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DIクイズ3(A)
DIクイズ3:(A)妊娠高血圧症候群に使用できる降圧薬
日経DI2015年1月号

2015/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年1月号 No.207

出題と解答 :今泉 真知子
有限会社丈夫屋[川崎市高津区]

A1

(3)20週

A2

(2)アルドメット(一般名メチルドパ)
(3)トランデート(ラベタロール塩酸塩)

 妊娠中の血圧は、正常妊娠であっても妊娠週数によって変動する。通常、血圧は妊娠初期に低下し始め、その後妊娠20~32週にかけて妊娠前の血圧に戻り、32週以降は上昇する。一方、妊娠前は高血圧ではなかったのに妊娠20週頃から血圧が上昇し、収縮期で140mmHg以上もしくは拡張期で90mmHg以上となった場合は、妊娠高血圧症候群と診断される。

 妊娠高血圧症候群は、過去に妊娠中毒症と呼ばれていた病態とほぼ同一である。その後妊娠中毒症の3要件(高血圧、蛋白尿、浮腫)のうち、母体や胎児の障害に直接関係するのは高血圧であることが判明したため、2005年4月に日本産科婦人科学会が病名を改め、新たな診断基準を設けた。

 妊娠高血圧症候群の重症度は、血圧値と尿蛋白量により診断する。収縮期血圧が140~159mmHgもしくは拡張期血圧が90~109mmHgで、尿蛋白量が1日300mg以上2g未満の場合は「軽症」と診断し、薬物療法は行わなくてもよい。だが、収縮期160mmHg以上もしくは拡張期110mmHg以上の場合は、尿蛋白量によらず「重症」となり、母体臓器障害を防ぐために降圧治療が開始される。ちなみに、通常の高血圧に対しては生活指導として減塩が指示されるが、妊婦が過度の減塩を行うと胎盤血流量の低下を引き起こし得るので、妊娠高血圧症候群では基本的に減塩は勧めない。

 さて、日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2014』(JSH2014)では、4種類の降圧薬について、妊娠高血圧症候群への使用を推奨している。その一つが、今回Nさんに処方されたカルシウム拮抗薬のニフェジピン(商品名アダラート)であり、20週以降の妊婦に使用できるよう11年に添付文書が改訂された。JSH2014ではアダラートCRやアダラートL、セパミットRなどの長時間作用型製剤の使用を推奨し、カプセル製剤の舌下投与は勧めないとしている。

 また、妊娠週数によらずJSH2014で使用が推奨されている降圧薬は、中枢性交感神経抑制薬のメチルドパ(アルドメット他)、血管拡張薬のヒドララジン塩酸塩(アプレゾリン)と、11年の添付文書改訂で妊婦への使用が可能になったαβ遮断薬のラベタロール塩酸塩(トランデート他)の3種類である。従って、妊娠20週未満では上記の3種類、20週以降ではニフェジピンを加えた4種類が、妊娠高血圧症候群への降圧治療における第一選択薬となる。

 これらのうち1剤で降圧が不十分な場合は2剤を併用するが、その場合は降圧機序の異なる2剤を組み合わせる。ニフェジピンとヒドララジンは血管拡張薬、メチルドパとラベタロールは交感神経抑制薬に分類されるので、ニフェジピンが処方されたNさんの場合はメチルドパあるいはラベタロールが2剤目として選択される。

 なお、病態上、推奨薬以外の降圧薬を用いなければならないケースもあり得るが、利尿薬は胎盤血流量を低下させるため肺水腫や心不全などがない限り使用しない。また、ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などのレニン・アンジオテンシン系阻害薬は、妊娠中の服用で胎児腎の形成不全や羊水過少症などを生じるとの報告があり、禁忌であることに留意したい。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 先生に妊娠高血圧だと言われて、驚かれたことでしょう。妊娠中に血圧が高いままだと、Nさんにもお腹の赤ちゃんにも負担が掛かりますから、お薬をきちんと使って血圧を下げることがとても大切です。

 Nさんのおっしゃる通り、妊娠中に使えるお薬は限られていますが、明日からお飲みいただくアダラートは妊娠20週以降から使ってよいお薬です。アダラートだけで血圧が十分に下がらない場合も、妊娠中に使える血圧のお薬はまだあります。次の診察は2週間後ですね。もしお薬が追加になった場合も、妊娠中に使えるお薬かどうかお調べしますから、ご安心ください。

参考文献
1)日本高血圧学会『高血圧ガイドライン2014』

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