DI Onlineのロゴ画像

特集:
皮膚障害
日経DI2014年12月号

2014/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年12月号 No.206

 抗癌剤による皮膚障害には主に、ざ瘡様発疹、爪囲炎、手足症候群などがあり、特に分子標的薬によって発症頻度が高いことが知られている。皮膚症状は外見上はっきりと分かるだけでなく、痒みや痛みなどが患者の生活の質(QOL)を著しく損なう。患者が抗癌剤治療を中止したり、減薬せざるを得なくなることも多い。

 特に、分子標的薬のうち抗EGFR薬では、皮疹の強さが抗癌剤の効果と相関するとのデータが示されており、せっかく効いている抗癌剤を中止する事態を避けるためにも、皮膚症状のコントロールは重要な課題となる。

●ざ瘡様発疹(にきび状の皮疹)

 ざ瘡様発疹は、顔面、頸部、頭部、胸、背中などに発生するにきび状の皮疹。投与後1~2週間で発現することが多いとされる。

 治療の中心となるのは外用ステロイドだ。通常のにきび(尋常性ざ瘡)はアクネ菌や毛包虫などが原因となって生じるが、抗EGFR薬のざ瘡は非感染性であることが確かめられている。このため、外用ステロイドの投与が基本的に用いられる。

 外用ステロイドは、処方箋に「皮疹発症時」などとは記載されないが、皮疹の初期から積極的に使う方針が取られる。中垣氏は「ゲフィチニブなどは特に『皮疹が出たらすぐ塗るように』と指導することが多い」と語る。

 使われるステロイドは、体幹部でベリーストロングクラス(ジフルプレドナート[マイザー他]など)、頭皮にはストロングクラス(ベタメタゾン吉草酸エステル[リンデロンV他])、顔面にはミディアムクラス(ヒドロコルチゾン酪酸エステル[ロコイド他]など)が一般的(表3)。

表3 外用ステロイドのランクと主な商品名

画像のタップで拡大表示

 ただし、「ストロングクラス以上は通常顔に塗らないが、ゲフィチニブなどの皮疹で重症の場合には、塗ることもある。でないとコントロール不可のケースがある」(静岡県立総合病院の中垣氏)というように、強い外用ステロイドをあえて使用するケースがあることに注意を要する。薬局では外用ステロイドに関して一般的な説明に終始してしまい、「ストロングクラスは顔に塗ってはいけません(塗らない方がいいのですが)」「ステロイドはひどい時だけ使いましょう」などと患者指導してしまい、患者が使用を控えることがある。皮膚障害への支持療法として処方された場合、そのような説明を安易にすべきでない。

 次に、抗癌剤によるざ瘡様発疹で特徴的な処方が、ミノサイクリン塩酸塩(ミノマイシン他)をはじめとしたテトラサイクリン系抗菌薬の内服だ。ミノサイクリンは抗炎症作用を併せ持つ抗菌薬で、その抗炎症効果を期待して、抗癌剤投与を受けた当日から予防的に使用する。通常のにきびにも使われる薬だ。

 国立がん研究センター東病院の松井氏は、「抗炎症作用のあるテトラサイクリン系以外の抗菌薬として、まれにマクロライド系のロキシスロマイシンが使われることもある」と話す。ロキシスロマイシン(ルリッド他)はざ瘡に適応があるため使われるのかもしれない。

 このほか、治療には抗炎症作用のあるクリンダマイシン外用薬(ダラシンT他)や、にきびによく使われるナジフロキサシン外用薬(アクアチム他)も用いられることがあるようだ。さらに、表皮の角化細胞の分化を抑制して正常化させる目的でアダパレン(ディフェリン)が、ざ瘡様発疹に併発する脂漏性皮膚炎の皮脂抑制のためビタミンB2、B6も処方され得る。

●爪囲炎

 爪囲炎とは、手足の爪の両側に炎症を起こして痛みが生じるもので、両側から爪を覆う形で肉芽を形成することもある。抗癌剤投与開始後しばらく(2カ月前後)してから発症することが多い。

 爪囲炎には、保湿剤およびストロングクラス以上の外用ステロイドを使う。ざ瘡様発疹と同様にミノサイクリンの内服も行われるが、その上で感染があればマクロライド系抗菌薬を内服することもある。そのほか、爪囲炎が起きている部分と爪の間に隙間を作って症状を和らげるために、指先から根元にかけてテーピングテープをらせん状に巻いて対処することも多い。テーピング方法は抗癌剤のパンフレットなどに記載されている。その場で実演しながら指導すると喜ばれそうだ。

●手足症候群

 手足症候群は、フッ化ピリミジン系やタキサン系などの旧来の抗癌剤によるものと、分子標的薬(特にソラフェニブトシル酸塩[ネクサバール]、スニチニブリンゴ酸塩[スーテント]、レゴラフェニブ[スチバーガ]など)によるものがあり、症状は両者で若干異なる。

 前者の手足症候群では、手足の指先などに触覚の異常、チクチク、ピリピリ感などが初期にあり、しもやけのような腫れや赤みが生じて、進行すると亀裂や水疱、潰瘍などが生じる。一方、分子標的薬によるものは、圧力の掛かる部分(手のひらや足裏、よく使う親指、人差し指、中指など)に強い発赤が生じて、角化する傾向が強い。

 手足症候群はいずれも局所治療が中心で、その基本には保湿剤と外用ステロイドが用いられる。保湿剤を頻回(1日6回など)に塗ってしっかり予防すると症状が軽度で済む患者もいるため、薬局では特に皮膚の保湿に気を使わない男性に保湿剤の使用をアドバイスすると効果がありそうだ。手足の皮膚は厚く吸収が穏やかなので、外用ステロイドはストロングクラス以上のものがよく用いられる。剤形は、クリーム剤は比較的刺激が強いため、亀裂が生じている部位には軟膏が適している。そのほか、抗皮膚炎作用を有するビタミンB6製剤(ピドキサール他)や、鎮痛目的でNSAIDsなども投与される。

 なお、症状が出ていなくても、予防的にステロイド外用薬を好発部位に使用する場合がある。中垣氏は「分子標的薬による手足症候群には、抗癌剤の投与前から予防的にステロイド外用薬を塗布することも多い。患者は症状が出ていないと油断しやすいが、治療を続けるとかなりの確率で手足症候群が出るため、予防的な使用を怠らないよう薬局でも指導してほしい」と話している。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ