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DIクイズ2(A)
DIクイズ2:(A)うつ病にリーマスが追加された理由
日経DI2015年1月

2015/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2015年1月号 No.207

出題と解答:横井 正之
(パスカル薬局[滋賀県草津市])

A1

炭酸リチウム(商品名リーマス他)を選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や三環系抗うつ薬などと併用すると、抗うつ薬の効果増強が期待できるため。

 日本うつ病学会治療ガイドライン「II.大うつ病性障害」によると、中等症~重症のうつ病に対する治療法として、(1)選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの新規抗うつ薬、(2)三環系・非三環系抗うつ薬、(3)修正型電気痙攣療法(ECT)─が推奨されている。薬物治療では、1種類の抗うつ薬を十分量かつ十分な期間使用することが基本とされるが、抗うつ薬に反応しない場合や、副作用が強いなどの理由により抗うつ薬の変更・増量が困難な場合は、別の薬剤の併用による抗うつ効果増強療法(オーグメンテーション療法)が試みられる。

 抗うつ効果の増強には、炭酸リチウム(商品名リーマス他)やラモトリギン(ラミクタール)、バルプロ酸ナトリウム(セレニカ、デパケン他)、カルバマゼピン(テグレトール他)などの抗躁薬、アリピプラゾール(エビリファイ)やクエチアピンフマル酸塩(セロクエル他)、オランザピン(ジプレキサ)などの非定型抗精神病薬が適応外で使用される。

 このうち、リチウムの抗うつ効果増強作用に関しては、10本中8本のランダム化比較試験(RCT)で支持されている。例えば、パロキセチン塩酸塩水和物(パキシル他)とアミトリプチリン塩酸塩(トリプタノール、ノーマルン)のそれぞれにリチウムを併用し、抗うつ効果の増強を調べたRCTでは、パロキセチン群でより早期の改善が見られ、有害事象の内容や発現頻度は各抗うつ薬の単剤投与時と同等だったことが示されている。リチウムの抗うつ効果増強作用のメカニズムは明らかになっていないが、セロトニン系やγアミノ酪酸(GABA)系への作用、神経細胞新生作用などが関与している可能性が考えられている。

 リチウムは、有効血中濃度域と中毒濃度域が近接していることで有名である。腎障害の既往歴のある患者や食事・水分摂取量不足の患者、高齢者に投与すると、リチウムが体内に貯留し中毒を来す恐れがある(慎重投与)。また、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などと併用すると、血清リチウム濃度が上昇することがある。従って、リチウムの交付時には、食事・水分摂取不足や脱水、上記薬剤の併用などに十分に注意しなければならない。

 リチウム中毒の初期症状としては、食欲低下、悪心・嘔吐、下痢などの消化器症状、振戦、傾眠、錯乱などの中枢神経症状、運動障害、発熱、発汗などが知られている。また、リチウムをSSRIやSNRIと併用すると、セロトニン症候群(錯乱、激越、腱反射亢進、ミオクローヌス、振戦、下痢、発汗、悪寒、発熱など)を起こしやすいとの指摘もある。これらの症状が見られた場合は、服用を中止し、直ちに受診するよう指導する。

 リチウムの使用時には、血中リチウム濃度のほか、甲状腺機能検査(FT4、TSH)、糸球体濾過量(GFR)、血中カルシウム濃度などのモニタリングを行うことが望ましいとされる。交付時には、これらの検査の実施状況も確認すべきだろう。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 今回追加されたリーマスというお薬は、これまでお飲みになっていたパキシルの効果を高め、うつ症状の回復をより早めるために処方されたのだと思います。Dさんのように、治療を続けていてもなかなか良くならないという場合に追加されることがあります。

 リーマスは、患者さんの症状や体質に合わせて投与量を調節する必要があるお薬なので、病院では時々血液検査を行うと思います。また、吐き気や下痢、眠気、寒気、体のふるえ、体が動かしにくい、汗が出るなどの症状は、副作用の可能性があります。いつもと違う症状が表れた場合は、服用をいったん中止して、私どもか医師にご相談ください。また、市販のかぜ薬や頭痛薬を服用すると、副作用が起きやすくなる可能性があるので、自己判断で市販薬を飲むことは避けてください。

参考文献
1)日本うつ病学会治療ガイドライン「II.大うつ病性障害」(2013年)
2)脳21 2007;10:62-7.
3)CNS Drugs. 2014;28:331-42.

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