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CaseStudy
ひまわり調剤薬局大槻店 (福島県郡山市)
日経DI2015年1月号

2015/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年1月号 No.207

 感染性胃腸炎の流行シーズンを目前に控えた14年11月。アポロメディカルホールディングスのひまわり調剤薬局(福島県郡山市)の管理薬局長を務める熊谷拓朗氏らは、隣接する精神科診療所のすがのクリニックと共同で、模擬嘔吐物を用いた嘔吐物処理訓練を実施した。

 感染性胃腸炎の患者が、待合室で嘔吐してしまうケースは十分想定される。感染源となり得る嘔吐物は安全な方法で処理しなければならないが、目の前で嘔吐されると慌ててしまいがちだ。そこで、熊谷氏らはマニュアルを作成するとともに、嘔吐物処理訓練を13年秋に開始。今回で3回目の訓練となる。

適切な防護処置が必須

 嘔吐物処理に用いる器具(写真1)は、実際の現場で使いやすい品物を選んでいる。処理担当スタッフを感染から守るための使い捨ての手袋、マスク、簡易エプロンは多めに用意しておく。簡易エプロンは、高齢者の食事の介護などで使用されているものを流用している。

写真1 嘔吐物処理のために用いる器具

 熊谷氏らがまとめた嘔吐物処理マニュアルは、アポロメディカルホールディングスの感染防止マニュアルに、製薬企業の情報やインターネットで調べた内容を加えて整理したものだ。

 嘔吐物の処理は、2つの段階からなる。処理の準備と、清掃作業だ。「患者が嘔吐するのを見て驚いてしまい、適切な防護処置もせずに片付けようとすると、かえって感染の危険が増す」と熊谷氏は話す。

 訓練を始める前に、マニュアルに沿って、各人の役割分担を決めておく。今回は6、7人を1チームとして3チームを作り、チーム単位で訓練を実施した。各チームはメンバーを(1)室内にいる他の患者を安全な場所に誘導し、嘔吐者を介抱する係、(2)消毒液を調製し、嘔吐物を処理する係、(3)水を準備し、嘔吐物を処理する係─に分けた。なお、実際に嘔吐物を処理する場合は、1チームが2~3人でも対応できるという。

 冬場の感染性胃腸炎は、原因の多くがノロウイルスやロタウイルスとみられる。これらのウイルスはアルコールに対する抵抗性が高いため、嘔吐物が付着した床の消毒には次亜塩素酸を含む漂白剤や消毒液の原液を希釈して用いる必要がある。具体的には、1000ppm(0.1%)を超える濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製する。

 「嘔吐者が出てからメスシリンダーなどで計量するのは時間がかかる。あらかじめ必要な量を計算しておき、使い捨てのコップに目盛を書いた簡易計量カップを作っておくと、処理にかかる時間を短縮できる」と熊谷氏は言う。なお、この日の訓練で用いた塩素系漂白剤の「花王キッチンハイター」について、製造元の花王は100mLの原液を2Lの水で希釈すると、1000ppmを超える濃度になるとしている。

 訓練に使う「模擬嘔吐物」は、大さじ山盛り2杯分の片栗粉に少量の食紅と水を加え、200mL程度のお湯で伸ばしたもの。患者役がコップから模擬嘔吐物をこぼすところから、訓練は始まる(詳細な手順は以下準備編、清掃編を参照)。

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体で覚える手順とコツ

 訓練から学べるノウハウは多い。例えば、嘔吐物の拭き取りに使用する新聞紙の量だ。多くの場合には朝刊1部ほどで足りるが、多めに用意しておいた方が安心できる。手袋をはめる時も、2重にしておくと、拭き取りの途中で嘔吐物まみれになった場合に1枚外して捨てられるので安心だ。簡易エプロンは前に垂れて邪魔になる場合は、背中側をテープで留めればよい。また、嘔吐物を広げないために、外側から内側に集めるように拭き取ることが必要だが【上写真8】、実際に作業すると思ったように拭き取れないことも分かる。そのほか、消毒液や水を床に散布し、ペーパータオルで拭き取ったら靴の裏も拭く【手順(13)(16)】といった細かい作業も、一度体感しておけば忘れにくい。

 訓練は、今回で3回目ということもあり、どのチームも20分ほどで全作業を終了した。ちなみに、実際の嘔吐発生時には消毒液を拭き取った後、無人にして換気しつつ20分ほど放置するが、この時間は訓練には含まれていない。

 それでも、「前回の訓練の際は、マニュアルを開きながら作業したので、1時間掛かるチームもあった」(熊谷氏)という。実際に体を動かして行う訓練は、手順を覚えるのにも有効なようだ。

 「前回の訓練後、待合でてんかん発作を起こした患者がいた。その際、下痢状の糞便の処理に、処理訓練の経験が役立った」と熊谷氏は話す。同社の他店舗にも、同様の訓練の実施を提案中とのことだ。(増田智子)

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