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医師が語る 処方箋の裏側
睡眠薬2剤を併用する不眠症にジプレキサを追加する理由
日経DI2014年12月号

2014/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年12月号 No.206

 「薬を飲んでも眠れなくなった」─。平井佳子さん(仮名、46歳)は、3年ほど前から不眠を訴え、近隣の内科医院で睡眠薬を処方してもらっていたが、少しずつ薬が増え、最近はベンゾジアゼピン系薬のハルシオン(一般名トリアゾラム)0.25mgとロヒプノール(フルニトラゼパム)2mgを服用しても眠れなくなったと当院を訪れた。

 平井さんは、できれば睡眠薬を減量・中止したいと希望した。また、2014年診療報酬改定で向精神薬の多剤処方を是正するための規定が設けられ、3剤以上の睡眠薬の処方は減算対象となった。平井さんに追加で睡眠薬を処方するのは得策ではない。

 こうした患者に私は、適応外で非定型抗精神病薬のジプレキサ(オランザピン)を使うことがある。ジプレキサは鎮静作用が強めで、睡眠リズムを整えて不眠を改善すると同時に、ベンゾジアゼピン系薬を減量・中止するのにも有効だからだ。

 ベンゾジアゼピン系薬は急に中断すると退薬症状が出る。そこで、まずハルシオンを半量の0.125mgにして、ジプレキサ10mgを使い始めた。ジプレキサを初回に10mg投与するのは乱暴だと考える向きもあるが、睡眠薬が減ったことに不安を抱く患者に治療を継続してもらうためには、効き目が実感できる量を投与する必要がある。ジプレキサの投与開始後は毎週受診してもらい、睡眠状況や副作用の発現の有無を確認しながら慎重に治療を進める。

 そして1カ月後にハルシオンを中止、さらにその1カ月後にはロヒプノールを1mgに減量、その後はロヒプノールを“お守り代わり”に頓用で処方し、常用はジプレキサ15mgのみにする。様子を見てジプレキサも漸減し、中止を目指す。

 こうした治療計画は、最初に患者の了承を得て始める。長年、不眠に悩む患者は、ゴールが示されると積極的に治療に参加するようになる。平井さんには、半年後にジプレキサを卒業しようと話している。(談)

伊藤 学氏
Ito Manabu
代々木メンタルクリニック(東京都渋谷区)院長。2003年琉球大学医学部医学科卒業。東京女子医科大学病院神経精神科教室入局。神経研究所附属晴和病院(東京都新宿区)、みやざきホスピタル(茨城県稲敷市)、東京厚生年金病院精神科、石郷岡病院(千葉市中央区)勤務を経て、14年11月に代々木メンタルクリニック開設。

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