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DIクイズ2(A)
DIクイズ2:(A)間欠性跛行で抗血小板薬を変えた理由
日経DI2015年2月号

2015/02/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年2月号 No.208

出題と解答:山本 雄一郎
(アップル薬局[熊本市中央区])

A1

血管平滑筋においてホスホジエステラーゼIII(PDEIII)を阻害し、血管拡張作用を有するため。

A2

徐々に体を薬剤に慣らすことで、血管拡張作用に伴う頭痛や動悸などの副作用を軽減するため。

 Uさんは数年前に初期の末梢動脈疾患(PAD)と診断され、クロピドグレル硫酸塩(商品名プラビックス)による抗血小板療法と、ロスバスタチンカルシウム(クレストール)による脂質異常症の治療を行っていたが、間欠性跛行の症状が出始めている。間欠性跛行は、歩行中に下肢の痙攣や疼痛などを示す可逆的な筋虚血で、しばらく休むと症状は改善するが、歩行を再開すると症状が再び表れる。長時間の歩行が困難になるため、患者のQOLは著しく低下する。

 そこで今回、クロピドグレルに代わってUさんに処方されたのが、ホスホジエステラーゼIII阻害薬(PDEIII)のシロスタゾール(プレタール他)である。

 2007年に発表されたPADの国際ガイドラインであるTASCII(trans-atlantic inter-society consensus II)には、間欠性跛行症状に対する薬物療法として、次のような記載がある。「シロスタゾールは、3~6カ月投与により、トレッドミル歩行能と患者の生活の質(QOL)双方の改善がみられたというエビデンスから、跛行症状改善のための第一選択薬物療法とすべきである[グレードA]」。また、中程度以上の症状を示す安定期の間欠性跛行患者を対象にしたプラセボ対照ランダム化二重盲検試験8試験に対するメタアナリシス(患者総数2702人)によると、12~24週の治療期間において、シロスタゾールはプラセボと比較して最大歩行距離を改善させている1)

 抗血小板薬にはシロスタゾールをはじめ、クロピドグレルなどのチエノピリジン系薬やアスピリンなどもある。では、なぜシロスタゾールは間欠性跛行に対して処方されたのだろうか。実はシロスタゾールは、血小板に対してだけでなく、血管に対する作用を持っている。

 血小板の凝集メカニズムの一つに、血小板内のカルシウムイオン濃度の上昇と、それに伴うセロトニンなどの様々なシグナル伝達物質の放出から始まる経路がある。シロスタゾールは血小板のPDEIIIを阻害し、細胞内のcAMP濃度を上昇させることで、血小板の凝集を抑制する。

 一方で、シロスタゾールの作用するPDEIIIの分布を見ると、血小板の他、血管平滑筋にも存在している。シロスタゾールが血管平滑筋でPDEIIIを阻害すると、血管内皮細胞内のcAMPが上昇し、細胞内のカルシウムイオン濃度は低下、血管平滑筋が弛緩する。これが血管拡張につながり、下肢の血流が改善して、歩行時の痛みが軽減すると考えられる。

 またPDEIIIの分布は、シロスタゾールの副作用の理解にもつながる。主作用の抗血小板作用は出血リスクに、心筋でのPDEIII阻害は心拍数の増加と動悸などに、また血管平滑筋での血管拡張作用は頭痛や顔のほてりなどにつながる。添付文書によると、シロスタゾールはうっ血性心不全の患者には禁忌であり、投与前に狭心症の症状がないか問診を注意深く行うよう警告がなされている。

 頭痛や動悸といったシロスタゾールの副作用は忍容性を低下させる一因であり、服用初期に生じやすいという特徴がある。これを回避する方法として、Uさんへの処方のような用量漸増レジメンがある2)。これは、徐々に体をシロスタゾールに慣らしていくことで、上記のような患者のQOLを悪化させる副作用が出現しにくくなる効果を狙ったものと思われる。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 今回処方されたプレタールは、プラビックスと同様に血液をサラサラにするお薬ですが、それだけでなく、血管を広げる働きも併せ持っており、Uさんのような症状に効くことが確認されています。

 ただ、人によっては、飲み始めに頭が痛くなったり、胸がドキドキすることがあります。そこで、体を慣らすために、最初の4日間は少ない量、50mg錠の1日2回服用から始めていただきます。それでも頭痛や動悸が気になるようであれば、薬剤師か医師に伝えてください。

参考文献
1)Am J Cardiol.2002;90:1314-9.
2)Intern Med.2011;50:1559-63.

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