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DIクイズ4(A)
DIクイズ4:(A)細菌性肝膿瘍の外来フォロー時の注意点
日経DI2014年12月号

2014/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年12月号 No.206

出題と解答 :野口周作
(日本医科大学武蔵小杉病院[神奈川県川崎市]薬剤部)

A1

(1)胆道系感染を契機に発症するケースが多い。

(2)通常、抗菌薬の点滴静注を2~3週間行った後、経口抗菌薬を2~4週間投与する。

(4)肝膿瘍に対するフラジール(一般名メトロニダゾール)の処方は、嫌気性菌への効果を期待したものである。

 肝膿瘍とは、細菌や原虫などが肝組織内に侵入・増殖した結果、肝内に膿瘍が形成された状態を指す。典型的な症状は、悪寒・戦慄を伴う38℃以上の高熱であり、右上腹部痛や食思不振、吐き気・嘔吐などを伴うこともある。

 肝膿瘍はアメーバ性と細菌性に分けられる。アメーバ性肝膿瘍は、腸管内に感染したアメーバ原虫が門脈を経由して肝臓に到達し膿瘍を形成する。95%は流行地域への渡航後2~5カ月で発症するが、ステロイドの使用や男性同性愛者もリスク因子となる。アメーバ性肝膿瘍の治療では通常、メトロニダゾール(商品名フラジール他)1回750mgを1日3回、5~10日間経口投与する。

 一方、細菌性肝膿瘍の原因や感染経路としては、(1)胆石や胆管狭窄など胆管経由、(2)虫垂炎など消化管の炎症から門脈を経由、(3)肺炎など遠隔臓器の感染症から肝動脈を経由、(4)外傷からの直接波及─などがある。原因不明の特発性のものを除けば、胆管経由が最も多い。一般に、肝臓は細菌の負荷に対する特別な防御機能を備えているとされるが、糖尿病、肝硬変、心肺疾患、悪性腫瘍などによる防御機能の低下は肝膿瘍のリスク因子となる。

 細菌性肝膿瘍の起炎菌は、主に大腸菌や肺炎桿菌などのグラム陰性桿菌だが、ブドウ球菌や腸球菌などのグラム陽性球菌の場合もある。約半数は、嫌気性菌と好気性菌の混合感染とされる。治療は、入院下で7日間程度、膿瘍ドレナージを行うことが基本とされる。並行して血液培養や穿刺液培養が行われ、起炎菌に応じた抗菌薬を4~6週間(点滴静注2~3週間、残りを経口)投与する。

 Mさんは細菌性肝膿瘍で入院していたと推察される。退院時にレボフロキサシン水和物(クラビット他)とメトロニダゾールが処方され、今回さらに14日分継続処方された。ニューキノロン系薬のレボフロキサシンは臓器移行性が高く、抗菌スペクトルも広く、経口投与量でも効果が期待できる。入院中の点滴治療ではセフェム系やペニシリン系、カルバペネム系薬が用いられることが多いが、これらは経口投与量では十分な効果が期待できない。また、メトロニダゾールは嫌気性菌へのスペクトラムをカバーするために併用されることが多い。同薬は従来、主にトリコモナス症に用いられてきたが、肝膿瘍を含む嫌気性菌感染症などへの適応が2012年に追加された。

 細菌性肝膿瘍は菌血症を起こし得る重症感染症であり、全身状態は良好であっても再発の恐れがあるため、抗菌薬をきちんと服用することが重要である。またレボフロキサシンは、特にスルホニル尿素薬やインスリン製剤を使用している糖尿病患者や腎機能低下患者、高齢者において、低血糖の副作用が表れやすいとされている。従って、糖尿病の治療中であるMさんには低血糖の可能性について説明し、自動車の運転や危険を伴う機械操作に従事する際には十分注意させる。また、メトロニダゾールはアルデヒド脱水素酵素阻害作用を有し、血中アルデヒド濃度を上昇させるため、服用中のアルコール摂取は避けるよう指導する。

こんな服薬指導を

イラスト:YAB

 突然の入院で驚かれたでしょうね。今日も、退院時と同じ2種類の抗菌薬が処方されています。肝臓の感染症では、菌をしっかりやっつけておかないと、後になって症状が再び表れることがあります。体の調子が良いからといって服用を中断せず、処方された分を必ず飲み切ってください。なお、アルコールの作用が強まることがありますので、お薬を飲んでいる間はお酒は控えてくださいね。

 「糖尿病のお薬」とは、糖尿病の治療を受けていたということでしょうか。糖尿病で治療中の方がこの抗菌薬を飲むと、低血糖が起きやすくなる恐れがあるので、車の運転などには注意してください。お薬手帳に書いておくので、次回糖尿病のクリニックを受診された際、先生にお見せください。

参考文献
1)青木眞著『レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版』(医学書院、2008)pp.744-748.
2)臨床と研究2013;90:1043-8.

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