DI Onlineのロゴ画像

適応外処方のエビデンス
前立腺肥大症薬のデュタステリドが男性型脱毛症を改善
日経DI2015年1月号

2015/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年1月号 No.207

疾患概念・病態

 男性型脱毛症(androgeneticalopecia、以下AGA)は、思春期以降の男性で、前頭部と頭頂部の頭髪が軟毛化して細く短くなり、最終的には額の生え際が後退して頭頂部の頭髪がなくなってしまう現象で、パターン化した脱毛が特徴である1~4)。日本人の場合、20歳代後半から30歳代にかけて著明となり、徐々に進行して40歳代以後に完成される。

 AGAは脱毛と呼ばれるが、毛包(毛髪をつくる組織)が消失するのではなく、前頭部と頭頂部の硬毛の成長期が短縮する結果、頭髪が十分な太さに成長する前に抜け落ちていくため、毛が細くなり、抜け毛が増え、毛髪量が減っていく3、5)。すなわち、毛包のミニチュア化現象が病態である。毛髪の長さは成長期の長さで決まるので、毛髪が短縮し、極端な場合は毛髪が頭皮表面に出現しなくなる1、5)

 AGAの発症には、遺伝およびアンドロゲン(男性ホルモン)が関与する。男性ホルモンのうち、AGAとの関連が大きいのがジヒドロテストステロン(DHT)である1)。DHTは、毛乳頭細胞内のアンドロゲン受容体(AR)に結合して生物学的作用を起こす。この作用は全ての毛髪で同様に働くのではなく、髭に対しては毛の成長を促進するシグナルを出すが、前頭部や頭頂部では毛の成長を止めるというシグナルを出す2、6)。ARは後頭部にはほとんどないが、前頭部や頭頂部にはあり、しかも男性型脱毛部で多く発現している1、2、6)

 DHTは、血中を循環する比較的弱いアンドロゲンであるテストステロンから還元酵素の5αリダクターゼによって変換される1)。5αリダクターゼにはI型とII型があり、I型はほとんどの毛の毛乳頭細胞に分布しているが、II型は前頭部や頭頂部毛の毛乳頭細胞に特異的に分布している1、7)

治療の現状

 AGAの治療薬として推奨されているのは、OTC薬のミノキシジル(商品名リアップ)外用液と、医療用医薬品のフィナステリド(プロペシア)経口薬である。

 ミノキシジルは、血管平滑筋のカリウムチャネルを開放して血管壁を弛緩させる血管拡張薬で、もとは高血圧症の内服薬として開発された。しかし、副作用として頭髪や体毛の発毛が報告され、脱毛症治療の外用薬として臨床応用された。ただし、血管拡張作用を持つ全ての治療薬で発毛を認めるわけではなく、ミノキシジルの発毛効果は、血管拡張作用とは関係がないと考えられている。

 一方、フィナステリドは、前立腺肥大症の治療薬として開発されたが、使用中にAGAの改善が見られたため、用量を少なくしてAGA治療薬として開発された1)。フィナステリドは、II型5αリダクターゼを特異的に阻害し、毛乳頭細胞におけるテストステロンからDHTへの変換を抑制することにより、効果を発現する。なお、フィナステリドには、公的医療保険が適用されず、自費診療となる。また、更年期以後に発症する女性型脱毛症1)には無効であることが確認されている。

 デュタステリドの適応症は、前立腺肥大症である。だが、フィナステリドと同様の作用機序、すなわちI型およびII型5αリダクターゼを阻害することから、毛包のミニチュア化現象を抑制して、毛髪の数量を増やす目的で、AGAに対して適応外使用されている。

デュタステリドの有効性

表1 男性型脱毛症患者へのデュタステリドの処方例

 AGA患者73例(平均年齢37.8±7.1歳)にデュタステリド0.5mg、75例(同38.4±6.6歳)にプラセボを、それぞれ6カ月間投与した。その結果、治療6カ月後の毛髪数の平均変化は、プラセボ群4.7本/cm2に対してデュタステリド群12.2本/cm2と有意(P=0.0319)に発毛が増加した。

 患者による発毛効果の自己評価では、全体的に見て、厚み、頭髪の質、量、頭髪の維持についてデュタステリド群が有意に改善していた。患者による6カ月後の頭髪発毛改善率は、軽度から高度改善まで含めると、プラセボ群36.0%(27/75)に対してデュタステリド群71.2%(52/73)と高かった。

 頭頂部頭皮の写真で評価したところ、プラセボ群20.0%(15/75)に対してデュタステリド群61.6%(45/73)と高かった。3カ月および6カ月後に、7段階スケール(著明発毛減少-3~著明発毛増加+3)で評価したところ、プラセボ群では0.23および-0.21、デュタステリド群では0.71および0.78で、デュタステリド群に有意(P=0.008、P<0.0001)な効果が得られた。

 有害事象は、デュタステリド群49.3%(36/73)、プラセボ群42.7%(32/75)で見られた。薬に関連する副作用は、デュタステリド群6.9%(5/73)、プラセボ群9.3%(7/75)にあり、両群間に有意差は見られなかった。最も多かった有害事象は鼻咽頭炎で、デュタステリド群16.4%(12/73)、プラセボ群9.3%(7/75)であった。薬剤に関連する最も多い副作用は性機能障害で、デュタステリド群4.1%(3/73)、プラセボ群2.7%(2/75)であった。プラセボ群の1例で、勃起障害と射精障害を訴えた。血液所見やバイタルサイン、身体所見については両群間で同様であった8)

 AGA患者181例(平均年齢38.7±8.43歳)にプラセボ、185例(同38.5±7.72歳)にデュタステリド0.02mg、188例(同38.7±7.44歳)に同0.1mg、184例(同38.6±7.66歳)に同0.5mg、179例(同38.0±7.81歳)にフィナステリド1mgを24週間経口投与した。各群157例、156例、154例、153例、141例が治療を完了した。

 治療12週および24週後、頭頂部で直径2.54cmの円内における毛髪数の平均変化は、プラセボ群では-4.0および-4.9だったのに対して、デュタステリド0.02mg群では22.9および17.1、同0.1mg群では59.6および63.0、同0.5mg群では62.3および89.6、フィナステリド群では50.9および56.6で、デュタステリド0.02mg群を除いた治療薬群で、プラセボ群より有意(P<0.001)に増加した。デュタステリド0.5mg群は、フィナステリド群より有意(P=0.003)に増加した。直径1.13cmの円内における毛髪数の平均変化も、同様の結果だった。

 髪の太さの平均変化(μm×10-3)は、24週後でプラセボ群-0.9だったのに対して、デュタステリド0.02mg群では0.0、同0.1mg群では3.9、同0.5mg群では5.8、フィナステリド群では4.0で、デュタステリド0.02mg群以外の治療薬群で、プラセボ群より有意(P<0.001)に太くなった。デュタステリド0.5mg群はフィナステリド群より有意(P=0.004)に太くなっていた。

 24週後の写真による評価では、頭頂および前頭部ともに、デュタステリド0.1mgおよび0.5mg群、フィナステリド群でプラセボ群より有意(P<0.001)な改善であったが、前頭部ではデュタステリド0.5mg群がフィナステリド群より有意(P=0.002)な改善であった。

 薬に関連する副作用の発現率は、プラセボ群15%、デュタステリド0.02mg群14%、同0.1mg群21%、同0.5mg群16%、フィナステリド群20%で、各群ほぼ同様であった9)

適応外使用を見抜くポイント

 男性型脱毛症に対する処方であれば、自費診療であることと、処方元が皮膚科であることを確認する。さらに、男性型脱毛症であれば、患者は比較的若年の男性なので、その点からも確認が可能である。

参考文献
1)細胞工学 2013;32:1050-4.
2)Inflamm Regen. 2004;24:118-20.
3)綜合臨牀 2010;59:1619-22.
4)日皮会誌 2010;120:977-86.
5)綜合臨牀 2009;58:2355-6.
6)株式会社アデランス研究開発 研究パートナー 板見智教授.(URL
7)株式会社アデランス研究開発 脱毛について AGA(男性型脱毛症)について.(URL
8)J Am Acad Dermatol. 2010;63:252-8.
9)J Am Acad Dermatol. 2014;70:489-98.

講師 藤原 豊博
AIメディカル・ラボ、薬剤師
2000年から「月刊薬事」(じほう)で適応外処方に関する連載を開始。同連載をまとめた3分冊の『疾患・医薬品から引ける適応外使用論文検索ガイド』(じほう)が刊行されている。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ