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3分で伝える 重大な副作用
横紋筋融解症
日経DI2015年1月号

2015/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年1月号 No.207

執筆:網岡克雄(金城学院大学薬学部医療薬学教授)
監修:網岡克雄(金城学院大学薬学部医療薬学教授)、佐藤信範(千葉大学大学院薬学研究院臨床教育教授)

 本連載では、頻度としてはまれなものの、生命に危険を及ぼしたり後遺障害を残すことがある「重大な副作用」について、患者にどう注意喚起を行えばよいかを、具体的な症状や原因となりやすい医薬品を挙げて解説していきます。取り上げる副作用は厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル」に掲載されていますので、マニュアル末尾の参考文献も含め、併せてお読みください。


 横紋筋融解症とは、薬剤性筋障害の一種で、横紋筋(主として骨格筋)の細胞が融解・壊死して筋肉や腎臓などに障害を来す病態を指す。筋肉痛や脱力などが主要な症状となる。また、筋細胞の融解に伴い、筋肉中のミオグロビン(赤色色素蛋白質)が血中に流出し尿中に排泄されるため、尿が赤褐色を呈する(ミオグロビン尿)。放置するとミオグロビンにより腎尿細管が傷害を受け、腎不全から多臓器不全へと進行して死亡に至る、あるいは不可逆的な臓器障害を残すこともある。

推定原因医薬品

 添付文書に副作用として横紋筋融解症が記載されている主な薬剤を表1に挙げる。

表1 添付文書の「重大な副作用」の項に横紋筋融解症が記載されている主な医薬品

(作成:千葉大学薬学部臨床教育研究室・中村昇平氏、監修:千葉大学大学院薬学研究院 助教・櫻田大也氏)
(調査日:2014年12月4日)

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 多様な薬剤で生じるが、比較的頻度が高いのは、脂質異常症治療薬のHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬)、フィブラート系薬と、ニューキノロン系抗菌薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬、漢方薬などである。

【初期症状】
◯手足、肩、腰などの筋痛
◯筋力低下、脱力、こわばり
◯全身の疲労感
◯赤褐色の尿(ミオグロビン尿)

 検査所見では、血中クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇に加え、乳酸脱水素酵素(LDH)値、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の上昇が認められる。

好発時期・好発患者

 発症のパターン(急性、亜急性、緩徐)は原因薬により異なる。経口抗菌薬では、多くは服用開始から数日以内に急性に発症する。スタチン系薬では、服用開始から数カ月後に、徐々に発症することが多い。抗精神病薬や抗パーキンソン病薬では、服薬開始あるいは増量後1週間以内に重篤な副作用である悪性症候群を来すことがあり、その症状として横紋筋融解症が表れ得る。甘草含有漢方薬では、低カリウム血症の症状として横紋筋融解症を来し得るが好発時期は明確ではない。

 患者側のリスク要因としては、腎機能障害(薬剤血中濃度を上昇させやすい)、服薬コンプライアンス不良(血中濃度が上下しやすい)、臥床(二次性に筋障害を増悪させやすい)、感冒などのウイルス感染、脱水、激しい運動などがある。

対応方法

 様々な薬剤が原因になり得るので、原則として全ての服用薬を中止し、速やかに医療機関を受診させる。受診時には服用薬の種類や開始時期などが分かるお薬手帳を持参させる。

 治療は腎機能障害の程度により異なり、腎機能が保持されている場合は原因薬を中止して筋症状の回復を待つ。軽度腎機能障害には輸液による腎保護を行う。急性腎不全を来している場合は血液透析を実施する。

◆薬剤師へのアドバイス◆

 薬局薬剤師、病院薬剤師を問わず、重大な副作用に関する服薬指導は、薬剤師がリスクマネジメントを行う上で極めて大切な仕事となっている。日本薬剤師会では「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」の中で、ハイリスク薬の服薬指導において注意すべき5項目を挙げているが、その中でも、副作用の初期症状をしっかりと理解させ、重篤な副作用が発生した時の対処方法を教育することが大切である。患者・家族が副作用の第一発見者になる場合が多いことを踏まえると、初期症状を伝えるのは重要な課題である。

 この連載では、患者に伝えるべき初期症状を中心に、各種の重大な副作用に関する解説を行っていく。患者と薬剤師の、安全対策に関するコミュニケーションツールとしていただきたい。

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