DI Onlineのロゴ画像

特集:
悪心・嘔吐
日経DI2014年12月号

2014/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年12月号 No.206

 骨髄抑制は、抗癌剤によって骨髄の造血機能が抑制されることで生じるもので、白血球・赤血球・血小板が減少する。中でも白血球が特に減少するため易感染性となる。38℃以上の発熱を伴う発熱性好中球減少症(FN)は、急速に敗血症性ショックに陥る可能性があり、その予防や早期治療の目的で抗菌薬が処方される。

 その際に主に処方されるのは、ニューキノロン系抗菌薬のレボフロキサシン(クラビット)。他に、シプロフロキサシン(シプロキサン)にアモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン)を併用する場合もある。

 東京医療センター(東京都目黒区)薬剤科の大橋養賢氏は、「シプロフロキサシンとアモキシシリン・クラブラン酸の併用はエビデンスも多くガイドラインでも推奨されているが、当院を含む多くの施設ではレボフロキサシンが使われるのが現状。主な理由は、錠数が少なくて済み、服薬コンプライアンスが良好なためだ」と解説する。アモキシシリン・クラブラン酸は嫌気性菌をカバーする目的で併用されるが、クラブラン酸による下痢が生じやすく、併用しない場合もあるという。そのほか、「海外用量を勘案し、オーグメンチンを減量し、代わりにアモキシシリン単味剤のサワシリンなどを追加する医師もいる」(静岡県立総合病院薬剤部・部門長代行の中垣繁氏)という。

 服薬指導時に注意すべきなのは、何といっても服用方法の確認。骨髄抑制に対する支持療法としては、「37.5℃(38℃)以上の発熱が見られた場合に服用を開始し、処方された量(5~7日が一般的)を飲み切る」という用法が標準。FN発症リスクがやや高い場合には、発熱の有無にかかわらず「化学療法治療日から5~7日後(施設差あり)に服用を開始し、飲み切る」とすることもある。

ルーチンに“今日から”と説明しない

 大橋氏は「“発熱時”などの指示がきちんと書かれていない処方箋もある。その場合、支持療法と気付かずに、抗菌薬を今日から服用してくださいと指導してしまうミスをしがちだ」という。冒頭のBさんの処方箋はまさにそのようなケース。アセトアミノフェン(カロナール)が解熱目的、メトクロプラミド(プリンペラン)が制吐目的で一緒に出され、かぜの処方箋にも見えなくはない。こうしたケースで早合点しないよう、処方元や薬歴から抗癌剤治療中の処方でないか確認を。抗菌薬を3日飲んで解熱しなければ病院に来るよう指示する施設もあり、処方元の方針も確認しておいた方がいいだろう。

 このほか、血液腫瘍の治療を受けている患者では、日和見感染の予防のため、抗真菌薬や抗ウイルス薬が入院時から継続的に処方されることもある。大橋氏は「ボルテゾミブ(ベルケイド)という抗癌剤を使用している患者や同種骨髄移植後の患者で、カリニ肺炎の予防のためにST合剤(バクタ他)を低用量で継続的に使用することがある。また、同種骨髄移植後で免疫抑制剤を使用中の患者に、深在性真菌症の予防目的でアゾール系抗真菌薬が継続的に使われることもある」という。これらはまれにしか遭遇しないかもしれないが、処方意図は理解しておきたい。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ