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患者指導ワンポイントレッスン
腎不全患者の高カリウム血症を防ごう
日経DI2015年1月号

2015/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年12月号 No.207

監修 内田 俊也氏
(帝京大学医学部内科学講座教授)

 カリウムは生命の維持に不可欠なミネラルで、果物や野菜、海藻などに多く含まれ、一般には健康に良い成分であると見なされている。しかし、腎機能が低下している患者では、腎臓からのカリウム排出が低下して血中カリウム値が上昇し、全身の筋肉の収縮・弛緩に異常を来す場合がある。これはカリウムの主要な排出経路が尿であるためである。

 血中カリウム値が5~5.5mEq/L(基準値は施設により異なる)を超えると、高カリウム血症と診断される。7mEq/Lを超えると重度の不整脈から心停止を引き起こす恐れが出てくる。腎機能が低下している患者が果物を食べ過ぎ、意識を失って病院に搬送されるケースは決してまれではない。

 また、血液透析を受けている患者の場合、カリウムの排出経路が透析か糞便しかないため、カリウムを摂取しすぎると容易に高カリウム血症となる。透析患者では、死因のかなりの割合を高カリウム血症に起因する心停止が占めているのではないかと推測されている。日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」は、カリウム摂取量を、慢性腎臓病のステージ分類でG3b(糸球体濾過量;GFRが30~44)では1日2000mg以下、G4~G5(GFR29以下)では同1500mg以下にすることを目標としている。

 ステージ分類でG1からG2の軽度の腎不全であっても、腎臓病の既往がある、尿蛋白量が多い、高カリウム血症を引き起こす可能性のある薬剤を服用している、などに該当する患者は摂取カリウム量を控えた方がよい。ここ1、2年に発表された研究では、血中カリウム高値の持続と、腎機能低下が関連する可能性が指摘されている。

下処理でカリウムは減らせる

 カリウムが多く含まれる食品は、果物、葉菜類、根菜類、芋類、海藻などである。カリウムは食肉や魚にも含まれているが、腎機能が低下している人では蛋白質の摂取制限が実施されるため、カリウム源として問題になることは少ない。一方、芋類はカリウム源として認識されにくいらしく、原因不明の高カリウム血症を起こした患者に聞いてみると、「(ジャガイモがたくさん入った)カレーを食べた」と言う人が多い。

 カリウムの摂取を抑えるには、食品に含まれる量を把握して摂取を控えたり、食材の下処理を通じて含有量を減らすなどの工夫が必要だ。野菜や芋に含まれるカリウムは、下茹でして茹で汁を捨てる「茹でこぼし」を行ったり、細かく切って水にさらすことで、3分の1から3分の2くらいに減らせる。カリウム制限を要する患者とその家族には、このような調理上の指導を行い、ストレスなくカリウム摂取量を減らせるようなサポートが必要である。

 ちなみに、腎機能が著しく低下しており、透析導入が近いと見られる患者や、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、ACE阻害薬、抗アルドステロン薬を服用している患者、糖尿病を合併している患者では、血中カリウム値が短期間で上昇しやすい。このような場合、カリウム吸着作用を持つポリスチレンスルホン酸カルシウム(カリメート、アーガメイト他)を併用するが、近年は舌触りや味を改良した後発医薬品が増え、患者の嗜好に合わせた薬剤選択が可能になっている。

 なお、高カリウム血症の自覚症状としては、唇のしびれを訴える患者が多い。カリウム値の上昇により、筋肉の機能に影響が出るため、足がつったり、力が入らないという人もいる。不整脈や便秘も高カリウム血症の症状の1つだ。高カリウム血症が疑われる患者には、薬剤師からの患者指導が極めて重要である。


指導箋は、複製して配布するなど、薬局での患者指導に自由にご活用ください。DIオンライン(http://di.nikkeibp.co.jp)からもダウンロードできます。

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