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薬局なんでも相談室1
相談室1:暴力を振るう患者にどこまで対応すべきか
日経DI2015年2月号

2015/02/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年2月号 No.208

 服薬指導中に患者から暴力を受けたという相談は少なくありません。患者からの暴言・暴力は、薬局だけでなく医療機関全般にとって大きな問題になっています。

 さて薬剤師法上、薬剤師は医師の処方箋に従い調剤を行うことになっています(薬剤師法第23条第1項)。そして調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあった場合には、正当な理由がなければ、これを拒むことはできません(薬剤師法第21条)。これが薬剤師の応需義務と呼ばれるものです。

 とはいえ、薬局の現場では現実として調剤が困難な場合があります。そこで厚生省(当時)の「薬局業務運営ガイドライン」(1993年)は、薬剤師法第21条の正当理由として例外的に調剤拒否できる場合として(1)疑義照会ができない場合、(2)冠婚葬祭、急病等で薬剤師が不在の場合、(3)患者の症状等から早急に調剤薬を交付する必要があるが医薬品の調達に時間を要する場合、(4)災害、事故等により、物理的に調剤が不可能な場合─を挙げています。しかし、実際には調剤拒否が可能なケースはこの4つに限らないと考えます。

 それは、薬剤師のもう一つの重要な義務に、患者への情報提供と指導があるためです。薬剤師法第25条の2は、薬剤師の義務として「薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない」と求めています。同様の規定は、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(療担規則)第8条にも定められています。

 また、医薬品医療機器等法(旧薬事法)の第9条の3第3項は「情報の提供又は指導ができないとき、その他同項に規定する薬剤の適正な使用を確保することができないと認められるときは、当該薬剤を販売し、又は授与してはならない」としています。つまり薬剤師は、薬についての情報提供と薬学的知見に基づく指導が客観的に見て困難な場合、調剤拒否ができると考えられます。

 今回のご相談のように直接的な暴力があったり、患者が暴言を繰り返して薬剤師の説明を全く聞いていない場合、薬剤師法が定めた服薬指導や、薬学的知見による指導を行うことは難しいと客観的に判断できます。このように、薬剤師が客観的な原因により法律上の義務を果たすことができない場合は、調剤拒否もやむを得ないでしょう。

 ただし、例えば顔が怖い、服装が常識を逸しているなど、患者の外見のみから調剤拒否をすることはできません。薬剤師に対する危険が実体化していないためです。

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