。また、花粉飛散開始日から3カ月以上前(同じくおよそ11月)までに始めることが、効果や安全性の面で好ましい。

Q.どれくらいの期間、治療が必要なの?

A.花粉飛散時期を2シーズン過ごせる期間(最短でおよそ1年3カ月)実施し、効果を判定する。効果が認められた場合は3シーズン以上(可能なら4~5シーズン)の治療継続が望ましい。効果は2シーズン目、3シーズン目と、シーズンを重ねるごとに高くなる傾向が認められている。

Q.免疫療法の効果はどれだけ続く?

A.3~5年の舌下免疫療法を行った場合は、長期(7~8年)にわたって効果が持続するとのデータが海外で出ている。また複数論文のメタ解析では、治療終了後5年間は効果が維持されると報告されている。なお、効果が減弱した際は改めて1~2シーズン舌下免疫療法を行うことで効果が元に戻ることが多い。

Q.強い副作用が出るのでは?

A.軽いアレルギー反応(口の中が痒くなる、腫れるなど)が生じることがあるものの、アナフィラキシーと呼ばれる強いアレルギー反応(皮膚症状、呼吸器症状など)やショックが起きることはまれと考えられる。2009年に世界アレルギー機構が発表した声明では、「舌下免疫療法を受けた3984人中、重い有害事象は14件報告されているが、喘息様症状が7件、消化器症状が3件などであり、致死的あるいはアナフィラキシーとして報告された事象はなかった」と記されている。

Q.もっと使いやすい剤形はないの?

A.シダトレンの錠剤が第2/3相の臨床試験中で、近い将来、使用可能になると期待される。

Q.子どもには使えないの?

A.シダトレン舌下液の適応は12歳以上となっているが、今後、小児も免疫療法が適応になると期待される(編集部注:舌下錠の臨床試験は5歳以上の適応を念頭とした計画)。

Q.治療の値段は幾らになる?

A.医療機関と薬局での支払い額の合計は、3割負担で計算すると1カ月当たり3000~4000円ほど。

花粉症の薬物治療について聞かれたら

 抗ヒスタミン薬を中心に、服薬指導の参考になる情報をまとめた。

処方頻度トップはアレグラ

 抗ヒスタミン薬は眠気の副作用が少ない第2世代のものが主に使われる。その処方頻度が高い順に並べたのが表2。日経メディカル Onlineの医師会員2651人を対象とした調査の結果だ。

表2 抗ヒスタミン薬の処方ランキング

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 トップはフェキソフェナジン塩酸塩(商品名アレグラ他)で、34.8%の医師が挙げた。以下、レボセチリジン塩酸塩(ザイザル)、エピナスチン塩酸塩(アレジオン他)と続いた。アレグラを選んだ医師の意見は、「眠気が少ない」とする内容が圧倒的に多かった。なおアレグラは1日2回服用が必要だが、「血中濃度の維持に有用」「自己調節しやすい」などの意見もあり、必ずしも否定的なものばかりではなかった。

眠気の度合いは?

 抗ヒスタミン薬それぞれの特徴を患者に聞かれた場合、比較的説明しやすいのが眠気の度合いだろう。

 図1は、東北大学大学院医学系研究科・機能薬理学分野教授の谷内一彦氏らがまとめた、抗ヒスタミン薬による脳内ヒスタミン1(H1)受容体の占拠率を調べたデータだ。占拠率が低いほど眠気が起きにくいとされる。谷内氏は最近、ザイザルの数値も報告し、主要な第2世代抗ヒスタミン薬のデータが出そろった。服薬指導や処方解析の参考になりそうだ。

図1 抗ヒスタミン薬の脳内ヒスタミン1受容体占拠率

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「2週間前から服用」は不要

 花粉症に備えて、花粉飛散の2週間前から抗ヒスタミン薬の服用を─。花粉症治療ではこんなアドバイスがよく行われるが、日本医科大学多摩永山病院(東京都多摩市)耳鼻咽喉科部長の後藤穣氏は、「最近の研究で、抗ヒスタミン薬を早期に服用しておいても、花粉飛散時に服用するのと差がないことが明らかになってきた」と話す。

 そのデータの1つに、図2の臨床試験結果がある。これはザイザルを7日間事前服用した場合の効果を調べたもので、花粉曝露後にザイザルを服用した群と比べて症状に統計上有意差がなかった。他にベポタスチンベシル酸塩(タリオン)や、ロイコトリエン受容体拮抗薬などで同様の結果が出ているという。

図2 レボセチリジンによる初期療法の効果

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 こうした結果を受け、『鼻アレルギー診療ガイドライン2013年版』(ライフ・サイエンス)では、抗ヒスタミン薬とロイコトリエン受容体拮抗薬について、「花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点で内服開始」と記載されている。患者には「症状が出てから飲んでも遅くない」とアドバイスすればいい。

小児に使える薬は増加

 今年1月に、アレグラの新剤形としてドライシロップ製剤が発売され、小児に使用できる抗ヒスタミン薬のラインアップがさらに充実した。表3は、小児に使用できる薬剤と、その剤形を湯田氏がまとめたもの。数年前に比べると大幅に選択肢が増え、患者の年齢や症状に応じた選択が可能になっている。

表3 小児に適応がある主な花粉症治療薬(湯田氏による)

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妊婦から相談を受けたら?

 花粉症治療薬の添付文書には、妊婦への投与に関して、ほぼ一律に「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」としか書かれていない。そこでよく参考にされるのは、虎の門病院(東京都港区)薬剤部が中心となってまとめた『実践 妊娠と薬 第2版』(じほう、2010)の記載や、オーストラリア医薬品評価委員会がまとめた分類などだ(表4)。これらは一定の基準で各薬剤の安全性を評価しており、参考になる。

表4 主な花粉症治療薬と妊婦へのリスク

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 また、厚生労働省事業「妊娠と薬情報センター」で妊婦からの服薬相談に対応している、国立成育医療研究センター薬剤部の八鍬奈穂氏は、「抗ヒスタミン薬に関しては、当センターではクラリチン、ジルテックを提案することが多い」と話す。世界的に使用実績が多くデータの蓄積があり、患者の理解を得やすいのが理由で、他の抗ヒスタミン薬に問題があるわけではないという。

 花粉症用の点鼻薬・点眼薬については「どの薬も血中へ移行する量がわずかなので、影響は考えにくいと患者に説明している」(八鍬氏)という。

花粉症のOTC薬、どう選ぶ?

 薬局では、患者からOTC薬の相談を受けることも多い。薬局で取り扱っているOTC薬だけでなく、花粉症にはどのような製品があるか、患者の要望に沿ってどのOTC薬を薦めるべきか、ある程度把握しておきたい。

 OTC薬の販売に力を入れているヤマザワ薬品(山形市)調剤部部長の上畑日登美氏は、「薬剤師は調剤でなじみのある要指導・第1類医薬品を薦めがちだが、患者の要望にきめ細かく対応するには、それ以外も選択肢として考えられるようにしておく方がいい」と話す。

 OTC薬を適切に選択するには、フローチャートがあれば便利だ。その例として、編集部で作成したのが図3。患者の大まかな要望に沿う形で主な内服薬と点鼻薬を挙げた。

図3 花粉症患者に薦めるOTC薬(内服または点鼻)の選択フローチャート(取材を基に編集部で作成)

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 上畑氏は「患者は多くの場合、すぐ効くものがいい、あるいは眠くならないものがいいと訴える」と話す。このため、「すぐ効くか」「眠くなると困るか」という2つの質問を上位に位置付けている。

内服薬は単剤・合剤いずれか

 花粉症向けのOTC薬に含まれる成分には、抗ヒスタミン薬(第1世代、第2世代)、メディエーター遊離抑制薬(クロモグリク酸ナトリウムなど)、副交感神経遮断成分(ベラドンナ総アルカロイドなど)、ステロイド、交感神経刺激薬(ナファゾリン塩酸塩、プソイドエフェドリン塩酸塩など)がある。作用については、交感神経刺激薬は鼻閉に効き、それ以外はくしゃみや鼻汁の症状に効くと考えればいい。

 内服のOTC薬は、第2世代抗ヒスタミン薬の単剤か、第1世代抗ヒスタミン薬・副交感神経遮断成分・交感神経刺激薬の合剤の大きく2種類に分けられに分類される。後者は第1世代抗ヒスタミン薬の影響で眠気の副作用が生じやすいとされるため、眠気の出にくさを重視する患者には前者を薦めるのが一般的だ。

 また、即効性を求める患者には、副交感神経遮断成分や交感神経刺激薬が含まれる後者の方が薦めやすい。ただし、抗コリン作用を持つ成分を含むため、排尿困難や緑内障などの既往への注意を要する。

点鼻薬は症状別の対応を

 点鼻薬は、ステロイドを含むものか、抗ヒスタミン薬の単剤、または第1世代抗ヒスタミン薬・交感神経刺激薬の合剤に大別される。

 点鼻薬は基本的に内服薬に比べて眠気を起こしにくいが、添付文書に眠気に関する注意が書かれているものもあるため、フローチャートでは点鼻薬を添付文書における眠気の記載の有無に分けている。

 点鼻薬の選択には、症状が鼻閉ならテトラヒドロゾリンなどの交感神経刺激薬を配合したもの、鼻水やくしゃみならそれ以外のもの、という使い分けが考えられるので、そういった要素も加味して判断するといいだろう。

点眼薬は何を選ぶか

 鼻炎症状以外に、眼症状を訴える場合はどうするか。薬樹(神奈川県大和市)営業企画グループ商品チーム・チームリーダーの町田裕里恵氏は、「基本的に4種類の商品を中心にそろえておけば対処できると考えている」と話す。その4種類を示したのが表5。効き目を重視する人、予防に用いたい人、緑内障がある人、コンタクトレンズ使用者それぞれに対応するラインアップとなっているので、参考になりそうだ。

表5 患者タイプに応じた花粉症用点眼薬の選択例(町田氏による)

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治らない鼻閉は血管収縮薬入り点鼻薬の連用を疑う

 OTC薬を販売する上で特に注意しておきたいのが、テトラヒドロゾリンやナファゾリンなどの交感神経刺激薬(血管収縮薬)を含んだ点鼻薬だ。

 「鼻閉を訴えて来院する患者のうち、血管収縮薬入りの点鼻薬の連用が原因のケースがよくある」と語るのは、ゆたクリニックの湯田氏。血管収縮薬は連用するうちに効き目が弱くなるほか、使用後の反動で血管が拡張して鼻閉が増悪すること(薬剤性鼻閉)が知られている。そのため、こうした点鼻薬の添付文書には長期に連用しないよう記載されているが、守らない患者も多く、薬局でも十分に注意されていないことが考えられる。

 点鼻薬による薬剤性鼻閉は、その使用を中止すれば収まる。湯田氏がここ数年で経験した50人の薬剤性鼻閉の患者のうち、点鼻薬の中止でほぼ9割が1週間以内に改善したという。

 「鼻閉が治らないという相談を薬局で受けたら、血管収縮薬を含有する点鼻薬を常用していないか確認するのが大切。薬剤性鼻閉の場合は使用中止が唯一の治療法なので、きちんとした服薬指導をしてほしい」と、湯田氏は話している。

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