DI Onlineのロゴ画像

特集:
下痢・便秘
日経DI2014年12月号

2014/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年12月号 No.206

●下痢

 下痢には早発性のものと遅発性のものがある。早発性のものはイリノテカンのコリン作動性によるものが知られており、それにはブチルスコポラミン臭化物(ブスコパン)などがよく使用される。一方、遅発性の下痢は様々な抗癌剤で生じる。その支持療法で頻用されるのが、ロペラミド塩酸塩(ロペミン他)。抗コリン作用とプロスタグランジン放出抑制作用によって下痢を止める薬剤だ。

 「ロペラミドの処方は通常の用法とは大きく異なる場合があり、病院で指示された内容と食い違った服薬指導をしてしまいがち」と注意を促すのは、国立がん研究センター東病院の松井氏。ロペラミドの添付文書における使用方法は、「1日1~2カプセルを1~2回に分けて服用、適宜増減可」だ。しかし、抗癌剤による下痢の対策としての用量・用法は、これとは全く異なってくる。

 例えば、米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドラインでは、最初に4カプセルを服用し、その後収まらないなら4時間ごとに2カプセルずつ服用する旨が記載されており、1日に最大14カプセルの服用が推奨されている。

ロペミンは1日10カプセル以上もあり

 「日本では医療機関へのアクセスが良いので、ASCOのガイドラインの用量まで服用させることは少なく、下痢が止まらなければ来院させることがほとんど。ただし、1回2カプセルを1日3回で服用してもらうケースはしばしばあり、添付文書の用量は軽く超えてしまう」と松井氏は強調する。

 他にも頓用の処方で、「1カプセルを2~3時間ごとに、下痢が止まるまで服用する。1日8回まで服用可」あるいは「2カプセルを4時間ごとに5回飲む」などと指示されていることもあり、添付文書と大きく異なるのが通常と考えておくべきだろう。冒頭のCさんに服薬指導した薬剤師のように、安易に「1日2回までにしてください」などと説明しないようにしたい。

 薬局にとって困るのは、そういった用法が処方箋に記載されていない場合があること。もし患者がそのような飲み方を指示されていたとしても、慌てず服薬指導したいところだ。

 なお、服薬指導時には、下痢が始まったら服用を開始し、止まったら服用をストップしていい旨を患者に伝えておく必要がある。一方で、ロペラミドはまれに腸管閉塞が発生することがあるので注意を要する薬剤だが、それを恐れて患者が服用を控えてしまうと、脱水や栄養障害などを生じ、治療の妨げになる。このため、腸管閉塞のリスクを過剰に説明しないようにするのも重要なポイントだ。

 ロペラミドの他には、乳酸菌製剤、タンニン酸アルブミン、アヘンチンキなども用いられることがある。アヘンチンキは頓用あるいは常用で処方される。ロペラミドを2日間服用しても下痢が消失しない場合などに、1回0.5mLを1日3~4回内服するなどの使い方がなされる。

◆イリノテカン投与時の下痢対策

画像のタップで拡大表示

 イリノテカン塩酸塩(カンプト、トポテシン他)による下痢には、早発性の下痢と遅発性の下痢がある。遅発性の下痢に対して、上記のような半夏瀉心湯の予防的投与がよく行われる。

 イリノテカンの活性代謝物(SN-38)は肝臓でグルクロン酸抱合されて不活化されるが、胆汁を経て腸管に入った際に腸内細菌のβグルクロニダーゼによってグルクロン酸抱合が外れてしまい、SN-38が再活性化して腸管を傷害し下痢を誘発する。半夏瀉心湯はβグルクロニダーゼを阻害することで、SN-38の再活性化を防ぎ、下痢を予防する。イリノテカン投与の数日前から予防的に服用する。

画像のタップで拡大表示

 上記のような処方もよく知られている。これはSN-38の毒性を低減することを狙った処方。炭酸水素ナトリウムおよびウルソデオキシコール酸(ウルソ他)は、それぞれ腸管腔内と胆汁をアルカリ化する作用を持つ。SN-38はアルカリ性に傾くと腸管で再吸収されにくく、細胞傷害性も低くなる。酸化マグネシウム(マグミット他)は、SN-38を含む便の排泄を促す目的で併用される。もっともこの処方は最近は見なくなったとの声も聞かれる。

●便秘

 便秘は、抗癌剤によって腸管の自律神経作用が抑制されることで生じると考えられている。ただし、麻薬をはじめとして様々な薬剤が原因となり得るため、原因薬の特定は困難なことが多い。制吐薬や麻薬など「中止できない薬」が原因の場合は、支持療法でカバーすることになる。もっとも、「便秘には他の副作用対策のように特殊な薬剤・用法はあまりない」(松井氏)ため、処方解析に悩むことは少なさそうだ。それよりも、便秘のモニタリングと服薬指導が重要となる。

 「化学療法時の便秘には、基本的に酸化マグネシウムなどを用い、腸蠕動系薬などの併用も行われる。併用時には酸化マグネシウムを常用とし、ピコスルファートナトリウム水和物(ラキソベロン他)などの腸蠕動系薬を頓用で用いる処方が当院では多い」と松井氏は語る。なお、高齢者では酸化マグネシウムによる軟便化で便を漏らしやすくなって困る患者もいる。患者が困っていれば用量や薬剤の変更などを念頭に疑義照会した方がいい。

 また、癌患者の中には酸化マグネシウムを常用している人もいるが、そのような人が抗癌剤で下痢になり、ロペラミドが処方されることもある。松井氏は「普段常用している酸化マグネシウムとロペラミドを一緒に服用してしまう患者が結構いる。なので、薬局では薬歴やお薬手帳などを基に酸化マグネシウムを服用していないか確認して、ロペラミドとは併用しないように指導してほしい。場合によっては、処方元に疑義照会する必要もあるだろう」と語る。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ