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活発化する薬局のM&A 「患者の利益」への配慮を怠るな
日経DI2015年2月号

2015/02/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年2月号 No.208

 薬局経営者が集まると、必ず話題に上るのがM&A(企業の合併と買収)のことだ。業界に詳しいあるコンサルタントによると、「薬局のM&Aは活発化しており、今が業界再編のピーク」なのだそうだ。

 なぜ今、薬局M&Aが活発化しているかというと、薬局を手放そうという経営者が増えているからに他ならない。

 その理由としてまず挙げられるのは、経済的な事情だ。医薬分業率は70%に近づき、薬局業界は成長期から成熟期へ移行したといわれる。しかも調剤報酬の引き下げ、薬価差縮小、消費増税と、今後、経営は厳しさを増すばかり。「将来、経営がさらに困難になるなら、売れるうちに売っておこう」と考える経営者がいても不思議ではない。

 このタイプのM&Aは経営判断に基づくものであり、日本が資本主義国家である以上、異を唱えるつもりはない。ただし、結果として株式市場で資金調達できる上場企業が店舗数を増やし、そこで得た利益を配当という形で株主に還元していくわけで、調剤報酬の財源が、税金が投入された医療費であることを考えると少し違和感を覚える。

 もう一つは、人的理由。薬学教育6年制への移行以来、現場では慢性的な薬剤師不足が続いている。加えて2013年度の薬剤師国家試験の合格率低迷もあり、中堅・中小では、薬剤師を確保できないため、不本意ながら薬局を手放すケースも出てきている。

 3つめの理由は、後継者の不在だ。平成の初めにかけての医薬分業初期に開局した薬剤師オーナーは、現在、60代後半から70代に差し掛かり、世代交代の時期を迎えている。だが、少子化や職業選択の多様化などにより、子どもによる薬局継承・相続が不可能なケースは増えていると思われる。

 このように、概ね3つの理由からM&Aが活発化しているわけだが、実際に譲渡に応じる場合は、「患者の利益」に配慮すべきだ。経済的な事情で第三者に譲渡する場合、自分だけでなく、患者や地域住民にメリットがあるかどうかも考えて判断してもらいたい。

 特に三番目に挙げた後継者不在の場合などは、他社のM&Aに応じるだけでなく、現在勤務している薬剤師に譲渡することも検討すべきだろう。子どもへの継承はできなくても、技術や知識、倫理観などを受け継いだ“弟子”が引き継ぐなら、継続性のあるサービスの提供という観点からも望ましい。そのためには、経営感覚を有する弟子の育成も、薬局経営者に求められる。

 一方、M&Aが活発化する中では、その薬局に勤務する“雇われ薬剤師”にも考えてもらいたいことがある。やはり、患者の利益への配慮だ。

 M&Aで経営者が代わった結果、大半の薬剤師が辞めてしまうといった話を時折耳にする。もちろん、新しい経営者の方針に付いていけないとか、勤務条件や処遇を納得できないなどの事情はあるかもしれないが、患者から見れば同じ「薬局」であるはずなのに、気心の知れた薬剤師がいなくなって戸惑うことにもなりかねない。

 翻って言えば、薬剤師と患者との信頼関係がしっかりと築けていれば、経営者が代わろうが、薬局の名称やマークが変わろうが何ら問題はない。薬剤師が「かかりつけ薬剤師」になることを意識して日ごろの業務を行っていれば、M&Aなど自分にも患者にも大きな影響はないのである。薬剤師にはそんな気概を持って、このM&Aの波を乗り越えてもらいたいものだ。 (一顧万両)

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