DI Onlineのロゴ画像

特集:
総論●地域薬局と支持療法 薬局による副作用対策支援が重要に
日経DI2014年12月号

2014/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年12月号 No.206

 癌患者の処方箋を薬局で応需する機会が増えている。癌患者の増加や、抗癌剤とその投与方法の進歩により、病院の外来で化学療法を実施する件数が大幅に増加しているためだ。

 図1は、病院で外来化学療法加算を算定した回数(6月審査分)の年次推移。2003年には2万4031件だったのが、13年には29万8989件と、ここ10年で10倍以上に増加した。

図1 医療機関における外来化学療法加算の算定回数の推移

画像のタップで拡大表示

 さらに、院外処方率も高まっており、外来化学療法を受けた患者が、病院の門前だけでなく、自宅や駅近くなど様々な薬局へ処方箋を持ち込んでいる。どの薬局でも、癌患者の処方箋を応需する機会はあるといえるだろう。

支持療法が分からない

 癌患者が持ち込む処方箋には、必ずしも抗癌剤が記載されているわけではない。支持療法、つまり癌治療の副作用などを治療・予防する薬剤のみが記載された処方箋も数多い。

 癌化学療法で最も大切なのは、患者に治療を継続してもらうこと。そのために、治療継続の妨げとなる症状を抑え込む様々な支持療法が編み出されてきた。

 ところが、支持療法の内容や目的が十分に薬局に知られていないことが問題視されている。例えば14年5月、東京女子医科大学病院が抗癌剤を含む処方箋を院内に戻したことが話題になった。その理由として同院は、支持療法を含む服薬指導が院外薬局において不十分な点を挙げている。

 癌化学療法の支持療法に詳しい、がん研有明病院薬剤部・副薬剤部長の鈴木賢一氏はこう語る。

 「抗癌剤の支持療法は、薬剤が意図通りの用法・用量で用いられないと、目的とした効果が得られなくなる。そのために抗癌剤治療を休止・中止せざるを得なくなることもあり、患者にとって大きな不利益が生じる」

 今、地域の薬局が受け皿となって癌患者を支援する機運が高まっており、薬薬連携の取り組みが各地で行われている。今後、癌患者に適切な服薬指導ができるか否かは、薬局が選ばれる上で重要な要素となっていくはずだ。

「もしかしたら」の意識が大切

 支持療法の服薬指導を難しくしている要因に、処方意図のつかみにくさがある。通常とは異なる特殊な使い方をする薬剤が少なくない。にもかかわらず、処方箋に用途や詳しい使い方が記載されていないケースが多々ある。

 冒頭に示した3つの処方箋は、ごくありふれた支持療法の内容だ。しかし、注意していなければ、誤った説明をしてしまうこともあり得る。それを避けるためには、どのような薬剤が、どのように使用されるのかを押さえておくしかない。

 「支持療法にはこのような薬が使われることがある、というのを知っておくだけでも大きく違う」と語るのは、つくし薬局光ヶ丘店(千葉県柏市)管理薬剤師の片倉法明氏。「もしかしたら支持療法かもしれない、という意識を頭の片隅に置いておくだけで、服薬指導時の説明が変わる」と続ける。

 具体的にはこうだ。「例えば、デュロキセチン塩酸塩(商品名サインバルタ)が末梢神経障害に使われることを知っていれば、『先生に飲み方を聞かれていますか』と、念入りに確認する意識が生まれる。『どこか痛みますか』などと踏み込んだ質問もできる」(片倉氏)。

 支持療法の内容は処方元の医療機関に確認するのが確実だが、患者に聞くのも大切だ。それが患者との信頼関係構築につながっていく。

発症時期と機序を押さえる

 支持療法の具体的な内容に入る前に、抗癌剤の副作用についておさらいしておこう。抗癌剤は一般に治療域が狭いため、副作用が出やすい。悪心・嘔吐はどの抗癌剤でもよく生じるが、末梢神経障害や皮膚障害など、特定の抗癌剤で生じやすい副作用もある。

 副作用の発症機序を表1にまとめた。特に最近は、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬や血管内皮細胞増殖因子(VEGF)阻害薬、マルチキナーゼ阻害薬などの分子標的薬が登場したことで、従来の抗癌剤にはなかった皮膚障害(ざ瘡様発疹や、角化傾向が強い手足症候群)が発生しやすくなっている。

表1 癌化学療法に伴う主な副作用症状と発症機序(取材を基に編集部で作成)

画像のタップで拡大表示

 また、副作用がそれぞれどのような時期に発生しやすいかを図示したのが図2。これを見れば、副作用の発生を予測して服薬指導に生かせる。

図2 抗癌剤副作用症状の主な発現時期

画像のタップで拡大表示

 例えば、治療後数日間は、悪心・嘔吐が生じやすく、その抑制のために投与される薬剤の影響でも便秘になりやすい。その後、下痢や口内炎などの粘膜障害が発生するとともに、骨髄抑制も生じてくる。その後皮膚障害や末梢神経障害なども生じてくる可能性がある。こういった好発時期を把握し、先回りして患者に様子を聞いてモニタリングしておけば、早期に対応できる。

 副作用対策については、抗癌剤のパンフレットなどに詳しく掲載されている。症状別に主要な支持療法を把握するには、『がん化学療法副作用対策ハンドブック』(羊土社、2010)、『がん薬物療法の支持療法マニュアル』(南江堂、2013)などの書籍が参考になる。

 次からは、抗癌剤の副作用症状別に、支持療法の具体例を紹介していこう。なお、本特集で紹介している支持療法の薬剤には、経験的に使われるものも含まれる。また、必ずしも記載した用量や用法で出されるとは限らない。薬局では様々な医療機関から処方箋を応需している以上、様々な支持療法の内容を押さえておきたい。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ