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健康測定機器
日経DI2015年1月号

2015/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年1月号 No.207

 薬局に求められる役割が、今、大きく変化しようとしている。2014年度、厚生労働省は政府の日本再興戦略の方針を受け、セルフメディケーション推進のために、薬局を地域のヘルスケア拠点として整備する「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点推進事業」をスタートさせた。また、臨床検査技師法に基づく告示を改正し、薬局などで行う自己採血検査を「検体測定室」という枠組みで法的に可能とした。

 現在、薬局やドラッグストアで行われている、健康測定機器を用いたサービスの分類と利点・課題を表1に示す。社会保障費の増大とその抑制を背景としたセルフメディケーションの潮流は、処方薬の調剤やOTC薬の販売を行うだけの薬局から、気軽に健康相談や健康チェックができる地域の健康ステーションへと変革していくことを求め始めている。そうした中、薬局において気軽に誰でも自分の健康を簡易チェックできる健康測定機器を活用する可能性は、今後ますます大きくなるものと思う。

表1 健康測定機器を用いる薬局サービスの分類と利点・課題

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健康測定機器の定義と種類

 一般に健康測定機器と呼ばれるものについて、明確な定義はない。あえて定義するなら、「身体のバイタルデータや機能、状態などをセルフチェックまたは簡易に測定でき、その健康度合いを評価するもの」となる。また「医療的診断を目的とせず、生活習慣病などの簡易スクリーニングや健康状態の簡易把握を目的とし、測定した人が自分の健康に関心を持ち、健康行動を起こすきっかけとなる指標を提供するもの」とも言える。

 表2に、薬局などに設置して健康測定サービスに活用されている、主な健康測定機器を示す。血圧計や骨密度測定器など医療機器に該当するものがある一方で、医療機器に該当しない機器が多いのも、健康測定機器の特徴である。

表2 薬局などで活用されている主な健康測定機器の分類と測定項目

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 これらの機器は、医療従事者でなくても取り扱え、設置場所を選ばず、操作も簡単であるという特徴を持つ。来店者が自分で操作してセルフチェックを行える機器も多いため、薬局やドラッグストアだけでなく各種の健康増進施設、スポーツ施設、温浴施設など、幅広い施設に普及しつつある。

 なお、表2には記載していないが、個人が使用する機器(パーソナル機器)として、歩数計や活動量計、睡眠計など生活の質を計測する機器も普及し始めている。こうした「健康モニタリング機器」も、健康測定機器のカテゴリーに含まれる。  以下に、個別の健康測定機器について、特性や機器選択の目安を紹介していこう。

骨密度・骨健康度測定器

 骨の健康度を測定する機器には、管理医療機器である「骨密度測定器」と、医療機器に該当しない「骨健康度測定器」がある。スクリーニングなどを目的に精度を求めるなら骨密度測定器を、骨の健康の大切さを啓蒙するようなイベントなどで簡便な測定を行いたい場合は骨健康度測定器を使用するなど、目的に合わせた選択をすることが大切である。

 いずれの機器を用いる場合も、年に1~2度、定期的に測定してもらい、骨密度や骨健康度が低下している場合は医療機関での詳しい検査を勧める。正常範囲内であっても、骨密度や骨健康度は経年で低下することを説明し、カルシウム摂取や定期的な運動など骨の健康を維持する生活習慣を身に付けてもらうよう指導する。機器は常設してもよいが、骨密度・骨健康度の測定イベントを年に1~2回開催するのであれば、その都度レンタルするという方法もある。

■骨密度測定器
 超音波骨密度測定装置「CM-200」(キヤノンライフケアソリューションズ、標準価格288万円)は、超音波で踵骨の骨内伝播速度を測定する、軽量でコンパクトな骨密度測定器である。クラスIIの管理医療機器に該当する。

 超音波方式なので、放射線方式とは異なり遮蔽設備が不要で、放射線被曝の心配がないため妊婦でも安心して測定できる。測定時間は約10秒。本体内蔵のプリンターから、数値データに加え、骨密度レベルが一目で分かる基準値グラフも印字する。なお、機器を導入した場合、消耗品として、超音波の伝播性を均一化する超音波ゼリー、専用の感熱記録紙、紙製の足置きシートが必要になる。

 超音波方式で踵骨を測定する骨密度測定器には他に、超音波骨密度測定装置「ビーナスEVO」(日本光電工業)、超音波骨密度測定装置「OSTEO proスマート」(伊藤超短波)、業務用超音波骨密度測定装置「CS-800」(タニタ)などがある。いずれも、クラスIIの管理医療機器である。

■骨健康度測定器
 写真1の「骨ウエーブ」(ライブエイド、標準価格130万円)は、手首で骨の健康度を測る、簡便な骨健康度測定器である。医療機器には該当しない。手首の橈骨に超音波を伝播させ、その波形から骨波形指標を算出。骨の健康度をA~Eの5ランクで評価する。

写真1 骨健康度測定器「骨ウエーブ」

 超音波式なので放射線遮蔽設備などは不要だが、医療機器ではないため、骨密度ではなく骨健康度の測定器であることに注意が必要である。測定結果は、各ランクに応じた生活習慣上のアドバイスとともに印字される。

 機器を導入した場合、消耗品として、超音波ゼリーまたは音響スプレー(手首に吹きつけて超音波伝導率を均一にする液体)と、専用の感熱記録紙を要する。また、超音波プローブが破損した場合は交換修理が必要となる。類似の非医療機器には踵骨を測定し結果を骨年齢として表示する骨齢測定器「MARK8800」(センサ)などがある。

高機能全自動血圧計

 筒状のカフ部に腕を差し込み、スイッチを押すだけで血圧値や脈拍を測定できる全自動血圧計は、医療機関や薬局、ドラッグストア、スポーツ施設など幅広い施設で利用されている。近年、業務用の全自動血圧計においては、血圧値と脈拍だけでなく血流状態や血管の老化度などを測定する付加機能を備えた機器が増えてきている。

 例えば、血圧などと同時に血流動態を測定できる健康測定機器を用いれば、血流動態も加味した健康アドバイスにつなげられる。血圧値が正常であっても血流動態が過剰な人には塩分の過剰摂取やストレス過多などへの注意を行い、血流動態が低下している人には定期的な運動を促すなど、より具体的なアドバイスを行える。

 血行動態観察機能付全自動血圧計「FT-1100db」(パラマ・テック、標準価格138万円)は、血圧値、脈拍に加え、血圧測定時の脈音の強弱をグラフ化したコロトコフ音図を表示。動脈の弾力性や心臓の負担度、末梢血管抵抗の指標など、通常の血圧測定だけでは分からない血流パターンの傾向をつかむことができる。クラスIIの管理医療機器に該当する。

 タッチパネル式のモニターを備えており、測定時は音声ガイダンスが流れるため、来店者によるセルフチェックが可能。測定データの基準値や解説なども表示される。測定データを来店者ごとに保存・蓄積できるため、継続的な健康管理にも使える。

 測定結果は内蔵プリンターで印字でき、その場合は消耗品として専用の感熱記録紙が必要。外付けプリンターを接続すれば、測定結果をA4判の用紙にカラーで印刷できる。

 類似の高機能全自動血圧計には、コロトコフ音図記録機能付き全自動血圧計「UDEX-TwinType IIM」(明成)などがある。

注目の健康測定機器

 骨関連、血圧関連の健康測定機器は汎用性が高い一方、広く普及している分、目新しさに欠ける側面もある。測定項目が来店者の関心を引きやすく、健康アドバイスにもつなげやすい、注目の3機種について詳しく紹介する。

■ヘモグロビン推定値測定器
 写真2の無採血ヘモグロビン推定値測定器「ASTRIM FIT」(シスメックス、標準価格39万8000円)は、採血を行わずに血中ヘモグロビンの推定値を測ることができるモニタリング機器。近赤外光を用いて末梢血管における光の吸収量と血管径を画像計測し、血中ヘモグロビン推定値を算出する。測定時間は40秒。

写真2 無採血ヘモグロビン推定値測定器「ASTRIM FIT」

 採血を行わないため感染などの心配がなく、管理が容易。ヘモグロビン推定値は鉄分などの栄養状態を評価する指標にもなるため、食生活の改善提案などの相談につなげていける。

■認知機能スクリーニングシステム
 物忘れ相談プログラム「MSP-1100」(日本光電工業)は、アルツハイマー型認知症のスクリーニングに使用される質問項目をタッチパネル式のモニター画面に表示し、音声指示に従い画面をタッチしていくだけで認知機能をチェックできるシステム。質問項目は日本認知症学会の評議員を務める鳥取大学医学部保健学科生体制御学教授の浦上克哉氏が考案したもので、感度96%、特異度97%で認知機能の低下をスクリーニングできる。

 医療機関の物忘れ外来などでも使用されている機器で、セルフチェックに要する時間は5分。オプションとしてトレーニングプログラムも提供されており、導入により頭のトレーニングを行う機器としても使用できる。

■健康総合支援システム
 健康支援システム「ウエルナビII」(ウエルアップ、写真3)は、血圧値や体脂肪率など他の健康測定機器で測定した数値を入力し、生活習慣に関する質問に答えていくことで、総合的な健康アドバイスを表示・出力する。

写真3 健康支援システム「ウエルナビII」

 入力はタッチパネルで簡便に行え、アドバイスを行う領域のメニューもMy健康管理、健康NAVI、ダイエットNAVI、運動NAVI、食事診断など多彩なので、来店者のニーズに合わせた健康アドバイスを実施しやすい。入力データを来店者ごとに管理できる機能があり、血液検査データや疾病履歴なども登録できるため、継続的な健康支援にも役立てることができる。

 これら3機種の他、次に挙げる測定項目を把握できる機器も、薬局やドラッグストアで活用しやすい。

■体組成、体成分
 体重だけでなく体脂肪率や脂肪分布、筋肉量などを測定できる高機能な体重計は、食生活や運動習慣などに関する健康アドバイスに役立つ。

 脂肪分布が計測できる機器を用いれば、内臓脂肪量から肥満が皮下脂肪型なのか内臓脂肪型なのかを推測でき、肥満のタイプに基づいた食生活アドバイスにつなげられる。また、部位別の筋肉量を測定すれば、特に高齢者に対して介護予防のための筋力トレーニングが必要かどうかを判断でき、適切な運動指導を行える。

■肺年齢
 肺年齢は、日本呼吸器学会が提唱する呼吸機能指標で、日本人の1秒量(FEV1、努力性肺活量測定時における最初の1秒の努力性呼気量)の標準回帰式に、FEV1の実測値と身長を代入して算出した年齢。健康イベントなどで人気が高い測定項目の一つである。努力性肺活量やFEV1などを測定し、たばこに関する質問項目に答えることで、肺年齢を算出する機器が市販されている。

 特に喫煙者に対して、禁煙への動機付けとして有効な測定項目である。慢性閉塞性肺疾患(COPD)のスクリーニングにも使え、COPD疑い例には、禁煙だけでなく専門医の受診が勧められると伝えることが重要になる。


 主として調剤を行う保険薬局、すなわち調剤薬局が地域の健康ステーションになるためには、まず、地域住民が持つ「調剤薬局は、処方箋を持って薬をもらいにいく店」というイメージを、「薬や健康について気軽に相談もできる店」へと変えていく必要がある。

 健康測定機器を薬局に常設すれば、地域住民が持つイメージを「いつでも気軽に健康チェックができる薬局」に変革する第一歩となる。さらに、薬剤師という専門性を生かし、測定結果に基づくアドバイスや健康相談を提供することで、薬局に対する信頼感を高める効果も期待できる。地域住民が健康的な行動を継続するモチベーションを維持し、また薬局にとっても地域のセルフメディケーション拠点としての地位を確立していくことに、健康測定機器を活用してほしい。

(ウエルアップ代表取締役・木村孝一氏)

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